九州大学と連携して進める
元岡地区研究開発次世代拠点形成事業
福岡市は第9次福岡市基本計画という都市計画を策定しており、その中で元岡地区を「学生や研究者などが、新たな知を創造し、発信する研究開発拠点の形成を図る地区」と位置付けている。
具体的には、九州大学と連携して、新産業・新事業が生まれる研究開発拠点の形成を目指すものだ。研究・開発施設に加えて、商業施設も設けることを予定している。
開発予定地は九州大学伊都キャンパスの近隣地で、ダイハツ九州株式会社と福岡市が所有している土地を活用する目的で事業が計画された。

福岡市は2020年7月から事業者公募を始め、2020年11月に事業予定者を選出、12月には選出した各社と基本協定書の締結に至った。
事業予定者の代表企業は大和ハウス工業株式会社で、その他に西部ガス都市開発株式会社などが事業参画する。
開発計画のスケジュールは2期に分かれており、2022年10月に第1期を開業し、第2期の開業は2024年春の予定。

※引用:福岡市
現計画では居住ゾーンに4階建ての建物が3棟建設される予定。第1期に2棟、第2期に1棟がそれぞれオープンする。
なお、産学連携の強化を狙ったプロジェクトのため、予定地には九州大学のキャンパスと有機光エレクトロニクス実用化開発センターが隣接している。
開発エリアには、学生以外にも研究職に就く人が集まってくることが予測される。
例年安定している
北九州市西区の学生人口
開発計画の予定地は北九州市西区に位置している。西区の学生人口は過去5年でどう推移しているのか、年齢を18歳〜22歳に絞って人口推移を検証した。

※参照:福岡市
過去5年間の推移を見ると、2019年までは安定して11,600人を上回っている。しかし、2020年に入って人口が急激に減少しており、減少幅は約500人だ。
2020年4月はコロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が日本全国に向けて発令されたため、その影響を受けて学生人口が減少したものと思われる。
2020年は学生人口が減少しているものの、コロナウイルスの感染拡大が収束すれば、再び11,600人前後まで回復する可能性はあるだろう。
また、開発事業が完了すれば、生活インフラが整うため周辺の活性化も期待できる。
福岡県の地価は安定しているものの
2020年は前年比で下降気味
つづいて、西日本レインズを参照して福岡県の地価推移を検証した。2019年11月から1年間の成約地価推移は以下の通り。

※参照:西日本レインズ
2020年2月に少し価格が上がっているものの、それ以外の月では概ね安定していることがわかる。なお、2020年の平均を計算すると、1uあたり約7.35万円となっている。
地価そのものは安定しているものの、対前年同月比の推移を見ると、2020年はマイナスの月が目立つ。
2020年の平均前年比率は-6.1%で、2019年と比較すると福岡県の地価は下降気味だ。土地の仕入れをしやすいマーケット動向と言える。
学生向けアパート投資なら
青田買いできる可能性
現在発表されている元岡地区研究開発次世代拠点形成事業の概要からは、居住棟も建設されることは読み取れるものの、供給戸数や間取りなどの計画はまだ公表されていない。
一方で、県の統計からは、開発エリアの学生人口はある程度安定していることがわかる。また、福岡県の地価は2020年に入って下降気味だ。
計画予定地は、最寄り駅からの公共交通がバスしかなく、決して交通の便が良いとは言えない。
しかし、九州大学の伊都キャンパスは、他のキャンパスからの学部移転受け入れを2018年9月に完了したばかりだ。
学生向けアパート投資にありがちな、キャンパス移転による投資失敗も当面は可能性が低いと言える。
事業完了によって当該エリアが活性化すれば、空室率の低い学生向けアパート投資も期待できるだろう。
取材・文:秦 創平