関西で金持ち/セレブの住む町として真っ先に名前が挙がるのは芦屋だ。関西の町としては珍しく全国区の知名度で、実際に首都圏からの転勤者の中には芦屋市内で住まいを探す人も多い。
最近では大手不動産会社7社が運営する新築物件サイト「MAJOR7」の「住んでみたい街アンケート 関西圏」で、2013、14年に2位になった以外は全ての年で1位だったJR芦屋が10位になったことがニュースとなった。対象駅が1160駅もある中の10位なので、人気の高いことには変わりないのだが、知名度が高いだけあってこのようなことでもニュースとなる。
そんな中、「芦屋の地域内格差」を取り上げる記事を目にした。女性セブン2016年11月17日号内の特集を基にした作成した記事で、上記の「住んでみたい街アンケート 関西圏」の結果がきっかけとして作られたようだ。「地域内格差」として描かれている内容はざっと下記のような感じ。
1、高級住宅街と呼ばれるのは阪急沿線から北の「山手」、阪神沿線は「海側」といわれ庶民の町
2、阪急沿線住民は阪神のことをガラが悪いと思っており、阪神沿線住民は阪急沿線に対して「気取っている」と思っている
3、山手の住民たちは芦屋浜(南芦屋浜地区)を『埋め立て地』『ニセ芦屋』と呼び、『あんなもん芦屋ちゃう』とまで言う。
4、“ホンマの芦屋”の住民も、なぜか出身を聞かれて「芦屋です」とは答えないらしい
どれも、頷ける節があるが全くその通りであるとはいいがたい。
まず1の「山手」「海側」がそれぞれ高級住宅街と庶民の町であるという点。大きな傾向としてはその通りだ。ただし全てがそうではなく阪急沿線である山手にアパートもあれば海側(浜側)に豪邸が居並ぶ街並みもある。JR沿線や阪神沿線の邸宅街は、阪急沿線である山側よりも歴史が古く、街に対する思い入れやプライドの高い人も多い。中には、阪急沿線の山手の住宅街に住む人「新参者」「田舎者」と呼ぶ人すらいる。
また、阪急沿線と阪神沿線には確かに2のような「ライバル関係」がある。山手と海側(浜側)と言い換えることもできる。そんなライバル関係にある両者ともに、3のように考えている人も多く存在する。「ニセ芦屋」などといった言い回しは実際に筆者も聞いたことがある(「埋め立て地」は事実なので仕方がないが‥‥)。
しかしそのようなことを言う人はいわば自身のポジションを上げるために自己防御的に発言しているようにも感じられる。邸宅街に住む人たちから「ニセ芦屋」などという言葉は聞いたことがない。
最後に4。芦屋出身を隠す人は確かにいる。記事中には「ホンマの芦屋」住民とあるが「ホンマの芦屋」でない人にも隠す人はいる。「ホンマの芦屋」で出身を隠す人は「金持ち」「セレブ」であることを隠したいからで、「ホンマの芦屋」でない人は「金持ち」「セレブ」でもないのに芦屋という言葉に過剰に反応されるのを快く感じない人。
芦屋市は、北は六甲山系の山中、南は埋立地と南北に長い地形で、北から阪急/JR/阪神と三つの鉄道が並走する。また周辺の行政区と比べて「金持ち」が多く「南北格差」も存在する。しかしそれはあくまで総論の話。大きな傾向としては「北高南低」だがその中でも人気のある場所とそうでない場所がモザイク状に広がる。
「芦屋なのに安い」「阪急沿線なのに安い」といった理由で不動産を購入すると痛い目にあうこともあるので注意が必要だ。
健美家編集部(協力:田中和彦)