
駅ホームから見える緑地と
建物の大きさが圧巻
この不動産投資ニュースでも、何度となくご紹介している注目のホテル「OMO7大阪 by 星野リゾート」(おもせぶんおおさか)が4月22日についに開業。JR新今宮駅前に、敷地面積約1万3900uとほぼ甲子園球場のグラウンドがすっぽり入る大きさ。
その半分以上を占める「みやぐりん」と呼ばれる緑地と、14階建ての白い幕が張られた建物がホームからも一望できて、あらためてそのインパクトに驚かされる。いったいここの元はどんな土地だったのか?
この土地は、元々中山太陽堂(元クラブコスメチックス)の本店と工場があった場所。中山太陽堂の移転後は、30年以上も空き地のままだったのを2017年の大阪市による開発事業者公募で、星野リゾートによるホテル建設計画が採用され、5年の歳月を経て開業に至っている。今、新しく出来上がった緑地と真新しい建物のスケールは、そんな塩漬け空き地のイメージを完全に一新している。

徒歩圏には下町情緒あふれる新世界や天王寺動物園などある一方、JRを挟んであいりん地区を抱える新今宮エリアというディープな立地が注目の的だったされた。
だが、この場所の利便性が高いのは確か。新今宮駅はJRと南海電鉄が乗り入れ、関西空港からも1本。徒歩3分にはOsaka Metro 御堂筋線と堺筋線、路面電車の走る阪堺電気鉄道も新今宮駅もある。
USJや2025年に人工島「夢洲」で開催予定の大阪万博(2025年日本国際博覧会)などに行くにも便利な立地である。コロナ禍の前には、一帯の格安宿がインバウンド客を中心に賑わってもいて、宿泊の受け皿としてのポテンシャルは高いといえる。


広々したロビー、銭湯思わせる湯屋
夜には建物に花火投影
内部も、外観と同様に圧倒されるスケールだ。新世界のアイコン黄金色のビリケン像が迎えるエントランスから通路を抜けると、一気に端から端まで85mのパブリックエリア「OMOベース」が広がる。そこに自動チェックイン機を備えたロビー、ライブラリー、ダイニングやカフェがある。
全436室の客室は定員3名までのツインルームと2段のベッドスペースのあるだんだんルーム。そして6名まで泊まれて大阪の街を一望できる59uのいどばたスイートの3タイプ。



特徴は、やはり駅前に広がるガーデンエリア「みやぐりん」で、宿泊者と施設利用者の専用エリア。ここで夕方にはネオンアートが灯り、宿泊者にはたこ焼きやクラフトビールがふるまわれ、浴衣のような館内着で提灯を片手に寛ぐことも。
また、毎夜、建物の外装膜を利用して、約13,000個のLED照明を照射して開催される打ち上げ花火には見とれる。みやぐりんに立つ、温浴棟「湯屋」には浴室内の天窓が開放的でゆったりお湯に浸かれる。湯上りには、大阪で有名なアイスキャンデーが置かれて、無料で楽しめる。


カフェでは、串カツやお好み焼き、大阪らしいアレンジのメニューが並び、ダイニングでも串カツや箱寿司などをフランス料理をベースに仕立てたという工夫とひねりの効いたディナーコースが提供されている。
星野リゾートの都市観光ホテルOMOの持ち味である、スタッフがご近所ガイドになって案内するツアーも、ディープな新世界を案内してくれたり、木津卸売市場に行って卸売ならではの商店巡りをしたりと、このエリアらしさを味わえる充実した内容だった。
環境に配慮した設計も
地域と共に発展への課題
遠目に真っ白く見える建物は、国内初となる建物の外装に膜を張る設計によるもの。
「フッ素樹脂酸化光触媒膜」という材料を用いた白い外装膜は、日射などの外部からの光のうち、12.7%を透過・拡散し、78.5%を反射・拡散して、窓から入る日射量を 30~45% 軽減することができる。
これにより冷房立ち上げエネルギー消費量の軽減できるほか、ヒートアイランド現象の緩和に寄与する。ガーデンエリア「みやぐりん」も芝生による地表面緑化による高温化を抑制、約200 本の植栽やパーゴラを設置したテラスデッキによる日射遮蔽、植栽への潅水などで冷却効果をもたらしている。

SDGsに貢献するCSV 経営(CSV:共通価値の創造)を方針とする星野リゾートだが、こうした大規模開発物件での環境配慮や、施設のコンテンツで地元を盛り上げて共に共有の価値創造に結びつけていこうという姿勢は明確だ。
今後の課題は、まだ途上のJR・南海電気鉄道とも駅周辺のエリアが整備され、アプローチが改善されること。
南海電気鉄道の新今宮駅改札のリニューアル工事は完成しているが、JRからの乗り換えルートは、大阪万博に向けての工事は進んでいるものの具体的な完成日程は未定だ。また駅前整備も、南海電気鉄道が駅の北側におもてなし・にぎわいづくりの拠点「さんかくち」をオープンしたが、まだ宅配ロッカー、傘シェアリングサービスとキッチンカー2件ほど。
JR新今宮駅高架下の屋外型フードコート「新今宮の屋台」もコンテナ型の屋台が3店舗というところで、新たな賑わいをもたらすにはもう少し時間がかかりそうだ。
宿泊料金について、ツインルーム1 泊 61,000 円~ というのが一人歩きしている感があるが、これは1室あたり・税込・夕朝食付の場合。3人で泊まって夕食は新世界へということならリーズナブルにも楽しめる。現在は地元割や大阪+近県割などの利用でさらに値頃感もあり、視察時には平日にもかかわらず結構賑わっていた。

地元の人も数多かったようで「湯屋のアイスキャンデーが懐かしい」「夕方のふるまいが楽しい」などの感想も聞いた。
地元にも、そして初めてここに来た人にも、将来のインバウンドにも、ここは新しい発見のある場所には違いない。駅前整備と共に、新今宮の賑わいの中心地になってくれることを願う。
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執筆:
(おのあむすでんみちこ)