「武蔵小杉」(神奈川県川崎市中原区)といえば、誰もがタワーマンション街を思い浮かべるはず。バブル崩壊後の1990年代後半、駅の周辺にあった工場が次々と移転したで行政が中心に再開発を進め、2000年に入ると雨後の筍のようにタワマンが竣工することに。
「ザ・コスギタワー」や「シティタワー武蔵小杉」、「グランツリー武蔵小杉」、「東急スクエア」など、いまでは多くのマンションが建ち、アッパー層を意識した商業施設が住民の生活を支えている。

いまも再開発の手綱は緩まず進化の途中といえる武蔵小杉だが、昨年6月には駅前に大規模複合施設の「Kosugi 3rd Avenue」が竣工。一部店舗などの先行オープンを経て、12月にはグランドオープンを迎えた。
住宅や商業施設や公共・公益施設
コミュニティラウンジなどが一体化した場所
武蔵小杉は渋谷と横浜のほぼ中間にあり、駅には東急の東横線と目黒線が乗り入れ、目黒線に関しては2008年に武蔵小杉駅から日吉駅まで延伸開業・複々線化した。隣接するJRは南武線のみだったが10年には横須賀線が開業、いまは2社6路線が乗り入れている。立地・交通の便の良さが再開発を後押しした格好だ。
Kosugi 3rd Avenueがあるのは、東急線の正面口・南口を出てすぐ西側、JR南武線の西口を出て目の前。三井不動産レジデンシャルや東急不動産が参加組合員として参画した「小杉3丁目東地区市街地再開発組合」によるプロジェクトで、もともとは旧中原図書館や小杉こども文化センター、みずほ銀行、川崎信用金庫などがあった土地をまとめて建てられた。

建物は低層部が商業・業務、公共公益施設で、有名な飲食店やフードマーケット、川崎市総合自治会館や川崎市こども文化センター、金融機関がテナントとして入居。フィットネスジムやデンタルクリニックなども。高層部は38階建ての分譲住宅「Kosugi 3rd Avenue the residence」だ。

商業施設部分の1階〜3階は外階段とテラスでつながり、開放的なつくり。東急側から向かうと、シンボルオブジェが設置された、緑に囲まれたサウスパークが広がる。
周辺には座って休憩したり災害時には地域の安全・安心のよりどころになるいこいの空間、開発の歴史が綴られた歴史承継サインが設置されている。


すぐそばにはかつての面影が
色濃く残る商店街が残っている
Kosugi 3rd Avenueは、商業だけではなく公共公益施設もあることから、地域住民が集まる場所になっていくだろう。武蔵小杉駅周辺の価値はますます高まっていくに違いない。
一方、東急線の西側には、以前からあった飲み屋街も残っている。再開発エリアとのコントラストが印象的だ。

タワマンや最先端の商業施設といったモダンな街並みと、工場地帯だったころからあったと思われるレトロな商店街が融合しているさまは、非常にユニークだ。周辺住民も、買い物や飲食する場所をその日の気分で使い分けているかもしれない。
最近は台風による浸水被害、朝の改札渋滞など、ネガティブなニュースでも取り上げられる武蔵小杉だが、街をしっかり観察すると最先端と下町情緒が融合した、魅力あるスポットだとわかる。
さまざまな施設が集まることで、武蔵小杉駅近隣だけではなく、新丸子や元住吉、武蔵中原、向河原といった周辺地域からも人が訪れだろう。周りも含めて、住む・集まるところとして、存在感は高まっていくに違いない。
健美家編集部(協力:大正谷成晴)