福井県敦賀市への延伸を控えた北陸新幹線。「IRいしかわ鉄道」が並行在来線を運営することに決定

東京～大阪まで結ぶ計画の北陸新幹線
2024年春には敦賀まで延伸する予定

北陸新幹線は、東京～大阪までの整備が計画されている整備新幹線のひとつ。1997年10月に高崎～長野の117㎞、2015年3月に長野～金沢までの240㎞が開業している。

2024年春（2023年度末）には、金沢から福井県敦賀までの125㎞が完成する予定。その間には、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、越前たけふの駅が設置される予定だ。

開業が迫るなか、沿線では駅舎をはじめとする各種設備の整備が急ピッチで進められている。

例えば、敦賀駅。3階の新幹線ホームからは海を望むことができ、床には船の甲板風の木彫りタイルを敷き詰めた。船をモチーフにした待合室も備える。2階の乗り換えコンコースには改札が19通路あり、これは整備新幹線のなかでは最多となる。

北前船の寄港地として栄えた歴史があることから、天井は帆をイメージしたデザインを採用したという。なお、1階は在来線特急のホームとなる。各駅が整備されるエリアでは、カウントダウンイベントも随時開催されるようだ。

新幹線が延伸する際に懸念されるのは、住民の足となる並行在来線との兼ね合いだ。

ちなみに、2030年度をめどに事業を進めている北海道新幹線の札幌延伸の場合、並行在来線はJR北海道から経営を分離。JR函館線の函館～長万部間の山側路線はバスに切り替える見通しで、1日50本ほどの貨物列車が走る海側路線は北海道物流の大動脈であることから、期間鉄道区間としての在り方を検討しているところだ。

北陸新幹線だが、在来平行線となる北陸線の金沢～敦賀間は、JRから経営分離することが決まっていたが、石川県加賀市の大聖寺駅より西の県内区間から敦賀駅までの鉄道事業は、福井県や福井市がなど沿線7市町村、福井銀行、北陸電力などが出資する第3セクターのハピラインふくいが経営を引き継ぐことが、2022年1月に決定。

金沢駅から大聖駅間に関しては、現行のJR西日本から県が出資する第3セクターのIRいしかわ鉄道が事業を引き継ぐ計画を国土交通省が今年2月に認定した。新幹線の敦賀駅の開業に合わせて経営をバトンタッチするという。

気になる事業の持続可能性だが、今年7月から11年間は事業計画に基づき輸送の維持が図られ、IRいしかわ鉄道は独立行政法人の鉄道・運輸機構から出資を受けられるようになる。

ただし、これら路線は当面は赤字が続く見通しで、県や沿線自治体は区間運賃を引き上げる見通し。具体的な運賃は今後明らかになるが、IRいしかわ鉄道では、普通運賃と通勤用定期を14％引き上げる見込みだ。普段の足として使っている住民にとって、痛手となることは間違いない。

新幹線の延伸によりアクセスが良くなることで観光・ビジネス利用が増える一方で、在来平行線の運賃は上がるなど、メリット・デメリットの両方が浮き彫りなったが、地域の足が存続することは間違いない。

ちなみに、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、金沢駅周辺の賃貸マンションの賃料は直近3年間で2.47％上昇、敦賀駅は1.74％下落している。

今回の延伸によって金沢駅はさらなる価値向上、敦賀駅も現状に歯止めがかかるかもしれない。とりわけ敦賀駅に関しては、開業に伴う駅周辺の再開発にも期待が持てる。今後の動向が気になるところだ。