
「なんば駅前広場」および
「なんさん通り」の一部を空間再編へ
大阪市は2022年6月上旬、「なんば駅周辺における空間再編推進事業整備プラン(案)」を発表した。このプランとは、高島屋大阪店となんばマルイに挟まれた「なんば駅前広場」と、高島屋大阪店東側のなんさん通りの一部を歩行者中心の空間に再整備するという構想だ。
なんば駅周辺の道路空間の再編については、2011年に地元町会や商店街、企業が「なんば安心安全にぎわいのまちづくり協議会」を設立したことで、歩行者空間化の検討を開始。2015年には大阪商工会議所や行政も加わり、空間再編に向けた取り組みが本格的に検討され、推し進められていた。
社会実験の結果、利用者の9割が
なんば駅前の歩行者天国に賛成

具体的な取り組みとしては、2016年と2021年の2度にわたってなんば駅周辺で実施された社会実験だ。
2016年11月に実施された社会実験では、高島屋大阪店前の西行き2車線道路と、隣接するタクシー乗り場を3日間にわたって封鎖。ウッドデッキを敷設し、飲食屋台やカフェスペースを設置した。そして、2021年11〜12月の社会実験では、さらになんばマルイ前の東行き2車線道路も封鎖し、なんば駅前広場を完全な歩行者天国に切り替えた。
2021年の社会実験では利用者の9割が「広場を歩行者のための空間に改造する」ことに賛成。通常時と比べて高齢者や子ども、女性の滞留時間が増え、人目の行き届く安全な空間であること、歩行者が安全に通行できたことなどが好意的に受け止められる結果となった。
万博までに空間再編事業が完了すれば
国際的アピールや経済効果にも期待大
この検証結果を受け、大阪市はなんば駅周辺の道路空間の整備方針や整備形態等を定める「なんば駅周辺における空間再編推進事業整備プラン(案)」をとりまとめ、今回の発表に至った。

なんさん通りは南北に分けて、北側は1時〜9時の間、貨物車に限って通行でき、南側は24時間貨物車に限って通行可能になる。なんさん通り周辺には24時間利用できる荷さばき停車帯を2カ所設置し、7、8台の貨物車が停車できるよう整備。現在、なんば駅前にあるタクシー乗り場は御堂筋北側とパークス通りに移し、バス停も現状より御堂筋本線側に移設するという。
なんば駅前広場、なんさん通りの空間再編により、歩行者空間は約2倍に拡大、車両空間は約0.2倍に縮小することになる。
この工事は2022年度中に着工する予定。まずは広場部分を完成させた後、2025年までになんさん通りを含む全体の完成を目指す。
都市空間再編事業は、ニューヨーク(アメリカ)をはじめ、メルボルン(オーストラリア)、ミュンヘン(ドイツ)といった世界の大都市ですでに実施されている。
歩行者の安全確保はもちろん、広場や駐車場などに再生することで人々の活気が増し、滞留時間も長くなることから、経済効果の高まりもメリットの一つに挙げられる。
国内のみならず、国外の来場者も数多く訪れると予想される、2025年に開催される大阪・関西万博。この空間再編事業がそれまでに完了すれば、関西国際空港からの玄関口となる「なんば」は大きな経済効果をもたらし、国際的にアピールするチャンスとなるはずだ。
健美家編集部