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中央区の容積率緩和制度撤廃、新たな定住者呼ぶ街の力の衰退か。タワマン希少価値アップは幻想の可能性

都市計画・再開発(地域情報)/東京 ニュース

2018/06/23 配信

1980年代後半のバブル経済期は、東京など都心部だけでなく全国どこでも土地の値段が上がった。今では見向きもされない土地であっても、当時は土地さえ持っていれば値段が上がり続けると信じて皆が買い漁り、地価は急騰した。

サラリーマンは、都市部で住宅を購入することをあきらめ、郊外に出て都市のドーナツ化現象を引き起こした。都心に近い街ほど定住人口が少なく、都心部の自治体は定住人口を増やすためにさまざまな施策を進めてきた。

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中央区日本橋エリアの写真

そうした中、東京都中央区では、マンションなど居住用物件の容積率緩和制度を廃止するとして注目を浴びている。

同区は、定住人口の維持・回復を目指して1993年7月に「用途別容積型地区計画」、1997年7月に「街並み誘導型地区計画」などを定めて区内の約8割に地区計画を導入してきた。

その地区計画の導入から20年以上が経過し、定住人口が回復して当初の目的が達成されたとして、定住型住宅に対する容積率緩和制度の廃止を打ち出した。

中央区の用途別面積を見ると、容積率200%の第1種住居地域が25ha、400%が35.1haあって、第2住居地域では400%の容積率緩和地域が69.6haある。1種と2種を合わせ住居地域は区の15%を占めている。

一方で、日用品を販売する店舗などの住宅関連施設や保育所・診療所といった公益施設を整備する建物に対する容積率は緩和する。広場など公共的な空間整備も同様に緩和する。

国際化やインバウンドへの対応が可能な一定規模以上の客室を持つホテル、街に賑わいをもたらす施設開発でも容積率を緩和する方向だ。2019年1月に中央区都市計画審議会を開催し、2月に都市計画の決定を予定している。

都心回帰で中央区の人口は昨年1月に55年ぶりに15万人を突破し、今年6月1日時点で見ると16万0228人となっている。

急速な人口増加に伴い小学校などの整備が追いつかず、保育園の待機児童が増えるなど高層マンション、大規模マンションの乱立が住民生活に弊害をもたらし始めたことに対応し、人口流入の抑制にかじを切った。

つまり、これまで容積率緩和を受けて超高層住宅、いわゆるタワーマンションなどの開発が相次いだものの、緩和撤廃によってこれから新規供給が見込めないということ。これに伴い、既存物件や現在計画中のマンションの資産価値が上昇に向かうとの声も出始めている。

仲介最大の三井不動産リアルティでは、「容積率の撤廃となればタワーマンションなど大規模物件に影響が出そうだ。将来的な希少価値を見据えて中古物件に需要が流れて資産価値が上がる可能はある」(山代裕彦社長)と指摘する。

中央区の人口・世帯数(6月1日現在)
出所:東京都中央区

ただその一方で、将来の希少価値に目を付けて、計画中や発売予定、既存のタワーマンションにマーケットが反応するのは短期的な動きだとの見方もある。

東京カンテイの高橋雅之・主任研究員は、「緩和撤廃によって新しい定住者を呼び込む街の力が衰えてしまう、街の新陳代謝が鈍っていくという弊害も出てきそうだ。

人口減少時代にあって人口をどう確保しているかが各自治体の課題になっている中で、ほかの行政区が中央区に追随するかは疑問だ」と話す。基本的に街の活性化には人口の確保が欠かせないからだ。

中央区が緩和撤廃に動いた背景として、学校・幼稚園・保育園など就学・福祉の問題が大きいのは確かだ。

人口の急増により人員輸送のキャパシティを超えつつある駅問題も出始めた。中央区の世帯数は、1995年の2万6391世帯から、現在は9万世帯を超えている。

江東区でも、10月以降に開発するファミリー世帯向けの住戸が151戸以上のマンションで、総戸数のうち2割を25㎡以上40㎡未満の住戸とすることを義務付けるとした。

ファミリー層の流入を制限するためだ。湾岸エリア有明の人口は2006年比で14倍弱増え、豊洲もこの10年間ほどで倍以上に増えた。ただ、江東区は内陸部と違い湾岸エリアの土地が余っていることで、年少人口の急増に伴う対応策として小中学校の増設なども行う。

仮に高橋氏が指摘するように、中央区に追随する行政区が出ないと考えると、中央区の周辺区に新規供給されるタワーマンションなどに消費者(定住人口)が流出する可能性も少なくなさそうだ。

なにも中央区内で求めなくても周辺の行政区で手に入れることができるため、希少性云々によって相場以上に価格が引き上げられることもなくなる。

中央区では、住宅に対する容積率の緩和制度を廃止するが、インバウンドなどの商業需要を呼び寄せるための容積率は緩和し、区内におカネを落としていってもらう政策は推推し進めていく。

ただ、職住近接の都市作りがトレンドの中で来場者だけで街の活力が維持できるか。若年人口の急激な増加にインフラ整備が追いつかないためのやむを得ない施策ではあるが、街の活力の源とも言える定住者の新陳代謝が落ち込むことは大きなマイナスである。

当面は新築・築浅の人気タワマンの需要が活発で住み替えによる人口の移動も期待できるものの、築古だらけのタワマンになった際にどの程度の住み替え需要が期待できるかは未知数である。

もっと言えば、都心という地ぐらいに魅力を感じて中央区の新築タワーマンションを購入していた高年収層が、他の都心区に流出する可能性もある。

その場合、富裕層が多いという中央区定住者の属性も変化していく可能性もある。容積率の緩和制度撤廃によるタワーマンションの希少価値の上昇は幻かもしれない。

健美家編集部

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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