国際線1日最大40回就航へ まず25年にチャーター便
関空の発着回数も年間30万回まで拡大
関西が不動産投資の対象としてますます「熱く」なりそうだ。新たに有望な場所となるのは神戸市や兵庫県だろう。このたび、2030年をめどに神戸空港を国際化することで合意がなされ、インバウンド(訪日外国人客)がたくさんやって来て、神戸市や兵庫県の観光関連産業が大いにうるおう可能性が高まっているのだ。
神戸・三宮と神戸空港をポートライナーで結ぶアクセスが拡充されることで企業進出も後押しされ、賃貸需要は大いに盛り上がる可能性がある。
いまは国内線オンリーの神戸空港に国際線を就航させる(=国際化する)ことで9月18日に合意したのは、関西の経済団体や自治体の関係者らでつくる「関西3空港懇談会」。
この懇談会は、関西国際空港(関空)、大阪(伊丹)空港、神戸空港と、半径25キロの県内にある3つの空港のあり方を話し合う集まりだ。
神戸空港の国際化はまず、大阪・関西万博がひらかれる2025年に国際チャーター便を就航させるところから始める。その後、段階的にすすめ、1日の発着回数の上限は1日40回とする。
発着回数に上限をもうけるのは、すでに多くの国際線を受け入れている関空と需要を食い合わないようにするためだ。
いっぽうで関空の機能も強める。年間の発着回数を、30年代前半に、いまの1.3倍となる年間約30万回まで引き上げる。さらに、3つの空港を合わせた発着回数を、30年をめどに50万回まで増やすとしている。
コロナ禍の収束、水際対策を見越して空港の機能強化
地元の温泉など観光関連業者からは喜びの声
神戸空港の国際化や関空の機能強化などに踏み出すのは、新型コロナウイルス禍の収まりや、政府による水際対策の緩和などによって、今後どんどんインバウンドが増えてくるという目算があるからだ。
25年に開かれる大阪・関西万博も、インバウンドが関西に大勢やってくることの追い風になるとの期待がある。
神戸空港の国際化が合意されたことを受け、報道では、地元の自治体の首長のほか、神戸市・兵庫県の温泉といった観光地などから上がった喜びの声が紹介された。
関空だけがインバウンドの直接の関西への流入口だったこともあり、コロナ禍前はインバウンドが京都、大阪へ来ても、なかなか神戸市や兵庫県まで足を運ばないといわれてきた。
それだけに今回の合意に対しては、地元の喜びもひとしであることはよく分かる。
一方、関空を抱える地元は、神戸空港に利用客をとられかねないだけに、今回の合意には不満が大きい。大阪府の吉村洋文知事は記者会見で、あくまで「関空優先」との立場を強調。関空が立地する大阪府泉佐野市の千代松大耕市長も、神戸空港の国際化には「反対」と、はっきり言い切った。
アクセスはポートライナーで「三ノ宮駅」と「神戸空港駅」結ぶ
バスなどと併用?利便性が高まり企業が来る可能性も
ここで神戸空港の立地をみておこう。
神戸空港が開港したのは2006年で、人工島ポートアイランドのさらに沖合を埋め立てて作られた。滑走路は2500メートルのものが1本ある。
現在、「内陸」の神戸市と神戸空港を結ぶアクセスとしては、神戸新交通のポートライナーを使って「神戸空港駅」から神戸市中心部にある「三ノ宮駅」まで行く方法がある。
神戸空港に来たインバウンドはまず、ポートライナーを使って神戸市方面に来ることが多いだろう。
渡ってすぐには異人館街やメリケンパークといった観光地がある。神戸空港から20キロほど北西に行けば、日本有数の観光地・有馬温泉がある。函館、長崎と並んで日本3大夜景の一つの数えられる神戸の夜景を楽しめる六甲山もすぐ近くだ。
三宮やその隣の元町の周辺、有馬温泉などでの宿泊、飲食、買い物需要は大きく高まるだろう。関係する業界の雇用は増え、これらのエリアでの従業員による賃貸ニーズは大きく高まるはずだ。
また、神戸空港は国際化と同時に、国内線も、いずれ1日の最大発着回数を80回から120回に広げられることでも合意した。
企業にとっても国内外へ出張に出かける利便性が格段に高まるので、神戸市内や周辺に営業所、支所、支社や、本社そのものを置くところが出てくるだろう。
神戸市から神戸空港に渡るアクセスとしては、先ほど述べたように、ポートライナーがある。
神戸市と神戸空港の間にあるポートアイランドにはすでに企業や学校が集まっているため、ポートライナーは、すでに通勤時間帯のすさまじいラッシュが問題になっている。
だが、神戸空港の国際化に合わせて、バスやバス高速輸送システム(BRT)と組み合わせて運行するなど、利便性が高まる可能性がある。こうしたアクセスの改善も、企業が神戸市に出てくる動機付けの一つになる。
さらには、神戸空港が国際化すれば、新たに税関や国際カウンターが設けられるので、そこで働く人たちも神戸市内や兵庫県内に住むことになる。新たに神戸空港に入る航空会社の関係者も、やはり神戸市内や兵庫県内に住むことになるだろう。
みてきたように、神戸空港の国際化は、インバウンドの増加、空港の利便性拡大を見越した企業の進出、神戸空港で働く人の増加につながり、神戸市内・兵庫県内の賃貸需要を生み出す。
不動産投資家はこのチャンスをとらえるべく、戦略的に行動したい。
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取材・文:
(おだぎりたかし)