事業予定者と
基本協定を締結
大阪市東住吉区役所は、東住吉区矢田5丁目20番1号他の市有地について、GLP大阪市東住吉区まちづくり特定目的会社と土地売却に関する基本協定を締結したと2021年6月2日に発表した。
GLP大阪市東住吉区まちづくり特定目的会社は、東京と大阪に拠点を置いて物流不動産を開発運営する日本GLP株式会社が設立した特定目的会社だ。
東住吉区は北区の南南東または浪速区の南東に位置しており、開発地は大和川の沿岸で東住吉区の南に位置している。
※引用:東住吉区
当該開発計画の完成予定は2026年5月で、物流施設・商業施設・公園がそれぞれ整備される予定。開発地の敷地面積は56,000㎡。
※引用:東住吉区
商業施設は2階建てで延床面積が約4,000㎡となる。想定されているテナントの種類は、スーパーマーケット・ドラッグストア・カフェなどの飲食店だ。
見込み客としては徒歩および自転車で来店する近隣住民を想定しており、駐輪場等を重視して整備する方針。
ただし、駐車場も相当数設けることで周辺の交通渋滞は起こらないよう配慮する予定となっている。
物流施設は2棟に分けて建設する予定となっており、テナント数は最大5社を見込む。
また、想定している取り扱い荷物はアパレル・食品・日用品など。
なお、商業施設と物流施設との合計で、ドライバー等も含め875人の従業員が業務に従事する見込み。
数千人などの大規模な従業員数ではないが、周辺エリアでは、少なからず雇用拡大による住宅需要も喚起されるだろう。
区役所によると、2021年1月時点では東住吉区の推計人口は127,341人だ。区の人口を鑑みれば、900人弱の雇用は決して少なくない。
計画では、商業施設や物流施設に加えてゲートボール場やフットサルコートといったスポーツ施設も建設される予定。
※引用:東住吉区
開発計画にスポーツ施設が含まれている裏には、大阪市外からの転入者を増やしたい区の思惑がある。
再開発が持つ狙いの1つは
市外からの転入者増加
大阪の不動産投資で安全なのは、大阪市の中でも中央区・北区・浪速区などの都心6区と言われている。
都心6区が低リスクと言われる所以は、都心6区では人口が増加傾向にある一方で、他の区では人口が減少しているところも多いからだ。
東住吉区も例外ではなく、行政としては生産年齢人口を呼び込むことで、人口減少に歯止めをかけたい意図を持っている。
東住吉区では、65歳以上の人口が29%・15歳~64歳の生産年齢人口が59%となっており、大阪市全体よりも高齢者の割合が多く、生産年齢人口の割合が少ない。
行政が呼び込みたいと考えているのは25歳~44歳の子育て世代だ。
なお、大阪市が実施している人口移動要因調査によると、市外からの転入者が引っ越してきた理由として多いのは、仕事の都合および結婚を除くと「生活利便性が良いから」というものだ。
通勤利便性と買物の利便性を重視する人は特に多く、「医療施設やスポーツ施設が整っている」「緑や公園が充実している」という理由が続く。
今回の開発事業では、商業施設を整備することで生活利便性の向上を図り、スポーツ施設及び緑地を整備することで、環境的な要望に応えることを狙いとしている。
通勤利便性については、そもそも開発エリア周辺の利便性はそれほど低くない。
開発エリアの最寄りとなる矢田駅から難波・心斎橋といった都心エリアへは、電車で30分前後の距離だ。
再開発の狙い通り、生産年齢人口の呼び込みに成功すれば、東住吉区はDINKS世帯または子持ち世帯の入居を狙った投資に適したエリアと言えるようになるだろう。
取材・文:秦 創平