日本列島の南西、九州の南東部に位置する宮崎県。1年を通して温暖な気候と豊かな自然と、そこに暮らす人々の穏やかな空気感が南国情緒を醸し出し、ゆったりと時間が流れる地域である。
県庁所在地の宮崎市は、人口約40万人の中核市。人口は減少傾向にあるものの、移住先としての人気の高まりも手伝ってか、ここ最近は転入者数が転出者数を上回っている。
宮崎の空の玄関口である宮崎空港は、市内中心部から車で約15分でアクセス可能な利便性の高さが旅行者や出張者からも好評を得ている。
市内中心部でさえ車が欠かせない
圧倒的な車社会の宮崎
一方、陸の玄関口である宮崎駅はというと、「駅に何もない」「1時間に1本しか電車が来ない」などネガティブな声を聞くことも多い。事実として、JR九州が公表する2019年度の宮崎駅の1日あたり乗降客数は4,958人で、県内で最も大きな駅でありながら、九州全体で44位という結果に甘んじている。地元住民が通勤や通学以外で電車やバスを利用して出かけることはまれな、圧倒的な車社会である。
では、皆が休日に車でどこへ出かけていくのかといえば、地方都市の御多分にもれず、イオンである。店舗面積84,000㎡と九州最大級の規模を誇るイオンモール宮崎(2005年開業)は、誕生するやいなや宮崎の商環境をがらりと変えた。
駅から約800mほどに位置する中心市街地を繋ぐ通りの歩行者量は減少傾向が著しく、ここ15~20年で半減してしまった。メインストリート沿いでさえ、空き店舗や低利用の空き地が目立ち、商業地としてのまとまりが絶たれてしまっている。宮崎の経済圏はまさしく”イオン一強”という状況が長らく続いてきた。
低迷した中心市街地の求心力
アミュプラザが復活の起爆剤となるか
ただ、そうした状況にも変化の兆しが徐々に表れだした。宮崎市はこれからの都市計画において、中心市街地の求心力を取り戻すことを最重要課題のひとつとして標榜している。
居住機能や商業・業務機能などの多様な都市機能をコンパクトに集約した「中核拠点」を起点としながら、各地に広がる地域拠点や「学術・医療」「観光・リゾート」といった各種都市拠点を機能的、広域的に連携させる「多拠点ネットワーク型コンパクトシティ」の実現を目指しているのだ。
そんな市の都市計画にも呼応する形で、JR九州グループと地元企業の宮崎交通の共同開発による駅ビルを核とした複合的まちづくりが計画され、2020年11月20日に「アミュプラザみやざき」として開業した。
アミュプラザみやざきは10階建ビルの「うみ館」(※7~10階はオフィス)と道路をはさんだ向かいの6階建ビルの「やま館」、そして駅高架下の商業施設「ひむかきらめき市場」からなり、合計97店舗が出店する。
まちの活性化と回遊性向上をミッションの1つとして掲げており、駅前の賑わいを中心市街地へと届けつつ、相互に人が行き交う流れの創出を狙う。
さて、アミュプラザみやざきの開業から約9ヶ月が経過したが、現在の状況はどうだろうか。JR九州の報告によると開業から3月末までの令和2年度の営業実績は、全館売上高29億円、入館者数490万人(1日あたり2万9千人)だそうだ。
コロナ収束の兆しが未だ見えない状況下にあり、おそらく本来の目標には遠く及ばない数字だろう。それでも、1日5千人しか乗り降りしない駅に、毎日3万人が訪れるようになったということだ。
駅と中心市街地を繋ぐ通りの様子も、少しずつだが変化が出てきている。「やま館」に沿う形で駅からまっすぐ中心市街地に延びる、古くからある商店街通りでは、アミュプラザの開業に合わせて若いオーナーによる個性的な店舗が続々と誕生。それらが行列をつくる光景や、共同でイベントを開催する様子も見られるようになった。
市もエリアの回遊性を高めるために低速で走る小型の周遊バス「グリーンスローモビリティ」を運行させるなど、通りをゆく人の流れはじわじわと増えており、にぎわいの点と点が線で繋がりはじめている。コロナの喪が明ければ、アミュプラザみやざきも商店街も地元百貨店もそれぞれに手を組んで、一気に攻めに転じたいところだろう。
かつて瀕死だった大分駅周辺市街地がアミュプラザの開業を契機に、見事に復活を遂げた隣県の事例もある。中心市街地が大いに盛り上がり、周辺エリアも含めた面での活性化が進んでいくことに期待したい。
健美家編集部(協力:Tamaarai)
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