新型コロナウイルスの影響で、リモートワークやワーケーションの需要が高まっている。その波をつかんで、遠隔地で不動産投資するのはどうだろうか?夏のリゾート地として有名な沖縄県の石垣島の状況をリサーチしてみた。
石垣島は沖縄県八重山諸島の島で、県庁所在地のある沖縄本島から飛行機で約1時間かかる。それに比べると、直行便が飛んでいる地域からの移動は近く感じる。直行便ならば、東京から約3時間30分、大阪と愛知からはそれぞれ約2時間30分、福岡からは約2時間で着く。

2013年の新空港開港以来、激増する観光客
観光収入は開港前の2倍以上に!
それでは、石垣島の状況を見ていこう。まず、2013年(平成25年)に新石垣空港が開港したことが大きなターニングポイントだった。石垣島への入域旅客者数と観光収入推計が、この年を境に急激に伸びている。


開港前年の2012年(平成24年)の観光客推計(石垣島へ入域した旅客者数から、観光客と推定した数)は70万人。ところが、2017年(平成29年)には130万人を超え、約2倍弱に!観光収入も、2012年は410億円だったが、2018年(平成30年)には940億円と2倍強になっている。

新型コロナウイルスの影響を受ける前の2019年には、入域観光客数と観光消費額が過去最高を記録した。入域観光客数は約147万人、観光消費額は約977億円。
主な国内空路のうち、東京から直行便で31万人、大阪から同14万人、愛知から同4万人、福岡から同3万人(なお、那覇から51万人は経由便の可能性あり)。
海外空路は香港から4万人、台湾から8,000人、海外海路は36万人だ。
資料「令和元年石垣市入域観光推計表」より抜粋。
実は石垣島は、沖縄本島よりも距離的には台湾の方が近い。台湾から大型船に乗って石垣島に来て、沢山のお土産を買って帰る人が多いそうだ。
観光客が増えたため、石垣市内の宿泊施設も増加している。2017年時点で施設数は258件、客室数は4,518室、収容人数12,000人だったが、コロナ禍前の2019年の施設数は333件と約1.3倍に増加。沖縄県内では、県庁所在地の那覇市に次いで施設数が多い。そのため、2019年の客室数は5,448室、収容人数は約14,000人へと増加した。
資料「令和元年『宿泊施設実態調査』の結果について」より抜粋。
新築だけでなく、既存のホテルも改装や増築でキレイに大きくなっている。いまはコロナ禍で観光客が減少しているが、引き続きホテル建築計画はある。例えば、株式会社ユニマットプレシャスはゴルフ場付きリゾート施設の建築準備をしている。その一方、来年開業予定だったアメリカ系大手ホテルの建築は、コロナ禍とは関係なく工事が進んでいないようだ。

新築アパート建設ラッシュで物件ダブつき気味?
住み替えするには高すぎる賃料がネック・・・。
観光客が増え、ホテルが増えるにつれ、石垣島で働く人も多く必要になってくる。賃貸需要の方はどうだろうか?
新空港が開港してから、新築アパートの建設ラッシュが起きている。おきぎん経済研究所が行った「2019年賃料動向ネットワーク調査」では、賃貸物件の稼働率は96.6%と高く、調査当時は賃貸物件は不足気味と考えられていた。
ところが、新型コロナウイルスの影響で離職者が増え、島から出て行った労働者も多かったことから、一転して入居率が下がった。
特に新築物件は賃料設定が高めのため、地元の人が住み替えする場合は築古でも安い賃料の物件を選ぶ。1Rや1Kの新築物件は供給過多で、フリーレントや礼金を無しにするなど、条件を下げて募集をしているそうだ。石垣島の建設業界では、アパートの建設ラッシュは終わったと見ている。
コロナ禍で本州からの問い合わせ増加!
投資よりワーケーション向け需要?
石垣島の状況について、地元の不動産会社、大央ハウジングの斎藤 巧さんに聞いてみた。

「投資目的のお客さんは、コロナの影響で激減しました。
元々、沖縄県外の人が融資を使ってアパートを建てるのは難しいです。沖縄県内の金融機関は、県内で働いてる人でないと融資をしてくれません。
実は、土地も思ったほど安くありません。離島なので建設業者が少なく、競争の原理が働かないため人件費も高いです。建築資材も、遠方から運んできますから高いですね。
今年の春頃まではアパートやホテルの建設ラッシュがありましたが、石垣島以外から労働者を連れてきて建築していたようです。
コロナ禍以前は、中古の戸建を買って民泊で運営していた方もいます。石垣島の戸建ては台風対策のため、木造ではなくRC建築です。
安くても1,000万円後半からで、高いと5,000万円ぐらいします。1棟貸しで1泊3〜5万円、高級物件だと10万円でも借り手があり、収益が出ていたようですが・・・。今は売りに出され、買い手がついた物件もあります。
ただ、最近になってリモートワーク用に石垣島に家を買いたいという問い合わせが多くなってきました。『仕事はテレワークでできるので』と。
『現金を持って行くので、その場で決済したい!』という方もいました。さすがに大金になりますので、現金決済はお断りしましたが・・・(笑)。
石垣島は沖縄本島と比べて、田舎すぎず、都会すぎないところがいいと思います。各地からの直行便もありますし、小さいですが繁華街もある。そうかと思えば、すぐ近くに雄大な自然もあります」

実は、斎藤さんは千葉県出身で、13年前に石垣島へ移住してきた。釣りが好きだったことも石垣島を選んだ理由の一つだという。
「たまたまかもしれませんが、お客様も沖縄県外の方からの問い合わせが多く、半分ぐらいあります」
今回取材をさせてもらうにあたり、筆者や大部分の「健美家」読者と同じく沖縄県外出身者で、石垣島に移住された方からお話をお聞きしたかったので大変ありがたかった。
斎藤さんからは、『カボチャの馬車』ほどではないが、沖縄県内でもリスキーな不動産投資話が一時期あったと教えてもらった。どの地域であっても、甘い言葉に惑わされず、自分できちんと調べて判断することが不動産投資には大事だろう。
GO TO トラベルのキャンペーンも始まり、石垣島も9月の連休から観光客が増えてきたとタクシー運転手さんも喜んでいた。
斎藤さんも、「賃料の高い新築アパートはまだ満室になっていないようですが、徐々に人が戻ってきました。うちの賃貸の稼働率も、コロナ前の99.5%が一時期90%まで下がりましたが、今は94%ぐらいに回復してきました」

商店街の中の空き物件
コロナ以前から、石垣島が好きな人は賃貸物件の1室を借りて、頻繁に行き来をしている人達がいるという。融資の関係で不動産投資は難しいかもしれないが、自身のテレワークやワーケーションの場所として石垣島はありだと感じた。
健美家編集部(協力:野原ともみ)