大阪の代名詞「通天閣」からほど近い「新今宮」。JR環状線と南海本線が交差し、天王寺駅からも難波駅からも電車で数分という抜群のアクセスながら、関西人の間では「近寄ってはいけないエリア」というイメージが強かった。
JR新今宮駅のすぐ南側の「あいりん地区」と呼ばれる労働者街ではかつて暴動騒ぎが繰り返され、覚醒剤の密売や売春など犯罪の巣窟とされていたのだ。
交通アクセスの良さと大阪らしいカオス感が大ウケ、
外国人観光客がいち早く注目した新今宮の魅力
そんな新今宮が、近年、大きな変貌を遂げている。通天閣やあべのハルカスなど大阪を代表する観光地まで徒歩圏内、串カツやふぐ料理といったディープなグルメスポットも多数あることから、外国人観光客がいち早く、新今宮エリアに注目し始めた。
コロナ前は、一泊1000円程度で宿泊できるあいりん地区の日雇い労働者向けの簡易宿所には多数の外国人観光客が滞在していた。
これに目をつけて、新今宮エリアには多数の外国人向けゲストハウスや民泊施設が誕生。アメリカ在住のある日本人投資家は、日本に旅行するアメリカ人の多くがUniversal Studio Japan(USJ)やグルメ目的で大阪を訪れることに驚いたという。普段からAirbnbを使いこなし、世界各地の民泊を泊まり歩くアメリカ人旅行者の大阪での滞在先のほとんどが、1泊2万円前後の新今宮エリアの一軒家の民泊施設だったため、この投資家は驚いたという。
女性の一人旅や家族旅行で泊まるような場所ではないと忠告したものの、サイトのレビューが圧倒的に良いという理由でアメリカ人たちは新今宮に宿泊し、旅行から戻ると「最高の体験だった!」と喜んでいたという。
ビジネス客に人気の大阪キタエリアの外資系ホテルに比べると圧倒的に安く宿泊でき、街歩きや食べ歩きを満喫できるのが新今宮エリアの魅力だという。
世界屈指の治安の良さを誇る日本では、危ないイメージが先行してしまう新今宮だが、外国人観光客にとってみれば安全に歩けるし、昼間から路上で酒を飲むオジサンたちも、「異国情緒あふれるカオス」として好意的に受け止められているようだ。
星野リゾート進出でますます変わる新今宮、
大阪市も「新今宮エリアブランド」定着に注力
コロナ禍でインバウンド需要が激減したものの、大阪市は昨年3月、「新今宮エリアブランド基本戦略」を発表した。冒頭、
大阪市では、新今宮を大阪ミナミの新た な玄関口として発展させ、「大阪都市魅力創造戦略2025」がめざす大阪全体の都市魅 力の向上に資するよう、エリアブランドの向上を図っていきます
と宣言する通り、行政としての力の入れようが半端ない。今年度末まで集中的に、新今宮エリアに人を引き付ける魅力・価値の再評価と、新今宮エリアブラ ンドの定着を図っていく行政支援を行っていくという。
そして、日本人観光客にとっても大きな訴求力となるのが、星野リゾートが今年4月にJR新今宮駅の目の前にオープンさせた都市型ホテル「OMO7(おもせぶん)大阪 by 星野リゾート」だ。
星野リゾートの大阪進出の地として新今宮が選ばれたことは驚きを持って受け止められたが、「アクセスが非常に良いことと、『THE大阪』を味わえるディープな場所であること」が新今宮進出の理由であると同社広報は説明する。
「OMOというサブブランドで東京、北海道、沖縄那覇、京都で都市ホテルという新しい旅のカタチを作ろうとしてきた星野リゾートとして、都市の魅力あふれる場所として大阪は外せないし、大阪で展開するのにぴったりな場所が新今宮でした」(同社広報)。
同社広報によると、4月の開業以来コロナ感染症第七波の影響が出始める前の6月まで約7割の稼働率をキープし、週末は9割の客室が埋まるほどの人気だという。
客室稼働率は当初想定の2割増で、宿泊のない日帰り利用客は想定より5割も多いというから、相当な好調ぶりがうかがえる。
現在は近隣の近畿圏の顧客が約6割を占めているというが、インバウンド需要が戻ってくると同ホテルが趣向を凝らす様々な仕掛けが外国人観光客に大ウケして予約の取りにくいホテルになりそうだ。
官民一体となって盛り上げていく新今宮エリアの発展は、近隣の民泊施設にも好影響を与えるだろう。
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健美家編集部(協力:
(おおさきりょうこ))