
「先進的な街づくり」の一環として
大型イベント施設などを整備する予定
沖縄県は那覇市の東に位置する与那原町の中城湾(なかぐすくわん)沿岸エリアで、大型MICE施設の整備計画を進めている。
MICEとはビジネスイベントを総称する言葉で、企業などが実施する会議(Meeting)、報奨・研修旅行(Incentive)、国際機関などが実施する国際会議(Convention)・展示会(Event)などのことを意味する。
県が想定する大型施設の用途として、会議や展示会だけでなく県内最大規模のコンサートなども含まれているのが特徴的だ。
イメージとしては、千葉県にある幕張メッセのような施設が近いと考えられる。
しかし、計画されている施設の敷地面積は14.5ヘクタールで、7.51ヘクタールの幕張メッセと比較するとほぼ2倍だ。
展示場の面積が約1万uで、多目的ホールの面積が約7,500u、会議室の数は20〜30が想定されている。なお、コンサートなどは展示場で行う予定だ。
沖縄県が当該計画を推進する主な目的は、ビジネスインバウンドの誘致・国際的なMICE開催地としてのブランド構築・アフターコロナにおける経済活性化のきっかけ作り・県内で発展の均衡を取ることなどだ。
沖縄の主要産業は観光に紐づく第3次産業であり、統計によると、2015年度における沖縄県の産業割合のうち8割以上を第3次産業が占めている。

※引用:沖縄県
一方で、沖縄の経済はコロナで大きな打撃を受けており、2020年度上半期の観光客数は対前年度比で80%のマイナスだった。

※引用:沖縄県
こうした背景を受けて、沖縄県では「沖縄における観光リゾートの魅力」と「産業振興」の拠点を作るべく、大型施設の計画を推進している。
観光業が主要産業であることから、インバウンド事業を再生するべく、集客のできる施設を作るという狙いが見える。
既存のイベント施設との違いは観光業にも利用できることを意図しているものであり、周辺に海のレジャーに利用できるマリーナや緑地の整備などを積極的に進めることだ。

※引用:沖縄県
エリア内には交通ターミナルが整備され、那覇空港及び那覇市の中心にある沖縄県庁から大型施設まで車で20分で行けるよう、道路の整備も進められる。
沖縄県内にはMICE施設と言えるものが既に4箇所ある。万国津梁館(ばんこくしんりょうかん)や沖縄科学技術大学院大学などだ。

しかし、沖縄コンベンションセンターを除く既存の施設は那覇空港から車で1時間以上かかるなど、あまりアクセスが良いとは言えない。
新施設の整備には、既存施設のアクセスに関する課題も解決したい意図が見える。
計画の見直しを経て
パブコメ募集などが次のステップか
沖縄の大型MICE施設計画の構想は近年始まったものではなく、以前から計画が進んでいた。
以前の計画では展示場の面積が約3万uの前提となっているなど、もっと大型のものだったが、採算性に問題があると判断したため縮小することとなった。
さらに、コロナによる経済不振や民間事業者の投資意欲が鈍ったことなども計画見直しのきっかけとなっている。
なお、計画の縮小に伴って予算も従来予定の500億円から300億円に減額された。
しかし、事業規模が縮小されたとはいえ、想定される催事件数は年間223件、経済効果は年間551億円と莫大だ。
1つの施設で集客することによる消費・宿泊の経済効果だけでなく、道路整備などによって周辺にも経済効果が波及することが期待されている。
沖縄県は2022年2月に修正後の基本計画を発表しており、県のウェブサイトには、今後パブコメの募集を予定しているとある。
施設の完成はまだかなり先の見通しだが、予測される経済効果の大きさもあり、今後の行方に要注目だ。
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取材・文:
(はたそうへい)