多摩都市モノレールの延伸は長年の悲願
まちを成長させる起爆剤になる?
東京都の多摩地区北部に位置する、武蔵村山市。東は東大和市、西は西多摩郡瑞穂町、南は立川市、北は狭山丘陵を挟み埼玉県所沢市に隣接している。
直近の人口は約7.1万人で10年前に比べるとおよそ1000人減っている。高齢化率も年を追うごとに上昇し、今年1月時点で26.71%。ただし、国全体(29.1%)に比べるとその割合は低い。
米菓子の「歌舞伎揚」で知られる天乃屋や半導体精密ロボット大手・新川の本社・製造拠点、大手コンビニの弁当・おにぎりを製造するわらべや日洋の製造工場など大手企業が拠点を構え、アスレチック施設や寺社仏閣など、観光スポットは少なくない。都心に通勤・通学する人も多く、ベッドタウンとしても機能している。
武蔵村山市が他のまちと大きく異なるのは、鉄道と国道が通ってないことだ。「おや?」と思うかもしれないが、JR東日本や西武鉄道が乗り入れているのは志村けんの故郷としても知られる「東村山市」。武蔵村山市は東京都内にある49の市区で唯一、鉄道がないまちなのだ。
よって、市内の公共交通は民間の路線バスと市によるシャトルバスになり、鉄道の最寄り駅は西武拝島線の玉川上水駅(東大和市)や武蔵砂川駅・西武立川駅(立川市)、多摩都市モノレール線の桜街道駅・上北台駅となる。
朝夕はどうしても渋滞に巻き込まれるので、通勤・通学時間が長くなるのは難点だ。こういった環境も、人口減に関係しているのかもしれない。
一方、明るいニュースもある。それが、多摩都市モノレールの延伸事業で、現在の北側の終点となる上北台駅と瑞穂町の箱根ヶ崎駅の約7.2キロが結ばれると、武蔵村山市に複数の駅が設置される見通し。
地域住民としても市内にモノレールの駅があると玉川上水駅や立川駅に抜けやすく、反対方向の箱根ヶ崎駅はJR東日本八高線が乗り入れているので、八王子・高崎方面に出やすくなる。移動の利便性は格段に増すわけだ。
事業計画の進捗だが、2016年の交通政策審議会において「具体的な調整進めるべき」との答申を受け、取り組みは本格化。20年に東京都は延伸部の事業化を決め、導入区間の道路はほぼ完成している。
こういった動きに対して、武蔵村山市もすでにアクションを起こし始めていて、今年1月には新青梅街道の沿道で、これまでよりも大きなビル・店舗が建てられるようにする「新青梅街道沿道第二地区地区計画」を決定した。宅地開発を促進すべく土地区画整理事業も進めていて、モノレールの延伸効果による将来の人口増を見込んでいるようだ。
このように、着々と進む上北台駅~箱根ヶ崎駅間の延伸計画。現状で開業時期は明らかになっていないが、今後10年くらいで実現するという声もある。その間に町の開発も行われ、武蔵村山市の姿は大きく変わるかもしれない。
ただし、懸念点がないわけではない。多摩都市モノレールの1日平均乗降人数は、1998年に開業当初は約3.8万人だったのが、2019年度には約28万人にまで増加。赤字だった営業利益も黒字になった。
ところが、コロナ禍になった20年度は約17万人に激減していて、13年ぶりに当期赤字を計上している。こういった点が計画に水を差さないか心配だ。
しかしながら、モノレールの延伸は市だけではなく地域住民にとっても長年の悲願であることに間違いない。さらなる具体化が急がれる。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))