
千葉県松戸市は江戸川を挟んで東京に接し、都心へのアクセスが良いことから、早くからベッドタウンとして開発された。子育て支援も充実し、近年は、子育てしやすい街として人気である。
確かに、松戸駅東口周辺を歩くと、コンパクトに都市機能が集積しており、利便性が高く成熟している印象を受ける。しかし、商業ビルや雑居ビルはやや老朽化している印象もある。
松戸駅の東側では、都市機能の更新時期を迎えていることから、遊休地を生かした大規模な再開発が進行中だ。他にも、市内常磐線沿線の駅周辺では複数の再開発が進んでおり、注目したい。
首都圏ベッドタウンの中では子育て支援が充実する松戸市
コロナ禍で人口増加も
千葉県松戸市は、都心から20キロ圏内に位置し、江戸川を挟んで東京都葛飾区、江戸川区に接する。JR常磐線を含め、6路線の鉄道が走る。常磐線松戸駅から東京駅までは25分、乗り入れている東京メトロ千代田線で大手町駅までは30分弱だ。
昼間人口40万人弱に対し、夜間人口は48万人超であり、昼夜間人口比率が80%前後で推移する典型的な首都圏のベッドタウンといえる。待機児童6年連続ゼロを達成しており、保育所の増設や定員拡充、独自の保育ガイドラインを整備するなど、保育環境が充実している。近年、人口は漸増を続けており、コロナ禍の令和2年には1%以上増加した。
世帯構成は、ファミリー世帯が8割を占める。夫婦と子供の世帯が全世帯の45%と圧倒的に多い。次に多いのがDINKS世帯の18%であり、母子家庭も8%と少なくない。
JR松戸駅の家賃相場は、1R〜1DKで7万円程度、2DK〜2LDKは9〜11万円程度である(LIFULL HOME‘S 松戸駅家賃相場)。ファミリー物件が手頃であるのが特徴といえるだろう。
松戸駅周辺まちづくり基本構想をベースに
新拠点ゾーン整備に取り組む

松戸市では、都市機能の更新時期を迎え、より良い市街地環境の再構築が必要となって来たとして、平成27年に「松戸駅周辺まちづくり基本構想」を策定した。
基本構想では、松戸駅周辺を文化の香る賑わいあふれる広場とすべく、遊休地となっている法務省総合庁舎・国家公務員宿舎跡地や松戸中央公園の所在する相模台地区を「新拠点ゾーン」と位置づけた。

平成30年に策定した「新拠点ゾーン整備基本構想」の中では、新拠点ゾーンには、松戸のコアとなることを目標に、文化施設の再編・移転をおこない、公共施設・商業施設や公園が一体となった拠点づくりをおこなうとしている。また、江戸川から新拠点ゾーンへと続くシンボル軸の形成に配慮するとした。

令和3年2月には、新拠点ゾーン整備基本計画が策定された。計画によると、北側、中央、南側の3つの場に、それぞれ、商業・業務・文化機能、公園、市役所機能を再編して整備する。令和6年度までに市役所機能の再編と移転を終え、その次に公園を整備、そして、令和10年度までに商業・業務・文化機能を整備する計画だ。概算事業費は約300億円と見積もられている。
令和4年6月には、第一段階となる「松戸市相模台地区土地区画整理事業」が開始された。
市内常磐線の新松戸駅、北小金駅でも
土地区画整理、再開発が進む
市内のJR常磐線では、新松戸駅、北小金駅でも土地区画整理などの再開発が進められている。

新松戸駅は、JR武蔵野線との乗り換え駅となっているが、特に東側地区では、狭隘道路の解消や駅前広場の整備、斜面緑地の安全対策などが問題となっていた。
現状は、駅前に畑と駐輪場が広がるが、その合間を縫うように走る道路は、自転車がようやくすれ違うことができるぐらいの幅員で、駅前とは思えない狭隘道路だ。
市は、土地の再配置と土地から区分マンション持分への立体換地の2種類の手法を併用して土地区画整理事業を進めるとしている。立体換地によって建築される建物には、図書館などの公共施設、住宅のほか、商業施設が入る予定だ。地上14階、35,000平米の複合ビルが想定されている。令和4年7月現在、業者の選定がおこなわれている。
また、北小金駅では、南口において、国土交通省の「社会資本整備総合交付金」を活用した都市基盤施設の整備が進められている。令和2年に再開発準備組合が設立され、敷地北側に20階建て220戸、南側に14階建て80戸のタワーマンションの建設が計画されている。
松戸駅のみならず、新松戸駅、北小金駅周辺の再開発にも注目していきたい。
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取材・文:
(さとうえいいちろう)