群馬県第2位の都市で相次ぐ再開発計画
まちの生まれ変わりを促進するか?
群馬県中南部に位置する県庁所在地の前橋市。中核市に指定され、約33万人と県内では高崎市に次ぐ人口規模を誇るまちだ。市街地には住宅街やオフィスビルが立ち並ぶ一方で自然豊かな中山間部も広がり、都会暮らしと程よい田舎暮らしのどちらも楽しめるのが特徴だ。

ジンズやベイシアといった大手企業の本社や製造業の工場も多数あり、市内には合計17か所の工業団地が造成されている。豚の産出など畜産業も盛んだ。鉄道はJR東日本(上越線・吾妻線・両毛線)や上毛電気鉄道が乗入れているが、自動車保有率が高い車社会であることから公共交通機関の利用者は減少傾向にあり、バスは不採算路線の廃止や事業撤退も目立つ。
まちの中心地は県庁や市役所、JR前橋駅、上毛電鉄の前橋中央駅を含む一帯。以前は両駅から少し離れた千代田町に位置する中心商店街が商業の中心だったが、1990年代に入るとJR前橋駅前に大型店舗が出店し、郊外の専門店街も発展することに。商店街の最盛期は長崎屋や丸井、ニチイなどの大型店舗があったが、現在残っているのはスズラン百貨店のみとなる。
隣接する高崎市の成長に注目されがちで、シャッター商店街が広がるなどともするとネガティブな情報にさらされがちな前橋市だが、近年は再開発の波が訪れている。
前提として、2015年に同市は中心市街地の都市機能の誘導・更新と施設整備を図るための方針・計画内容を示すために「前橋市市街地総合再生計画」を策定(2019年7月に改訂、2022年2月に更新)。2019年3月には「立地適正化計画」を策定し、中心市街地を含む本町地域を中心拠点に位置付け、新前橋駅周辺地区や前橋南部地区、大胡地区といった地域拠点、その他複数の地区を生活拠点として定め、コンパクトで機能的な利便性の高いまちづくりを目指している。

出所:「前橋市市街地総合再生計画概要版」
なかでも、都心となる中心市街地には県庁や市役所を中心とした行政サービスの集積地、商店街を中心とした商業地、金融機関やさまざまな業種が集積した業務地として、利便性の高さと多様なサービスが享受できる地域として、多くの市民が住み、多くの活動のより市の発展に寄与してきた。
ところが、先述したように大型店舗の撤退、商業を中心とした各種サービスの郊外化が進み、定住人口の減少や高齢化が顕著になっている。こうした状況を踏まえ、市のさらなる発展のために、中心市街地の活性化を図り、持続可能なまちづくりに向け、都市機能の集約と拠点性の向上を図るのが「前橋市市街地総合再生計画」の狙いだ。

出所:「前橋市市街地総合再生計画概要版」
計画にのっとり、中心市街地では都市機能の更新や都市空間の創出、公共施設の再編、にぎわいの拠点づくり、道路の整備などを進めている。
具体的なものとして、JR前橋駅北口では共同住宅、店舗、子育て支援施設からなる地上27階・地下1階の複合施設を建築中。駅に隣接した立地を生かし、幅広い世代に対応する住宅を供給し、駅前周辺の利便性を高めるために店舗、敷地内には広場空間も設けてにぎわいの拠点として整備を進めている。
2023年5月には千代田町に、複数のギャラリーとレストラン、住居が一体になった複合施設「まえばしガレリア」がオープンした。
また、市などでつくる千代田町中心拠点地区市街地再開発準備組合は、今年3月に開催した総会において、基本構想を確定。オフィスや商業施設、住居、教育文化施設(市立図書館)などで構成する西街区は2027年度の開業を目指し計画を進めていたが、スズラン本館や新館がある東街区には学校を誘致する教育文化施設、14階建ての複合マンションなどを整備し、2031年度の開業を予定することが明らかとなった。

出所:前橋市ホームページ
いまや、人口減少・超高齢化社会を背景としたコンパクトシティの形成は、地方都市に共通する課題のひとつ。前橋市は再開発を通じて公共交通が近い場所に都市機能を集積し、安全でにぎやかな地域を作りたい考えだ。時代に即したまちづくりと言えるだろう。
ちなみに首都圏と前橋市は、在来線と高崎駅に乗り入れる新幹線を使うと1時間少しの距離。首都圏とのアクセスは悪くない。都市機能と自然が調和していることから根強い人気もあり、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、同市の賃貸マンション相場は直近3年間で5.57%上昇している。今後の再開発でさらなる賃貸ニーズが生まれると、さらなる成長が期待できるかもしれない。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))