
見込みの来場者数は673万人、目指すは欧州風カジノ
運営時の経済波及効果は3328億円と試算
長崎県がカジノを含む統合型リゾート(IR)の「区域整備計画」を提出し、政府は今年秋以降に認定するかの結論を出す。2027年秋の開業を目指す長崎IRはハウステンボスを拠点とし、年間約673万人の来場、区域内だけで約1万人の雇用を見込む。
開業が実現すれば、長崎周辺の経済がにぎわい、周辺の不動産賃貸市場が盛り上がるのは間違いない。長崎は、今年9月に西九州新幹線「かもめ」の開業も予定される。不動産投資の選択肢に加えてみてはいかがだろう。
長崎IRは、波の穏やかな大村湾に面するハウステンボスが会場となる。長崎県はコンセプトについて、区域整備計画で「豊富な自然に囲まれた和と洋が融合した非日常空間と新しい発想を促す施設群を有するIR区域」と表現した。


中核となるのは、欧州を中心にカジノを展開している「カジノオーストラリアインターナショナル」の日本法人だ。
初期投資額は約4383億円。このうち約1753億円を企業などからの出資、約2630億円を金融機関などからの融資でまかなう。
整備されるのは、カジノ、国際会議場、展示場、劇場、タワーホテル、ショッピングモールなど。
カジノは「ヨーロッパのカジノがあえて正装で出かける大人の社交場ともされることを踏まえた、格式高いゆとりある雰囲気を醸成する」とする。
国際会議場、展示場などを合わせた「MICE施設」は「国際会議場、展示場、宿泊施設等を含む一体型コンベンションコンプレックス施設として、国内では最大規模のものとする」。
ホテルなどの宿泊施設は「新と旧、和と洋を象徴的に融合し、革新的なラグジュアリーホテルから伝統的な温泉旅館、ヨーロッパ老舗ホテル、現代ヨーロッパ風カジュアルホテルまで合計約2522室の多様な施設を整備する」としている。
このほか、「日本・九州の各地域の伝統・文化・食・芸術・自然等の特徴ある素材を活かし、先端技術を活用し国際的に最高水準のエンターテインメント性を有するコンテンツとして提供」する「ジャパンハウス」も作る計画だ。
開業5年目の2031年の年間来場者数は673万人を見込む。このうち外国人が151万人、日本人が521万人となっている。
売上高の計画は約2716億円。カジノの「ゲーミング部門」で74%に当たる約2003億円を、カジノ以外の「ノンゲーミング部門」で26%に当たる712億円を稼ぐ。
区域内での雇用者数は9693人を予想。建設時の経済波及効果は5428億円、運営時の経済波及効果は3328億円と試算している。
長崎IR開業でJR大村線、佐世保線、長崎本線の賃貸需要高まる
西九州新幹線開業、大村線とは諫早駅で連絡
足元では新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いてきており、IR開業時には、国内や海外からの旅行者の移動が盛んになっている可能性が高い。長崎県が期待する経済効果は決して不可能なものではない。
IRで雇用が生まれるのを受けて、ハウステンボスに乗り入れる鉄道の沿線に地賃貸需要が生まれるのは間違いない。
ハウステンボスのあるハウステンボス駅はJR大村線にある。その沿線の各駅や、大村線につながる佐世保線、長崎本線などの沿線は狙い目だ。

また、今年9月には西九州新幹線「かもめ」が開業し、大村線の諫早駅で乗り換えが可能になる予定だ。西九州新幹線は、武雄温泉駅から長崎駅まで北から南へつなぐ。九州圏内での交通の便が非常に良くなるので、諫早駅で西九州線と連絡する大村線沿線などの賃貸需要拡大に大きく貢献するだろう。

大阪でもIRを計画 2029年秋開業を目指す 初期投資1兆800億円
長崎IRとは距離が離れ、客の奪い合いはないとの予想
IRは、長崎以外に大阪も区域整備計画を申請している。
大阪IRに関しては、3月1日配信の「大阪IR、2029年秋にも開業へ!鉄道路線が複数延伸で新駅ラッシュ。『どの沿線・駅で仕込むか』がカギ」でも説明した。
改めておさらいしておくと、IRの建設時に約11.6万人、運営時に年9.3万人の雇用が生み出されると試算されている。
初期投資額は1兆800億円、開業後に見込む年間の売上高は5200億円。やはり、カジノやホテル、国際会議場、飲食施設などが一堂に整備される一大エンターテインメント拠点となる。
もし大阪と長崎の両方が認定されれば、日本初のIRが関西以西に2カ所に誕生することになる。互いに距離がかなり離れているので、「客の奪い合いになる心配はあまりないのではないか」との声が多い。
IR、そして西九州新幹線の開業が予定される長崎を、有力な投資先として注目してもよいだろう。
取材・文:
(おだぎりたかし)