
神奈川県横浜市南区の横浜市旧南区総合庁舎跡地で、JR西日本不動産開発が進めている再開発プロジェクト。2020年に着工し、複合商業施設の「(仮称)ビエラ蒔田」が2022年9月末に竣工予定となっている。
関西ではお馴染みの商業施設が
関東エリアの2号店としてオープン
ビエラとはJR西日本不動産開発が展開している商業施設で、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県などの関西を中心に20店舗以上を運営。JR西日本の関連会社だけあって、エキナカや高架下などに展開している。
比較的コンパクトな規模の店舗が多く、首都圏在住者にとってはアトレを小型化した商業施設をイメージしてもらえれば分かりやすいかもしれない。


そのビエラが2019年に関東へ初進出し、東京都墨田区に「ビエラ江東橋」をオープンさせた。ただし、こちらは都営地下鉄新宿線・東京メトロ半蔵門線の住吉駅から徒歩8分という立地。
多くの人が集まる駅チカではなく、地域に密着した住宅街という点が興味深い。そして、関西のビエラより延べ床面積が圧倒的に広いのが特徴だ。


「(仮称)ビエラ蒔田」の出店地も、関東におけるこの法則に倣ったものだ。横浜駅から横浜市営地下鉄ブルーラインで11分の蒔田駅周辺は閑静な住宅街が広がる。計画地はこの駅から北へ徒歩5分の、もともと南区の区役所があったところだから、地域の人達にとっても申し分のない立地といえる。


建物は地上4階、地下2階、延べ床面積約16,540u。メインのテナントにはスーパーマーケットのライフと、スポーツクラブやデイサービスで知られるルネサンスが決定している。ほかには物販店、飲食店、医療施設、子育て支援施設、地域交流施設などが入る予定で、延床面積は江東橋(8955.36m2)の約1.8倍というから大いに期待できる。
複合商業施設の登場で
暮らしやすい街がさらに便利に
横浜市民でも蒔田と聞いてピンと来る人は少ないと思うが、弘明寺の隣といえば、何となく場所がイメージできるのではないだろうか。蒔田は横浜に近いだけでなく、関内、桜木町、新横浜にも地下鉄1本で行ける便利な街。
京浜急行の井土ヶ谷駅までは徒歩15分程度ゆえ、住む場所によっては2駅利用することもできる。さらに1Rや1Kの家賃相場が6万円を切るぐらいなので、横浜市の中でも穴場のエリアなのである。

しかし、買い物については個人商店が多く、決して便利だとはいえない面があった。井土ヶ谷駅の近くまで行けばサミットがあり、逆方向の東へ行けばいなげやがあるのだが、蒔田駅の近くにはまいばすけっとくらいしかない。その点において、今回の再開発プロジェクトは、暮らしにおける利便性を各段に向上させる画期的な出来事といっていいだろう。
幕末の歴史に触れられるなど
実は史跡などの見どころが点在
蒔田という街はメジャーではないものの、何もない住宅街なのかというとそんなことはない。
1984年に横浜英和学院(現在の青山学院横浜英和)でグラウンドを整備した際、戦国時代のものと思われる火鉢のかけらが出土。武蔵世田谷(現在の世田谷区)一帯を支配していた戦国武将の吉良氏がこの地に移り住み、築いたと推測されている蒔田城の存在を知らしめた。

計画地から近くの場所では、幕末の1863年に井土ヶ谷事件が起こっている。これは歴史の授業で習うことの多い生麦事件と同じような背景を持つ外国人襲撃事件のこと。生麦事件の翌年に、横浜居留地の警備をしていたフランス陸軍のカミュ大尉と士官2名が乗馬で保土ヶ谷宿に向かう途中、浪士達に襲撃されカミュ大尉が死亡したという事件である。



そして、蒔田駅から徒歩7分ほどの場所にある蒔田公園は、昔は野球場だったという変わった歴史を持つ。1958年に誕生し1998年まで、横浜野球連盟の公式戦や少年野球の区大会などに利用されていた本格的な球場だった。現在でも地図を見れば野球場の形をしているのが分かる。



注目されることが決して多くはない蒔田だが、だからこそ住みやすいともいえる。関内まではわずか4駅6分で歩いても40分弱。「(仮称)ビエラ蒔田」ができることで住宅地としての価値は予想以上に上がるに違いない。
健美家編集部