
今年3月に方向性を取りまとめ
来年度に内容を決定へ
神奈川県の北部に位置する相模原市では、JR相模原駅の北口エリアについて、土地利用計画の策定を進めている。
首都圏の私鉄である小田急線にも「小田急相模原」という駅があるが、JRと小田急の駅は離れた場所にあり、土地利用計画の対象となっているのはJR横浜線の相模原駅北口エリアだ。

※引用:相模原市
駅北口の眼前に米軍の総合補給廠(そうごうほきゅうしょう)という基地があり、基地敷地の一部が返還されたため、返還地の利用計画策定が進んでいる。
2020年5月に「相模原駅北口地区まちづくりコンセプト」を策定し、12月に「相模原駅北口地区まちづくり推進会議」を設置、2023年の現在に至るまで協議が続いているというものだ。
土地利用計画の策定に当たって実施された市民アンケートの結果や、相模原駅周辺の状況などについては、過去に公開したこちらのニュース記事でも紹介している。
神奈川県・JR相模原駅周辺で大規模な土地利用計画策定が進行中。小田急の新駅も建設される?
上記の記事は2022年8月時点の情報をまとめたものだ。一方で、2022年12月に相模原市は土地利用計画の方向性中間まとめと意見募集等に関する資料を発表した。
資料にはこれまでの経緯と今後の予定が記載されており、方向性の取りまとめ予定は今年の3月、計画の策定予定は来年度になるという。
後々変更等が加えられる可能性はあるが、来年度には土地利用計画の内容が固まると考えて良いだろう。
全部で7つの
施設配置案を発表
相模原市が発表した中間とりまとめ資料には、対象地の施設配置案について7つの案が記載されており、それぞれの案について二酸化炭素排出量と交通負荷に関する評価も記載されている。
7つの案は大きく3つの種類に分類される。
- 住宅を多めに配置する「ライフ重視ケース」
- 業務施設を多めに配置する「イノベーション重視ケース」
- 商業施設やスタジアムを配置する「交流重視ケース」
ライフ重視ケースは大量の戸建住宅を配置する内容になっており、賑わい創出の観点で見るとイノベーション重視ケースまたは交流重視ケースの方がポテンシャルは高い。

※引用:相模原市
業務施設(=オフィスビル)や商業施設ができれば周辺で家を借りる人も増えるため、不動産投資の観点で見てもイノベーション重視ケースまたは交流重視ケースの方が期待値は大きいと言えるだろう。
業務施設と商業施設のバランスが取れているのは、「ケース3」とされている「職住近接高層高密度・イノベーション重視ケース」だ。

※引用:相模原市
ケース3は住宅をタワーマンションとして配置、さらに大規模なビルと商業施設を建設する内容になっている。
ポジティブな評価がついているのは、交流人口の増加と賑わいの創出に寄与する点だ。
一方で、既存の周辺商業地に対する配慮を要するほか、単なるオフィスビルを建てるのでは隣の駅である橋本駅周辺と差別化ができず、オフィスの供給過剰になる可能性が指摘されている。
交流重視ケースで想定されているのは、スポーツイベントやコンサートイベントなどに利用できるスタジアムの建設だ。

※引用:相模原市
ケース7は居住機能・業務機能・交流機能を全部詰め込んだような施設配置となっている。
交流人口は最も多く、賑わい創出の課題解決にもつながるが、自動車・鉄道の交通負荷が大きいほか、スタジアム運営に関する採算性が課題だ。
完全にバランスの取れた施設配置はなかなか難しそうだが、どのケースも相模原駅の北口エリアが大きく変わる可能性を感じさせる。どのケースが採用されるのか、続報に期待したい。
取材・文:
(はたそうへい)