西武池袋線の急行、快速利用で10数分。認知度はあまり高くないだろうが、ひばりヶ丘駅(西東京市)は沿線のうちでも駅前にパルコのある珍しい駅である。
西武沿線でパルコがあるのは池袋と新所沢だけ。他にパルコのあるまちといえば札幌、仙台、宇都宮、松本、名古屋などある程度以上の規模があるまち。
それに比するとひばりが丘はかなり小さなまちで、そこにパルコがあるのはいささか不思議だが、なぜか、あるのである。
そのひばりが丘駅で北口の整備が進んでいる。パルコ、西友、タワーマンションのある南口に比べると北口は路地に小規模な店舗、飲食店が密集し、長らく低利用、未利用の土地が多かったエリア。
そのため、バスが乗り入れられず、バスを利用するためには駅からしばらく歩かねばならなかったほど。長年懸案とされてきたが、少し行くと埼玉県新座市に入ってしまうため、その調整、そして数多くの地権者との交渉などがあったのだろう、なかなか整備が進んでこなかった。
ところが、2010年に「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」に基づく街並み再生地区として「ひばりヶ丘駅北口地区」が指定され、以降、ようやく開発がスタート。
ようやく、駅までの道路や駅前広場などの全貌が見えてくるまでになった。完成予定は2018年度中という。
駅周辺は4つのブロックに分けられ、容積緩和などの措置を受け、一部ではマンションや駅前のビル建設なども始まっているが、こちらはまだまだ。
駐輪場などに暫定的に使われている土地や低層の建物も多く残されており、これからしばらくの間、このエリアでは利活用が模索されることになろう。
また、変わるのは北口だけではない。2017年3月に駅ビルエミオひばりヶ丘が閉店したが、この跡地には新たに地上2階建ての建物が新築される予定。
現時点では駅舎とされているが、商業施設その他が入るとすると、それがまちの賑わいに寄与することは間違いない。南口側ではバリアフリー化も進められている。
もうひとつ、このまちのポテンシャルを考える上でポイントになるのはひばりが丘団地の再生と敷地内に新たに建設された分譲マンションによって若い世代が増えているという点だ。
ひばりヶ丘団地は1959年に誕生した、造成当時には日本住宅公団(現在のURの前身)最大の団地でマンモス団地の先駆。老朽化のため、建替えが行われ、現在の名称はひばりが丘パークヒルズ。数ある団地のうちでも建替えを行われた例はそれほど多くはなく、URがこの地のポテンシャルを認識しているであろうことは間違いない。
さらに敷地内には新たにシティテラスひばりが丘、プレミストひばりが丘などのマンションが誕生してもいる。団地敷地内以外でも南口側、北口側でそれぞれ建設が行われていることから、若い世代の流入が予測される。
住宅価格が上がったことから住宅購入者の目は比較的住宅価格が手頃な東京都外縁部に向いている。そこに駅周辺の整備が加わる。ひばりヶ丘駅周辺はこれから変化のある、面白い場所のひとつと言えるのではなかろうか。
ちなみにもう1点、面白いのは前述した通り、駅自体は都内にあるが、少し行けば埼玉県新座市であるということ。当然だが、土地価格などには差が出る。賃貸で住む人がそのあたりにこだわらないことを考えると、こうしたギャップをうまく使えればどうだろうか。
健美家編集部(協力:中川寛子)