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京都駅至近、京都市立芸術大学移転予定地に屋台街「崇仁新町」。人が近寄らなかった場所に新たな賑わい

都市計画・再開発(地域情報)/神戸・京都/関西 ニュース

2018/07/09 配信

京都駅中央口から東へ数分。歴史のあるまちには人が近寄りたがらない場所がいくつかあるが、京都駅至近のその一画は古くからそうしたエリアのひとつ。

京都には学区という、かつて日本で最初に創設された64校の番組小学校を起源とする、住民自治の単位があるが、そのひとつ、崇仁という地区である。

芸大の移転予定地の位置。この図の左側に京都駅がある。予定地の南側がJRの線路
芸大の移転予定地の位置。この図の左側に京都駅がある。予定地の南側がJRの線路

その崇仁地区に京都市立芸術大学が2023年に移転する。1880年に京都府画学校として創立された、芸術系大学としては日本でもっとも長い歴史を持つ大学で、美術と音楽を両軸とする。

現在は西京区大枝沓掛という、中心部からはかなり離れた場所に立地しており、加えてキャンパスの耐震性能、バリアフリーなどの問題を抱えてもいた。

京都市に移転の要望書が提出されたのは2013年。駅近くにありながら、これまで発展から取り残され、周囲よりもさらに早いスピードで高齢化、人口減少が進む地域への移転が提起され、市はそれを了承。2023年に移転、供用が開始されることが決定した。

屋台街の向こうに団地が見えるが、ここを取り壊して大学を建設する。道を挟んで反対側にも団地がある
屋台街の向こうに団地が見えるが、ここを取り壊して大学を建設する。道を挟んで反対側にも団地がある

とはいえ、大学の本格移転までにはまだまだ時間がある。現時点では市営住宅があり、まだ6割ほどが入居中でもある。現居住者が退去した後に解体、それから建設というスケジュールを考えると、2018年からでもあと5年ほどはある。その間、この場所を放置しておいてよいのか。

歴史を除けば一等地であり、使わないのはもったいない。また、以前の建物と無縁に、いきなり大学が誕生しても地域との繋がりは醸成できない。

だとしたら、建設が始まるまでの間、この土地を有効に使い、これまでこの地に来ることが無かった人たちを集めることはできないか。今後、芸大が来ることを地域に知らしめるようなことはできないか。

写真右手の通りが鉄道を渡る高架橋に繋がっているため、このあたりは昔から「たかばし」と言われていた。行列のできるラーメン店などがあり、グルメには知られた場所。左手が崇仁新町
写真右手の通りが鉄道を渡る高架橋に繋がっているため、このあたりは昔から「たかばし」と言われていた。行列のできるラーメン店などがあり、グルメには知られた場所。左手が崇仁新町

そうした検討の結果、生まれたのが屋台街、崇仁新町である。場所は京都芸大移転予定地のもっとも京都駅に近い角地の約1000㎡。

企画の立ち上がりから完成までが半年という信じられないスピードだったため、時間、費用を節約しようと店舗はコンテナを並べて作られている。これなら終了後、容易に移動ができるのである。

それ以外では本来カーポートに使われる屋根や工事現場で利用する単管パイプなども使われているが、無骨ながら不思議と良い雰囲気。安価に、カッコよく場を作ろうとしたら、こういう手もあるのかもしれない。

店舗は一丁目から四丁目まであり、計15店。コンテナの前は飲食スペースとなっており、席はフリー。好きなところから買ってきて、好きなところで食べたり、飲んだりする仕組みである。

さらに店舗の奥には舞台があり、その前にはたき火ができるスペースも。舞台、壁にはスタッフとして関わる芸大生が描いたイラストがあり、芸術がとっつきやすい形でアレンジされている。舞台やベンチなども学生スタッフが作成したそうだ。

日が暮れてくるとどんどん人が集まり始め、かなりの賑わい。コンテナは屋上も利用でき、屋上利用にはチャージが必要
日が暮れてくるとどんどん人が集まり始め、かなりの賑わい。コンテナは屋上も利用でき、屋上利用にはチャージが必要

店舗として出店しているのは地元の若いオーナーたちの店。このエリアの賑わい創出を手がける一般社団法人渉成楽市洛座で事務局長を務めるwalksの小久保寧氏が一軒ずつ歩いて、口説いて出てもらったという。小久保氏も含め、若い人が多く、とてもフレンドリーな雰囲気で全体に活気があり、それが人を呼んでいる。

好きな場所に座れ、知らない人と隣り合うことがあるのも人気の秘密。周囲のやりとりを聞いていると外国人と日本人ビジネスマン、近所に住む人と遠来からの観光客など普通にしていたら会わないような人達が言葉を交わしている。出会いも楽しみというわけである。

その結果、オープンした2018年2月には2万4000人、3月に3万人、4月に2万5000人と1日平均に直すと2000~3000人が来街しており、この試みは成功と言って良い。

しょっぱなから多くの人が来ているのは、このエリアにこうした、ちょっと立ち寄れるような場所が無かったということでもあろう。

観光地や人の集まる場所では、「気軽に短時間」をキーワードにしたスペース作りは今後、ありかもしれない。

ただ、雨が降ると全くダメ、昼もいまひとつ来客が少ないなど仮設店舗なりの弱さもある。一方で冬場の寒さに関しては大型ストーブにビニールカーテン利用で凌げたというから、これから迎える夏もなんとかなるのかもしれない。

では、どんな人達が来ているか。狙い通り、これまでこの地に来たことが無かった若者、外国人である。女性も多い。京都に遊びに来た友人を連れて来る人、京都から帰る前にちょっと寄るなどの使い方もあり、リピーターも多い。

来ている人たちの声を聞いていると京都駅のこんなに近くに、こんな場所があったとは!というようなものも多く、今まで本当に見落とされてきた、忘れられてきた土地であることが分かる。そして若い人たち、外国人はそうしたことにこだわらないということも。

もちろん、土地の歴史には敬意を払うべきだし、近寄りたくないと思う人は今後も一定数いるはずだ。だが、京都市の入り口とも言うべき駅の近くに誰もが近寄らない場所を作るのはどうだろう。

京都市立芸術大学では開かれた大学を作るとして計画を進めている。芸術の都たるにふさわしい駅周辺整備が進めば、京都自体の価値も上がるはず。

大学周辺はこれまで人が近寄りたがらなかった分、土地の価値も実際に以上に低く抑えられている可能性もある。場の作り方を学ぶ上でも参考になる。京都訪問の際には帰る前の一時、足を運んでみてはどうだろう。

健美家編集部(協力:中川寛子)

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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