
通勤・通学の利用者多数
山陽電鉄の主要駅「高砂」駅
兵庫県を走るローカル鉄道、山陽電鉄(以下、山電)の「高砂」駅。
周辺には閑静な住宅地が広がり、駅の南北には市立の高等学校がある。さらに、駅南の沿岸部は日本を代表する大手企業の研究施設や工場が集中する工業地帯だ。
駅自体の規模はそこまで大きくはないが、通勤・通学の利用者が多く、特急が停車する主要駅となっている。
電車1本で姫路や明石には15分、元町・三宮には45分でアクセスできる交通の便の良さも同駅の魅力の一つと言える。

暮らしに便利な駅ではあるものの、線路や駅が高架でないことから、ラッシュ時は踏切の遮断機が下りっぱなしになる。
さらに改札は南口、コミュニティバスのロータリーは駅の北側にしかなく、バスに乗車するには、南口の改札を出て歩行者用の地下道を通って北ロータリーに出る必要がある。
現状は、車や歩行者にとってとにかく難儀な造りだ。
今回の「高砂駅南周辺整備基本計画」でも山電を高架にする「連立立体交差事業」を実施できるかどうかがカギとなる。
テーマは
「次世代へ縁を結ぶまちづくり“高砂”」
「高砂駅南周辺整備基本計画」では2030年度に着工することを目指し、現在も県や市、民間の間で意見が交わされている。
計画の素案の段階では山電が高架になる場合と、ならない場合の2パターンが提出されたが、県と市、山電で協議した結果、市は高架化を前提とした。
ここに、整備計画の4ポイントをまとめよう。
@高砂の個性を生かし、人が行き交い、集う駅前広場に


高砂市は、230余年の歴史を持つ帆布「松右衛門帆」をはじめ、1700年以上市内で産出されている「竜山石」、勇壮な秋祭りなど伝統的な工芸と文化を持つ。
生まれ変わる駅前空間にもその雰囲気が感じられるデザインが随所に施される予定だ。
歩行者の安全に配慮したユニバーサルデザインを取り入れたり、送迎用車とタクシー用それぞれのバースを確保したりと、駅利用者の利便性も高まる。
また、駅前広場の入り口に広いスペースを設け、様々なイベントを開催することで、人が行き交い、集う広場とする考えだ。
A誰もがアクセスしやすい駅前に


山電の高架が実現すれば、駅周辺の踏切は撤去され、高架下に公共駐輪場が設けられる。雨天時の駐輪場の課題を考えると、自転車が濡れずに置いておけることは、利用者にとってもうれしい変化だろう。
また、駅南のロータリーにアクセスする現在の街路も広場の一部になり、そこに商業施設と一体になったマンションを新設する見込みだ。
B駅の南北の動線を改善

計画では駅を高架にすることで、南北のロータリーをつなぐ現在の地下道をなくし、駅のコンコース内に南北を行き来することができる通路を配置する。
これにより現在は不可能な、改札から直接北ロータリーに向かうことも可能になる。
Cまちのにぎわいを創出
駅前だけでなく、駅周辺市街地(旧サンモール)の再開発事業も実施。
これまでの市街地にはなかったスーパーマーケットやスーパー銭湯の誘致を図るなど、これまでのイメージとは一線を画す考えだ。
山電の高架化も実現させることで、自動車の南北の往来にストレスがなくなるため、これまで踏切で分断されていた市街地ににぎわいがもたらされる。
早ければ10年後に工事がスタート

「高砂駅南周辺整備基本計画」では、調査や準備が順調に進めば10年後には工事が始まる。長期化も見据え、駅前広場や周辺市街地から整備がスタートする予定だ。
高砂駅周辺エリアは県内ではあまり目立たない存在だが、交通の便も治安も良く、ファミリーに人気が高い。駅自体や駅周辺が魅力的になることで、明石駅前の再開発時と同様、新設されるマンションは即完も予想される。
さびれた雰囲気の駅前がどのように生まれ変わるのか、下りっぱなしで通行人や自動車を困らせるあの踏切をなくせるのか、結果が楽しみだ。
健美家編集部