2030年頃の
施設供用を目指す
神奈川県の横浜市は、元町・中華街の近くにある山下ふ頭について再開発を進めることを決定し、2021年12月から市民の意見及び事業提案の募集を開始した。
横浜市が求める提案内容としては、開発のコンセプトやイメージ図に加えて、横浜ベイブリッジ内側の将来像などが挙がっている。
横浜市としては、横浜のウォーターフロントを、再開発によって観光地及び交流の場所として世界からの注目を集めるエリアにしたい考えだ。
今後のスケジュールとしては2022年6月30日までを提案書類の提出期限とし、同年の下期から事業計画案の内容検討をスタート、2026年頃の事業化及び2030年頃の施設供用を目指す。
山下ふ頭の敷地面積は約47ヘクタールで、市としてはふ頭全体の開発を構想しているため、実現すれば大規模な再開発となる。
※引用:横浜市
2021年時点の山下ふ頭には運送会社の倉庫などが建っている。しかし、山下ふ頭の大部分は市の所有地であり、民間の所有地は0.5ヘクタールと割合的に大きくない。
土地の確保などにはそれほど時間はかからないだろう。構想通りに再開発が進めば、山下ふ頭は大きく変化すると予測される。
山下公園は横浜の観光名所なので、商業施設やエンターテインメントに関連する施設が建設されれば、相乗効果も期待できる。周辺の石川町や山手といったあたりにも好影響がありそうだ。
なお、石川町や山手には横浜インターナショナルスクールがあるほか、横浜雙葉・フェリス女学院・聖光学院など名門私立学校が多い。
教育水準が高いエリアには高属性の人が集まる点には要注目だ。山下ふ頭の周辺はファミリー向けの投資を検討できるエリアと言える。
石川町は神奈川県の中でも高級住宅街の部類に入るため、物件の資産性も考慮して物件を選びたい場合には特に有効だ。
新市長の就任によって
カジノ構想は撤回
横浜市は2015年に「横浜市都心臨海部再生マスタープラン」という計画を策定しており、当初はカジノを含む統合型リゾート施設の建設を検討していた。
事業者の公募も行われており、シンガポールやマカオのカジノ運営会社が応募していた経緯がある。
しかし、2021年に選挙で当選した山中市長が所信表明演説にてカジノ誘致を撤回すると表明。10月には市役所内に設置されていた統合型リゾートの推進部署も廃止した。
さらには、カジノを日本国内に誘致するべく、支援に関連する法整備などを進めていた菅首相も退陣したことで、横浜のカジノ構想は白紙になったと言える。
もともと、横浜のカジノ構想は、港湾事業者によって組織される横浜港運協会から反対されるなど、地元からの理解を完全に得られていたわけではなかった。
カジノ抜きの再開発を目指すのであれば、従来よりもスムーズに事が進む可能性は高い。
山中市長の任期は2025年までだが、2026年頃までの事業化を目指すというスケジュールであれば、行政が今後またカジノ誘致に舵を切る可能性は低いと見て良いだろう。
なお、横浜港運協会のグループ団体である横浜港ハーバーリゾート協会は、山中市長の就任前からカジノを含まない再開発案を提示しており、これが検討のテーブルに乗る可能性もある。
その一方で、山下ふ頭はネームバリューが大きく首都圏でも知名度の高いエリアなので、大手のデベロッパーが開発に参入することも考えられる。
いずれにしても、再開発によって山下ふ頭がどのようなエリアとなるのか、今後の展開に期待したい。
取材・文:
(はたそうへい)取材・文:
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