天神を中心に再開発プロジェクトが多数
周辺の資産価値アップに寄与する可能性大
福岡市と言えば九州最大の都市で、東京23区を除く全国の市では、横浜市、大阪市、名古屋市、札幌市に次ぐ人口を擁する自治体。
福岡県の県庁所在地で、東区、博多区、中央区、南区、西区、城南区、早良区の7区からなる政令指定都市だ。人口は増え続けていて、2000年は134万人だったのが、10年には146万人、20年には159万人を突破した。そんな同市は不動産投資のお宝エリアとしても有名だが、今後もますます資産価値アップが期待できるようだ。

九州の北岸にあることから離島やビーチがあり、キャナルシティ博多など近代的なショッピングモールもたくさん。中央区の舞鶴公園には福岡城址、博多区には10.8mの大仏で知られる東長寺など、歴史的な建造物も残っている。
新幹線や高速鉄道など国内広域交通軸の他、福岡空港や博多港といった、国際ネットワークの拠点となる施設も整備されていて、160万都市を目前に控えているのも納得の話だ。大東建託株式会社の賃貸未来研究所が昨年12月に発表した「いい部屋ネット 街の住みここちランキング2019〈全国版〉」では、東京や大阪を抑えて中央区が第1位に選ばれることに。なんと、ベスト100に東区以外の6区がランクインしている。
ある意味、非の打ち所がない都市機能を備えている福岡市だが、まだ成長のポテンシャルを秘めている。そのカギを握るのが天神地区の再開発プロジェクトの「天神ビッグバン」だ。
そもそも、福岡市の都心は博多と天神。前者には在来線・新幹線のターミナル駅である博多駅があり、福岡空港も地下鉄空港線で至近距離。大企業が集積するビジネス街として知られる。
他方、天神には福岡市役所が構え、交通面では西鉄福岡駅、市営地下鉄の天神・天神南駅が乗り入れていて、地場系の岩田屋を始め三越など百貨店、ファッションビルも集まる繁華街だ。
そんな同エリアではオフィスや商業施設などを建て替え、さらなる活性化を目指す「天神ビッグバン」が進行中。2024年までに民間ビル30棟を建て替え、延べ床面積を現在の1.7倍、雇用を2.4倍に引き上げるという。具体的には、以下のプロジェクトが明らかになっている。

出典:福岡市ホームページ
(1) 航空法高さ制限 エリア単位での特例承認(天神明治通り地区 約17ha,旧大名小学校跡地 約1.3ha)
(2) 官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」,スタートアップカフェ
(3) 天神1丁目南ブロック(地区整備計画策定,地下通路整備)
(4) 天神地下街仮設車路の有効活用(天神ふれあい通り駐輪場・地下通路)
(5) 旧大名小学校跡地まちづくり
(6) 水上公園
(7) 地下鉄七隈線延伸事業
(8) 交通混雑の低減に向けた駐車場の隔地化・集約化
(9) 都心循環BRTの形成
(10) 天神ビッグバンの奥座敷(西中洲)の魅力づくりに向けた道路整備と景観誘導
(11) 春吉橋賑わい空間の創出
現地はどうなっているのか。今回足を運んだところ、街はリニューアルの真っ最中だった。例えば、旧福岡県公会堂貴賓館が建ち、福博であい橋で中州エリアと結ぶ県営天神中央公園は整備が完了。
公園沿いを流れる那珂川を眺めながらのんびりできる飲食店の施設「ハレノガーデン イースト&ウェスト」が昨年から開業されている。テナントには西中洲の人気豆腐料理店「三原豆腐店」によるソイカフェ&バーや人気の「パンストック」と「コーヒーカウンティ」がコラボしたベーカリーの「ストック」などが。フォトジェニックな光景で、多くの若者がスマホで写真を収めていた。

天神交差点のそばで天神駅の真上では、「(仮称)天神ビジネスセンター」が建設中。これは、天神ビッグバンの第1号プロジェクトで、商業施設やオフィス、ホテルが入る地上19階、地下2階、高さ89mの複合施設が2021年に完成する予定だ。17年に国家戦略特区の特例で航空法による高さ制限が緩和されたことを受け、当初計画の地上16階、高さ76mより変更された経緯がある。
なお、同所に隣接し天神交差点に建つ福岡ビルはすでに閉鎖され、ファッションビルの「天神コア」は3月末をもって閉店する予定。その裏手にある「天神ビブレ」は2月で営業を終えている。これら建物の跡地には、西鉄が地上19階、地下4階建て、高さ96mの天神一高い複合商業ビルが建設される予定だ。


工事車両の入り口には「(仮称)旧大名小学校跡地活用事業」の看板が掲げられていて、ここには地上25階、地下1階で高さ111mのオフィス・ホテル棟、地上11階のコミュニティ棟、広場、平屋建てのイベントホールが新設されるという。なお、建設現場の裏手、旧大名小学校の校舎には、スタートアップを支援する官民協働型の施設「Fukuoka Growth Next」がオープンしていた。

建物の建築だけではない。天神ビッグバンでは地下鉄七隈線の延伸事業も行われている。これにより天神南駅と博多駅が結ばれ、橋本や七隈、六本松といった市南西部から都心へのアクセスは格段に向上。同エリアの資産価値アップにも寄与するだろう。道路陥没事故の影響で工事は一時中断したが、いまは再開。2022年度に開通する予定だ。

九州最大の都市は物件ニーズが旺盛
福岡市は不動産投資のゴールデンエリア
天神ビッグバンを軸に、進化し続ける福岡市。10年前は30万円を切っていた公示地価は2019年時点で平均36万334円と上昇を続けている。健美家の「収益物件 市場動向 マンスリーレポート 2020年2月期」でも、九州・沖縄エリアは区分マンション、一棟マンション、一棟アパートのすべてで、全国平均より利回りは上回っている(詳しくはこちら)。
同市は全世帯のうち約半分が賃貸ニーズの高いとされる単独世帯で、市内を歩いてみるとわかったが、収益物件であろう建物はたくさんあった。ライバルも多いが、再開発による資産価値の向上、収益性アップが期待できる、投資妙味の高いエリアといえるだろう。
健美家編集部(協力:大正谷成晴)