2022年夏に
16棟の建物が完成予定
製薬大手の中外製薬は、神奈川県横浜市の戸塚駅から徒歩約10分のエリアで、大規模な研究所を建設中だ。
拠点の敷地は柏尾川を挟んで2つに分かれており、敷地面積は合計で約17万uとなっている。
※引用:中外製薬
計画建物の棟数は合計で16棟となっており、大規模な拠点と言えるだろう。
棟数が多いのは、1つの大きい建物を建ててしまうと、周辺建物の日照に影響があると判断されたためだ。

※引用:中外製薬
なお、2つの敷地が川を挟んでいることから、連絡橋を設けることで行き来できるようにする予定。
また、敷地内には「将来用地」というエリアが設けられており、中外製薬はホームページで将来的に研究施設を建設する予定としている。
研究棟だけでなくグラウンドやクラブハウスなどがあり、グラウンドは周辺住民にも開放される。
※引用:中外製薬
中外製薬のIR資料によると、2012年以降同社は研究開発費を増額し続けており、将来的に新たな研究施設が建設されることは十分考えられるだろう。
中外製薬の得意分野はがん領域であり、日本にはがん患者が多いことも同社にとって追い風と言える。
建設工事は2019年7月から始まっており、2022年8月に完了する予定だ。
また、敷地が広いこともあり、付随する工事として計画地周辺道路の拡幅工事も行われた。
工事の内容は川の西側と東側とで異なるが、歩道と車道が広くなっている。
新たな研究所には
多くの研究者が集まってくる見通し
建設中の研究所は「中外ライフサイエンスパーク横浜」と名付けられており、完成後には治験の前段階となる創薬研究や開発研究などが行われる予定だ。
中外製薬はこれまで富士御殿場と鎌倉にもそれぞれ研究所を構えていたが、戸塚研究所の新設に伴って富士御殿場と鎌倉の研究所は閉鎖する。
なお、中外製薬が日本国内に設置している研究所は、2021年11月時点で3箇所しかない。富士御殿場と鎌倉の他に、東京都北区の浮間に研究所がある。
3箇所ある内の2箇所の機能を戸塚拠点に集約する方針としており、閉鎖する研究所にいた研究者たちが戸塚に集まってくる見通しだ。
属性が高い入居者の
賃貸ニーズを喚起するか
中外製薬の研究所新設には、周辺の賃貸ニーズに関しても大きな期待を持てると言えるだろう。
新設される拠点に集まってくるのは大手製薬会社の研究員などであり、属性が高いと予測されるからだ。
複数の転職サイトなどを見ると、中外製薬の平均年収は1,000万円前後であり、日系製薬会社の中で比較しても高くなっている。
収入が高くなると年齢によってはマンションなどの購入と比較検討される可能性もあるが、中外製薬は研究職の新卒採用もしているので、若手研究者の入居を狙った投資も有効になるだろう。
また、戸塚駅の周辺では2000年代に入ってから都市開発が進んでいる。
駅前も開発以前は雑多な印象が強かったが、2021年時点ではバス乗場が整備されたほか、「トツカーナモール」や「戸塚パルソ」というショッピングモールも建設された。

そのほか、JR戸塚駅には湘南新宿ラインが停車するため、渋谷や新宿など東京都心へのアクセスも良好だ。
あるいは、戸塚の南に位置する大船駅周辺なども狙い目だろう。
大船駅前には2021年7月にグランシップ大船という大型商業施設がオープンしたばかりであり、こちらも生活利便性が高くなっている。
中外製薬の研究所完成は2022年夏であり、研究者たちが集まってくるまでにはさらに時間がかかる可能性もあるが、今のうちに周辺エリアの情報収集を進めるのも有効だ。
取材・文:
(はたそうへい)