山手線浜松町と聞くと羽田空港へのモノレールの発着駅としてのイメージが強いかもしれないが、それだけで考えると、この駅の実力を見損なうことになる。
鉄道の駅としてはJR山手線、京浜東北線に東京モノレール羽田空港線の浜松町駅があり、都営地下鉄浅草線、同大江戸線の大門駅、さらに海側にはある東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)の竹芝駅があり、さらに再開発エリア汐留とも隣接しているのである。
羽田へ便利なだけではなく、東京駅、品川駅至近で新幹線にもアクセスしやすく、その他の都心へも同様。さらに世界貿易センタービル内のバスターミナルからは日本全国への長距離バスが出ており、どこに行くにも利便性は高い。それを反映してか、近年は住宅も増えている。だが、その割には長年それほど開発されてこなかったまちでもある。そのため、駅から少し離れると低層の店舗併用住宅などもあり、空き家となっているような物件も残されている。
ところが、その浜松町界隈が動き始めている。2019年1月の世界貿易センタービル隣接地に立地する日本生命浜松町クレアタワー(地上29階建て・地下3階)開業を皮切りにこれから続々と大規模な新築、建替えなどが予定されているのである。順に見ていこう。
浜松町西口地区には4棟のタワー
まず、浜松町駅の西側、浜松町二丁目西口地区の開発である。ここには合計で6棟のビルが建設される予定でうち、4棟がタワーである。うち、1棟が前述の日本生命浜松町クレアタワーで図中のB街区に当たる。
その隣のA街区が世界貿易センタービルのある区画で、現在、この区画の南側で世界貿易センタービル南館(A-3棟)が建設中。地上39階建て、地下3階のタワーで2017年9月に着工。完成は2021年1月を予定している。
世界貿易センタービルの解体はその完成後と見られている。1970年の竣工以来、浜松町の顔として愛されてきたビルだけに解体は大きなニュースになるのではなかろうか。その後、現在の建物の跡地に地上37階建て、地下3階のA-1棟が建設される。
それ以外にも東京モノレール浜松町駅の建替え(TM棟分)やバスターミナルの再整備(A-2棟内)などが予定されており、計画ではA街区全体の工事完了は2027年12月となっている。現在あるものの再整備、建替えに加え、MICE機能の整備、外国人滞在者支援機能などといった新しい機能の導入なども予定されている。
また、西口地区ではもう一区画、浜松町二丁目地区でも開発計画がある。こちらにはオフィス、区の施設に店舗、住宅などが予定されており、地上47階、地下3階のタワーと低層棟の2棟を予定。2026年3月の完成を目指している。
既存のクレアタワー、A街区の2棟、二丁目地区の1棟で計4棟のタワーになるのだが、面白いのはその背後の南側エリア。海辺に近いこともあって船宿が残り、神社や低層の古い建物も点在している地域で、そちらから再開発エリアを見ると建物の高さ、築年数には大きな差。開発を見込んでか、南側エリアでも少しずつ建替え、リノベーションは進むが、全体としてはごく一部。これから変化する地域となるはずだ。
竹芝にオフィス、住宅、ホテルに劇場など
竹芝エリアでは2つのプロジェクトがほぼ完成している。ひとつは東急不動産が手がける東京ポートシティ竹芝。これはオフィス棟、レジデンス棟からなるプロジェクトでレジデンス棟は予定では6月から入居開始となっている。面白いのは1棟のうちに一般的な賃貸住宅に加え、シェアハウス、サービス付きアパートメントがあり、賃貸住宅のうち、最上階を含む2フロアに100㎡を超すプレミアム住戸も。1階には保育園が入り、竹芝駅直結という利便性の高さも特徴だ。
また、オフィス棟にはソフトバンクグループが2020年後半に入居することになっており、その協力を得てこのエリアのスマートシティ化を計画している。住宅にも様々な最新設備が導入されている。
もうひとつのプロジェクトがJR東日本が進める「WATERS takeshiba(ウォーターズ竹芝)」。ホテル、オフィスを中心にしたタワーと劇団四季の劇場、駐車場棟からなっており、間には商業施設も。
水辺という立地を生かして水運を取り入れる予定となっており、定期航路船が就航する計画。船着場からは浅草、両国、豊洲、お台場、葛西などを結ぶ新たな航路が生まれることになっており、竹芝のアクセス、湾岸エリアの回遊性がおおいにアップしそうである。また、干潟を設けるなど、水辺に親しめる場にもなりそうだ。
このエリアではあまり話題になっていないが、東京ポートシティ竹芝隣接地でマンション・イトーピア浜離宮の建替え及びザ・竹芝開発と銘打った商業施設、オフィスなどからなる建物の建設も進んでおり、一画全体が変わることになる。
その一方で竹芝界隈もまた、古いマンションなどが多く残されており、コントラストが面白いほど。これから変わる可能性も十分ありそうだ。
浜松町ビル建替えでツインタワーに
芝浦一丁目では浜松町ビルの建替えが控えている。ここも浜松町西口地区に匹敵する再開発で東京ドームとほぼ同じ約4.7haの区画に高さ約235mの複合ビル2棟が建設される予定である。こちらもウォーターズ竹芝同様、目の前の芝浦運河を利用した舟運を利用、水辺の魅力を活かした開発になるという。
この開発に先立ち、日の出ふ頭小型船ターミナルは関わる野村不動産の手で再生されており、本体着工はそれぞれ2020年度、2026年度とまだ先だが、着実に進み始めている。完成は2023年、2029年の計画だ。
以上、これから10年ほどで大きく変わりそうな浜松町駅周辺をご紹介した。実際の開発は各所で複数あるが、駅西口、竹芝、芝浦一丁目を地域で見れば回遊性を重視した3大開発ということになる。相乗効果で浜松町が大きく変わることは間違いない。
健美家編集部(協力:中川寛子)