
この春、「京都芸術大学(旧京都造形芸術大学)」との大学名をめぐる訴訟で話題になった「京都市立芸術大学」。
不動産投資の業界では、2023年のキャンパス移転で数年前から注目を集めている大学だ。現在のキャンパスがある西京区大枝沓掛から、市の中心部・京都駅の東に隣接する崇仁地区へ。市はこの移転によって同エリアが「文化芸術都市・京都」の新たなシンボルゾーンとなることを目指している。
移転計画の基本設計が発表されたのは2018年。当時のこのエリアの様子や歴史については、過去記事で紹介しているので参考にしてほしい。

京都駅側のC地区と中央のB地区、鴨川沿いのA地区合わせて約3万4600平米が使用される今回の計画。大学のキャンパスにクラシックやオペラが上演される音楽ホールやギャラリーが併設されるほか、A地区には京都市立銅駝美術工芸高等学校も移転してくる。
今年3月には実施設計が取りまとめられ、いよいよ2023年の新キャンパスオープンに向けた工事が開始された。今回はその現場をレポートする。
C地区の現状

9月からいち早く建築工事が始まっているのがC地区。現在は中京区押油小路町に位置する京都市立芸術大学の「ギャラリー@KCUA(アクア)」や芸術資料館、音楽ホール、図書館などが塩小路通沿いに建設され、大学の芸術活動を発信するとともに、京都駅から東山に至る動線の魅力向上を担うという。
B地区のデザインイメージと現状

高瀬川沿いのB地区に建設される施設は、制作中の作品や創作活動が外から見えるような開放的なデザインに。


高瀬川沿いにはオープンスペースが設けられ、B地区の北西角に残る柳原銀行記念資料館も活用し、地域との交流・連携を進められるよう整備されるという。
現在は来年2月からの建築工事に向けて周辺の市営住宅に配慮しながら、崇仁第二保育所の解体工事が進められている。
A地区のデザインイメージと現状

京都市立銅駝美術工芸高等学校の校舎と、大学と高校がともに利用できるグラウンドや共有工房が設けられるA地区。鴨川に沿って流れるように屋根がかけられ、大学と高校が一体感のあるデザインになる予定だ。


B地区同様、来年2月からの建築工事に向けて整備が進むA地区。京都市立元崇仁小学校だった建物の解体はほぼ終了したようで、整地が始まっている模様。
移転後は教職員と学生、生徒を合わせて京都市立芸術大学の約1,200人、京都市立銅駝美術工芸高等学校の約300人が崇仁地区に通う。現在の地区住民数に匹敵する数の若者がやってくることになり、地区の雰囲気が大きく変わることは間違いない。

普通の投資目線で見れば超一等地でありながら、京都人にはあまり好まれず、開発されて来なかった京都駅周辺。
しかし、1997年の駅ビル開業以降、京都駅南口駅前広場の整備事業、リーガロイヤルホテル京都や京都タワーのリニューアル、京都鉄道博物館や京都水族館のオープンといった開発プロジェクトが次々と実施されてきた。
ワコール、ニッセン、京セラなどの大企業も多く集まり、文化や経済の要所として開発競争が進む同エリアは近年、烏丸・河原町を擁する「田の字地区」に匹敵するほど地価が高騰している。2023年の京都市立芸術大学の移転に向け、ますます目が離せない。
健美家編集部