
横浜都心部では旧来からの都心部である関内エリア、その後に鉄道とともに栄えた横浜駅周辺エリア、そして再開発で生まれたみなとみらいエリアの3カ所で様々な開発計画が予定されている。
関内エリアでは横浜市役所移転を機に玉突き状態で様々な開発が予定されている。そのうちでも最も大きなものが2020年6月に北仲通南地区に移転した横浜市役所の旧庁舎の利用である。


旧市役所が立地するのは関内駅のちょうど正面で、現在は塀で囲われている状態。道を挟んで隣には横浜スタジアムがある。

周辺には2024年に誕生から150年を迎える伊勢佐木町商店街、すでに2017年に150周年を迎えた馬車道商店街があり、横浜開港以来の中心地である。
だが、残念ながら、このところはいずれの商店街にもチェーン店が多数出店、外国人経営のいささか怪しげな店などもあってかつての勢いはない。
また、関内自体も横浜駅周辺、みなとみらいからすると更新されていない古い建物が目立つようにもなっており、全体として地盤低下の懸念もある。そこに市役所の移転である。
地域の賑わいを心配する人も少なくなかったはずだが、横浜市では新たに空いた土地を利用、これまでとは異なる利用を考えられている。

2019年9月に公表された計画によると建設されるのは地上30階建て、高さ約160.7mのタワーで延べ床面積は117、017u。ニュースでは星野リゾートが行政棟3〜8階を保存活用したホテル(1〜2階は商業施設)が話題になったが、新築棟は非常に多数の用途のある複合ビルになる予定だ。


順に見て行くと15〜30階はオフィスとなり、ロビー等は10階に設けられる。グローバル企業のイノベーションセンターを中心とした業務機能を期待しているそうである。
その下にあたる11〜14階には大学が入る。横浜市のホームページによれば「総合大学を誘致し、企業、自治体等と連携したイノベーティブな教育・研究活動を展開します」とのことだが、どこになるのかは未定。
6〜7階はウェルネスセンターが予定されており、市民の健康増進、横浜市のスポーツ振興の推進に繋げる活動を行うという。
4〜5階は耳慣れないエデュテインメント施設なる用途になる予定。これは(株)DeNAが運営する、VR等のテクノロジーを使った楽しみながら学べるスポーツ体験施設とか。
同社は1〜3階のライブビューイングアリーナも運営する。これは国内最大ビジョンを持つアリーナで、スポーツを中心としたコンテンツや、周辺地区の音楽施設との連動で365日多様なエンターテインメントを配信し、横浜スタジアムでのイベントが無い日も含め、関内の集客力を強化するという。

1〜3階には新産業創造拠点、商業施設なども入る予定で「国際的な産学連携」「観光・集客」を実現するものになるという。個人的には地元横浜の有隣堂書店が横浜の発展史を伝承する文化交流拠点が作られるという点に関心を持っている。
実用的な部分では京急電鉄、東急、WILLER EXPRESが協働、交通ネットワーク拠点機能を設ける点も注目される。築街から高速バスの新規ルートを整備、羽田空港や箱根、鎌倉からの直行便を導入するほか、すでに運航している市内移動のためのオープントップバスの当該街区への乗り入れ、街歩きをサポートするグリーンスローモビリティ(電動で時速20Km未満で公道を走行可能)の導入を推進するとも。
今時点でもJR、横浜市営地下鉄の結節点として高い交通の利便性を有しているが、それを加速させようというのである。
今後の予定としては2020年12月に基本計画を協定、定期借地権設定契約、建物売買契約の締結を行った上、2021年1月から既存建物の改修、解体工事および新築工事がスタート、2024年度末には全体の開業(ホテルはその前に開業)となっている。
事業に当たるのは三井不動産を代表に、鹿島建設、京浜急行電鉄、第一生命保険、竹中工務店、ディー・エヌ・エー、東急、関内ホテルマネジメント(星野リゾートの全額出資子会社)。定期借地期間は運営期間70年に開業前の工事期間、事業終了後の工事時間を加えて合計78年が想定されている。
これだけでも大きな計画だが、2020年10月にはその隣地にもう1棟のタワー建設の予定が公表された。関内駅前港町地区第一種市街地再開発事業である。これについては追ってご紹介したい。
健美家編集部(協力:中川寛子)