虎の2軍本拠地は
西宮から尼崎への移転が既定路線
兵庫県の尼崎市が阪神電鉄株式会社とタッグを組み、阪神タイガースファーム(2軍)の本拠地の移転先候補として、同市の小田南公園に誘致するプロジェクトが進行している。
現在のファーム本拠地である西宮市の鳴尾浜球場は、施設の老朽化と手狭さが叫ばれてきたが、敷地の問題から大がかりな改修工事が難しいことから、阪神電鉄が移転を検討。尼崎市もスポーツ振興の目玉として誘致を目指し、2016年頃から阪神電鉄側と協議を続けてきた。
新たなファーム施設には、約4,000人を収容できるメイン球場のほか、サブ球場、室内練習場、選手寮などの設置を構想に入れており、球団創設90周年となる2025年春の運用開始を目指している。
未来の大物を輩出する養成施設候補は
阪神「大物駅」から徒歩10分の場所
移転先候補となる小田南公園の最寄駅は、阪神電車「尼崎駅」の隣駅である「大物(だいもつ)駅」。
ちなみに、この一帯を示す「大物」はかつての尼崎城下町の一つで、平安時代に船舶の発着地として発展。港町として栄え、西日本の材木の集散地として広く知れわたり、そこで取引された巨材を意味する「大物」に由来にしているとの説が有力だ。
その「大物駅」から徒歩10分圏内の場所に位置するのが小田南公園だ。尼崎市の中で3番目に広い総合公園で、ナイター設備の整った野球場をはじめ、広大な多目的広場、子どもが元気いっぱい楽しめる遊具も完備。さらに、園内には池や草花、並木道といった自然も豊かだ。
公園付近には住宅地や尼崎だいもつ病院もあることから、近隣住民からはファミリーやお年寄りの憩いの場として親しまれている。
そんな地域の人々から愛される小田南公園だが、供用開始から約30年が経過。リニューアルを検討する段階で、阪神タイガースの新たなファーム施設を誘致する案が浮上したという。
周辺住民の7割以上が誘致に賛成
尼崎市の地域活性に期待膨らむ
昨年11月、尼崎市は小田南公園の近隣住民と公園利用者を対象に、阪神タイガースファーム施設の誘致について賛否を問うアンケートを実施。そして今年2月19日、そのアンケート結果が公表された。結果は以下の通りだ。
賛成 57.3%
どちらかと言えば賛成 18.1%
どちらとも言えない 6.9%
どちらかと言えば反対 4.7%
反対 12.6%
未回答 0.4%
(阪神タイガースファーム施設の誘致に関するアンケート調査/尼崎市)
結果は、アンケート対象者のおよそ75%が好意的。自由記述欄には、「プロ野球を近所で観戦できる」「地域の活性化・イメージアップにつながると思う」「子どもと選手が交流を持てる場になりそう」と、誘致を歓迎する声が多かった。
一方、誘致を不安視する声が相当数あったのも事実。反対派のみならず、賛成派の中にも地域の治安悪化や利用者のマナー、公園としての機能に疑問符を付けるコメントも見受けられた。
このアンケート結果の課題を受けて、当初の計画を軌道修正するようだ。近隣の大物公園の再整備を視野に入れるほか、公園南側の東部雨水ポンプ場(旧・東部第2浄化センター)の一部に多目的広場を移す案も浮上するなど、公園としての機能を確保。治安維持対策としては、警察を絡めた警備計画を協議するという。
近隣住民への説明会を開催するのは、3月下旬から4月上旬にかけて。ここでアンケート結果を踏まえた修正案を説明する予定となっている。スポーツ振興による地域の活性化、そして未来の“大物”の育成につなげる拠点の実現に向けて、周辺住民のみならず、尼崎市民の期待も膨らんでいる。
健美家編集部