
主に横浜市の内陸部を走る相鉄本線で、一部路線の地下化事業が進められている。
相鉄本線は、近年JR直通線を開業させ、既に東急直通線の開業も決定しており、都心や新幹線への交通アクセス向上が見込まれる路線だ。
今回地下化される鶴ヶ峰駅の北口では、地下化に伴い再開発を含めた新たなまちづくりの動きもあり、注目したい。
横浜市が鶴ヶ峰駅付近で進める相鉄本線地下化事業
相鉄本線は、横浜駅−海老名駅を結ぶ私鉄で、横浜市中心部から横浜市内陸部、神奈川県県央地域を走る鉄道路線である。
その相鉄本線では、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の主導により、JR直通線と東急直通線の整備が進められて来た。横浜市内陸部の西谷駅から分岐し、羽沢横浜国大駅まで新路線を建設し、令和元年11月にJR直通線が開業した。
東急直通線についても、羽沢横浜国大駅から日吉駅まで新路線を建設し、令和5年3月の開業を目指している。東急直通線では、新幹線駅である新横浜駅を通ることが予定されており、横浜市西部・神奈川県県央部からの新横浜駅や都心部へのアクセス向上が期待されている。

横浜市では、相鉄本線のJRおよび東急への乗り入れに合わせ、経済の活性化や地域の利便性向上などを目的として、平成30年から、西谷駅−二俣川駅間の約2.8キロにつき、地下化による連続立体交差事業を進めてきた。
令和4年1月に事業の都市計画が決定され、同年下半期から着工される。令和16年3月の開業を目指している。

この相鉄本線地下化によって最も恩恵を受けるのが、地下化される部分に位置する鶴ヶ峰駅だ。鶴ヶ峰駅本体も地下化されることになる。鉄道によって分断されていた駅周辺の街並みが一体化し、活性化につながることが期待される。
鶴ヶ峰駅北口周辺地区では、再開発を含めた新たなまちづくりの動き
横浜市では、相鉄本線の地下化に合わせ、平成31年3月に、「鶴ヶ峰駅北口周辺地区まちづくり構想」を策定した。
それによると、「文化や水・緑を感じる豊かな環境に、人が集い、快適に暮らし続けられるまち」を目標に、鶴ヶ峰駅北口周辺を3つのゾーンに分け、まちづくりを進める。

注目されるのは、駅前拠点ゾーンの方針である。現在、鶴ヶ峰駅北口駅前は、狭隘な区画の中に個人商店や小規模な雑居ビルなどがひしめいている状況だ。
商店街は賑わいを維持しているものの、複合的な商業施設はなく生活利便性が高いとはいえない。相鉄本線の踏切が狭い間隔で並んでおり、幹線道路の車の流れのみならず、南口への人の流れも滞留している印象がある。
南口には、平成19年に再開発によって誕生した「ココロット鶴ヶ峰」があり、街のシンボルともなっているだけに対照的である。「ココロット鶴ヶ峰」は、29階建てのレジデンス及び、商業施設、公共施設を兼ねたタワーマンションである。

「鶴ヶ峰駅北口周辺地区まちづくり構想」では、未活用のままになっている駅前の市営住宅跡地などを活用し、商業・業務施設、公共・公益施設、都市型住宅等の導入・整備を含めた、土地の高度利用を図るとしている。地下化に伴って遊休地となる旧鉄道敷地の利活用も検討するとしている。
具体的には、平成26年に設立された鶴ヶ峰駅北口地区再開発協議会が中心となり、構想に基づいて、土地区画整理などを含めた具体的な土地利用計画、公共施設や街区の計画を検討している。
鶴ヶ峰は、近隣に帷子川親水緑道があるなど、自然環境と住環境のバランスが良く、南口には既に利便性の高いタワーマンションもある。横浜市旭区役所の最寄り駅でもあり、行政の中心地区の一つでもある。
今般の相鉄線の直通2線開通で、鉄道アクセスが飛躍的に向上するだろう。なおかつ、相鉄線の地下化と北口再開発によって街の利便性も高まることから、今後注目したい街の一つといえるだろう。
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取材・文:
(さとうえいいちろう)