※引用:東京都
2022年3月12日から
交通開放予定
2021年12月に東京都は、羽田空港と川崎市殿町(とのまち)をつなぐ新しい橋「多摩川スカイブリッジ」が完成したと発表した。
2022年3月12日に開通記念式典が行われ、15時から橋は交通解放される。
多摩川スカイブリッジの特徴的なポイントは、高速道路の橋ではなく、いわゆる下道の橋であることだ。
橋上には2車線の道路に加えて歩道と自転車用の道が設けられており、首都高速道路に乗らなくても橋を通行できる。
大師橋という橋がすでに西側で開通しており、こちらも下道となる国道6号線の橋だが羽田空港に直接通じているわけではない。
川崎から大師橋を通って空港へ行こうとすると車で20分前後かかる上に、空港方面へアクセスできる唯一の下道ということで、大師橋は渋滞することも多い。
それに対して、多摩川スカイブリッジを通れば、川崎方面から羽田空港の第3ターミナルへダイレクトにアクセスできる。橋の長さは約675mで通行時間は約1分だ。

※引用:東京都
羽田空港の第3ターミナルは主に国際線が離発着しているターミナルであり、多摩川スカイブリッジの開通は、海外と川崎方面とのアクセスを向上させる効果もある。
コロナ禍では利用者も減っているものの、羽田空港は国際空港として24時間体制を取っており、京浜工業地帯の中心地と空の玄関口とが直接つながることには大きな意味があるだろう。
川崎のキングスカイフロントには
大手企業や大学の研究施設も
多摩川スカイブリッジが開通する川崎市殿町には「キングスカイフロント」というエリアがあり、こちらは健康・医療・福祉・環境分野の国家戦略特区・国際戦略総合特区となっている。

特区に指定されているため、キングスカイフロントに拠点を構える企業や研究機関は、規制緩和や財政支援等の優遇制度を活用可能だ。
実際に、同エリアには富士フィルム富山化学やジョンソン・エンド・ジョンソンなど大手企業に加えて、慶応大学先端研究教育連携スクエア・東京工業大学の中分子IT創薬研究推進体など、大学の研究施設などが入っている。
川崎市の沿岸部というと、工場街や倉庫街といった印象を持つ人も多いのではないだろうか。
実際に浮島町や千鳥町など埋立地をはじめとしたエリアには、多くの工場や倉庫が建っている。
しかし、キングスカイフロントは、従来の東川崎が持つイメージとは異なるエリアと言えるだろう。
多摩川スカイブリッジの開通によって、キングスカイフロント及び周辺部への企業進出などが加速すれば、東川崎でも高属性の入居者を狙った投資が現実味を帯びてくる。
京急大師線の地下化は
足踏み状態
一方で、東川崎には少し残念なニュースもある。川崎駅から東に伸びる京急大師線の地下鉄化に関するものだ。
品川・川崎エリアで都市開発が加速するにつれて、これまで沿岸部工業地帯への足として利用されていた京急大師線でも、沿線のマンション開発などが進んでいる。
川崎市は、地域住民や交通量の増加などを受けて、京急大師線を全線地下鉄化するべく、連続立体交差事業を1994年に事業認可した。

※引用:川崎市
連続立体交差事業の狙いは踏切の除却による交通渋滞の解消・交通利便性の向上だ。
1番最初に着工した東門前から小島新田までの区間は既に工事が完了しており、2019年3月から地下運行が始まっている。
しかし、費用対効果の再検討や社会情勢の変化などを受けて、京急川崎から川崎大師前の区間については、2017年に事業中止が決定された。
なお、川崎大師から東門前までは事業継続とされており、2020年度中の着工を予定していたが、コロナ禍による財政難を受けて着工は見送られている。
多摩川スカイブリッジの開通に続き、こちらもコロナの早期収束と工事の着工を期待したい。
取材・文:
(はたそうへい)