圧倒的な支持で大賞に選ばれた
大阪府大東市北条のmorineki地区
2022年5月、国土交通省は令和4年度の「都市景観大賞」(国土交通大臣賞)を公表。その都市空間部門で「大阪府大東市北条(morineki)地区」(地区面積約1.1ha)が選出され、近畿圏としては8年ぶりの大賞となった。
「都市景観の日」実行委員会が主催する都市景観大賞は、良好な景観の形成に資する普及啓発活動の一環として、平成3年度より毎年度実施されている表彰制度。
景観に関する優れた地区・活動に対し、「大賞」「優秀賞」などが授与され、さらなる取り組みの契機とするとともに、良好な景観の形成が推進されることを目的に、全国に広く紹介されている。
都市空間部門の大賞に選ばれた大阪府大東市北条地区について、審査委員長の陣内秀信氏は次のように評している。
「『大阪府大東市北条地区』は圧倒的な支持で大賞に選ばれた。老朽化した市営住宅の建て替えだが、現地審査委員に『何でこんなことができたのか』と唸らせたほど。公民連携の住宅に加え、オフィス、商業を巧みに併設し、豊かな生活と活動の場を実現。総合性、社会性を備えた事業手法は、今後の公営住宅建て替えのモデルになる」
まちへの愛着が芽生え、
定住人口も増加傾向に
大阪府大東市にある北条地区は、JR学研都市線「四条畷」駅の東側に位置。整備前は老朽化した市営住宅や都市計画公園があり、店舗、店舗併用住宅、戸建住宅、市営住宅の混在地区で、大東市内の他の地域よりも高齢化率の高い地域だった。
しかし、市営住宅の建て替え計画を機に、公園、道路、河川、橋梁を一体的に、生駒山系の豊かな自然に寄り添う北条地区のグランドデザイン、エリアビジョンを再構築。
まちづくり会社による公民連携の事業スキーム(※PPPエージェント方式)を用いた住宅、オフィス、店舗、公園を組み合わせた複合用途のまちづくりを実現させた。
また、職や住の隔てなく、自然豊かなこの地で暮らしの環境を育む「北条の樹」のビジョンは、ここで生まれる多様な人々の交流そのものを、この地域ならではの情景に変えている。地理的環境と歴史的環境を活かした街並みの整備によって、地域にはまちへの愛着が芽生え、定住人口も増加傾向にあるという。
※PPPエージェント方式…公や地元企業などが出資したまちづくり会社が、公が持つ「公共性」と民が持つ「事業性」の両方の視点から、公民連携事業を企画運営する方法。
徹底した公民連携のプロセスが
公営住宅建て替えプロジェクト実現の鍵
「徹底した公民連携のプロセスが、今回の公営住宅建て替えプロジェクト実現の鍵。この場所をどのようにしたいのかを突き詰め、描いたビジョンの力が多くの人の心に響き、それぞれの仕事をいきいきとさせている」。
審査員による総評が示している通り、大阪府大東市北条地区は公営住宅建て替えの理想モデルと言えるだろう。このようなモデルケースが近畿圏はもちろん、全国にも波及していくのか。今後への期待が高まる。
健美家編集部