■品川区の中心地
大井町駅周辺地区は、「品川区役所」が「大井町」駅の西側に建つなど、品川区の行政の中心地である。かつて駅前には、JR東日本の大きな社宅があった。その跡地に、2018年(平成30年)、複合スポーツエンターテイメント施設「スポル品川大井町」と、「キャッツシアター」「四季劇場夏」がオープン。2021年
オリンピック終了のタイミングで、商業、オフィス、品川区役所の新庁舎、にぎわい施設などの大規模再開発が予定されている。
■大井町周辺開発の歴史
大井町は、古くから交通の要衝として栄えてきた。明治後半から京浜工業地帯の発祥地として、関東大震災以降は、街としての開発が徐々に進んだ。
第二次大戦では空襲で大井町一帯が焼け野原に。駅周辺には闇市ができ、その一部は今でも「ディープな昭和レトロな街(東小路飲食店街と平和小路)」として残っている。そんな昭和の姿を残しながらも、街は発展しつづけている。
大井町駅は、1914年(大正3年)開業。1945年(昭和20年)戦争で焼け野原になった大井町西口には、200件を越えるバラックが不法占拠。その後、地道な移転交渉で、長い歳月をかけて街の整備が進められた。
1953年(昭和28年)阪急百貨店が進出。戦後の混乱期から立ち直り、高度経済成長へのつながる前のタイミングだった。歓迎と納涼大会を兼ねて「大井どんたく」が開催。今日まで続いている。
1989年(平成元年)「大井町」駅東口の駅前一帯の再開発。「きゅりあん(品川区立総合区民会館)」、「大井町丸井(現・ヤマダ電機 LABI品川大井町)」が誕生。公共施設やショッピング環境が整備。2002年(平成14年)りんかい線が開通。2010年(平成22年)「四季劇場[夏]」がオープン。
2018年(平成30年7月3日)品川区とJR東日本の間で「まちづくり推進に関する協定」が締結。大井町駅前のJR東日本の社宅跡地(8300㎡)の開発計画。複合スポーツエンターテイメント施設「スポル品川大井町」と、「キャッツシアター」「四季劇場夏」がオープン。2021年(令和3年)オリンピック終了後、この地区を品川区の中心核として、更なる都市機能を充実させる再開発が進められる。
■快適な足回り、都心へ、西へ、海外へ
大井町の利便性をご存じだろうか?JR京浜東北線、東急大井町線、りんかい線の、3路線が乗り入れるターミナル駅だ。さらに、ひとつ駅隣の品川駅は、京浜急行で羽田空港まで直通約20分。東海道新幹線も停車する空と陸の玄関口。
そして、リニア中央新幹線(2027年開業予定)が開通すると、「品川」から「名古屋」まで約40分。
JR東日本の「羽田空港アクセス線」の計画もあり、大井町~羽田へのアクセスが、将来さらに便利になる。
●京浜東北線
「品川」駅や「東京」駅など都心部へもダイレクトアクセス。
「川崎」「横浜」駅方面も直通。
●りんかい線
「大崎」駅からJR埼京線に直通。「渋谷」「新宿」「池袋」駅にも乗換なしで移動。
「天王洲」「お台場」駅方面へのアクセスもスムーズ。
●東急大井町線
「溝の口」駅まで延伸。「自由が丘」「二子玉川」駅へも、電車で買い物を楽しむことができる
●羽田空港行京浜急行バス
「大井町」駅西口3番乗り場から、「羽田空港」駅まで直通。乗換がないので大きな荷物での移動も安心。
■大井町駅周辺街づくり構想
JR広町社宅跡地と品川区有地からなる、広町地区のまちづくりについて、JR東日本は2021年(令和3年)オリンピック終了後からの着工を目指し、品川区と2013年度(平成25年度)から共同検討を行っている。
品川区の中心核としてふさわしい、業務・商業機能が充実し、芸術や文化等、生活ステージとして、人々が集い、楽しく自然に暮らすことができるまちを目指して、既存のまちを含めたさらなる賑わいの創出を狙っている。
※巨大な広町地区の再開発計画の対象面積について(補足)
上記の資料から再開発対象面積の合計は、5.45ha(54,500㎡)と読み取れる。仮に当該地区が「商業地域」となり、容積率が緩和(推定500%)された場合、総床延面積は272,500㎡(8,257坪超)と予想される
■慶応義塾大学(SFC)との協働研究プロジェクト
大井町では、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)と協働して、大井町を社会実験の舞台とした新たなる取り組みが行われている。
今後の日本では、人口減少、高齢化社会を迎え、地域の持続可能な発展のためのあり方が、社会課題となっている。環境、建築、都市計画、テクノロジー、コミュニティなどの複合的視点からのアプローチによる研究プロジェクトを実践。
大井町の地域資源を存分にいかし、未来の地域づくりのモデルを提示する計画だ。学生や海外の大学教授の意見も、街づくりに取り入れていくプロジェクトだ。この取り組みは、各方面からも注目されている。
①住みやすいスマートシティ(Smart City)の計画とデザインに関する研究
②eスポーツと地域づくりに関する研究
③大学連携による地域づくりに関する研究
④コミュニティと地域づくりのための拠点・空間に関する研究
⑤多世代交流の居場所づくりに関する研究
⑥研究プロジェクトの成果発信、国際的ネットワーク形成
(※みらいをつくる・ラボ ホームページより引用)
■取材協力 かんべ土地建物株式会社(代表取締役社長 神戸雄一郎)
1930年創業。戦前から大井町駅周辺の開発に携わってきた。今年で創業90年。大井町とともに歩んできた地元不動産会社。本社は大井町駅前イトーヨーカ堂東京都品川区大井1-3-6 K-1ビル
取材・文 和田野学
【プロフィール】(株)リクルートで住宅情報事業部、(株)リクルートスーモカンパニーで不動産広告事業に携わる。首都圏、関西、広島、九州エリアの営業、取材活動を通じて、多くの不動産デベロッパー、ハウスメーカー、地元不動産会社とのパイプを持つ。現在は会社経営。