多摩田園都市エリアで「田園」と
「都市」が融合したまちづくりを開始
東急グループといえば、日本を代表する企業の一つ。とりわけ、東京の城南地区(港区、品川区、目黒区、大田区)や神奈川県の川崎市・横浜市に在住・勤務する人にとっては東急電鉄の各路線は身近な存在で、日常の足といったところだ。
現在は多岐にわたる事業を展開する同グループだが、もともとは住宅地開発・鉄道整備を行う田園都市株式会社が源流。1918年の創立以来、時代とともに地域に根差したまちづくりを続けているのが大きな特徴だ。2012年には横浜市と「次世代郊外まちづくり」、15年には川崎市と「東急沿線まちづくり」に関する協定も締結している。
そうしたなか、同グループでは過去の区画整理をした多摩田園都市エリア(田園都市線梶が谷駅~中央林間駅)で、生活者起点で取り組むまちづくりの「nexus(ネクサス)構想」を始動させている。
同構想は、多摩田園都市エリアで郊外における生活者起点での自由で豊かな暮らしを実現するため、住む・学ぶ・働く・遊ぶといった生活が自然や農と融合した「歩きたくなるまち(Walkable Neighborhood)」を目指すという。
その第1弾として今年4月に開業する予定なのが、行政や企業とともにさまざまな実証実験に取り組む「nexusチャレンジパーク早野」だ。
「nexusチャレンジパーク早野」は田園都市線のあざみ野駅から、すすき野団地行バスに乗り「虹ヶ丘小学校」で下車して徒歩3分。あざみ野駅から徒歩だと1時間ほどの距離。川崎市、横浜市の市境近辺にある虹ヶ丘団地、すすき野団地エリアに広がる。人が集まりみんなで試せるオープンなエリア「nexus Lab Area」、隣接した団地から離れた場所で遊びながら防災を学ぶ「Fire Place Area」、バディの一つであるプランティオ株式会社が手掛けるシェアリング型のコミュニティIoT農園が広がる「Niji Farm Area」を8000㎡の敷地内に構成する。住民に加え地域の農家や学校、バディが集まりつながり、魅力的なまちの仕掛けづくりに挑戦するという。
さらに今後は、「nexusチャレンジパーク早野」だけではなく、多摩田園都市エリア内の複数地域においても、特徴を生かし「農と食」「資源循環」「エネルギー」「駅遠エリアのMaaS」といったテーマを定め、実証実験や事業化を進めていく方針だ。東急グループは今年9月に創立100周年を迎えるが、同構想を多摩田園都市エリアにおける次の100年に向けたパイロットプロジェクトとして位置づけ、社会的価値を創出する「東急ならではまちづくり」を進めるという。
多摩田園都市エリアを抜ける東急電鉄の田園都市線といえば、渋谷駅から中央林間駅を結ぶ路線。通勤・通学を支える、東横線と並ぶ東急電鉄の基幹路線だ。渋谷駅を出て溝の口駅を抜けると沿線にはニュータウンの住宅地が広がり、ファミリー層を中心に人気のエリアといえるだろう。一方、少子高齢化が進展するなか、郊外はこのままだと衰退する恐れがある。こういった状況に対して、「nexus構想」は今までにないまちづくりで解決する構えだ。今後、構想が進んでいくと、エリア全体の付加価値はより高まるかもしれない。同様の課題を抱える私鉄各社の参考にもなるだろう。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))