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注目の街下北沢。姿を現し出した「下北線路街」が世田谷区、空き家にインパクトを与える?!

都市計画・再開発(地域情報)/東京 ニュース

2020/10/19 配信

南側に道路を取り、敷地は中庭を中心に棟が向かい会う形になっている
南側に道路を取り、敷地は中庭を中心に棟が向かい会う形になっている

小田急線東北沢~世田谷代田間では2004年の着工から14年をかけて2019年3月に複々線化事業が完了。さらに複々線化にあわせて地下化した線路跡地を利用した「下北線路街」の開発が姿を現し始めている。

2020年10月1日に行われた、施設のひとつ、ボーナストラックのグランドオープンイベントに参加、合わせて下北線路街全体を歩いてきた。

駅周辺では住宅新築など、刺激された動きも

10数年に及ぶ小田急線下北沢地区の複々線化工事は終わったものの、それに伴う東北沢、下北沢、世田谷代田駅間の整備はまだまだ続いている。それでも2020年に入って全体像がだいぶ見えてきた。

駅からボーナストラック方向を見たところ。中央に建物が見える
駅からボーナストラック方向を見たところ。中央に建物が見える

まず、10月1日にグランドオープンしたボーナストラックは下北沢駅から直線距離にすると150mほどの場所にある。

下北沢駅と同施設の間は現在工事中で、駅に近いエリアには商業施設、同施設の目前には世田谷区の公園が作られる予定で2021年には完成とのこと。現在は線路跡のまわりをぐるりと回らなくてはいけないので、多少遠く感じられるが、工事が完成すればぐっと近くなるはず。

マンション建設中の現場
マンション建設中の現場

ちなみに下北沢駅南西口からボーナストラックへの道沿いではこの半年ほどで新たにマンション建設が始まった現場があり、駅周辺の整備が地域の建物の更新を早めていることを如実に感じた。

ボーナストラックは線路があった場所にお店を開くことができるというおまけ的な意味の「ボーナス」と線路跡地を表現した「トラック」をかけあわせたもの。

レコード業界で使われるボーナストラックという言葉は本来のアルバム構成には含まれていない追加曲という意味があり、その分、作り手が自由にできる部分ともされる。ボーナストラックも関わる人のチャレンジを誘発する場でありたいということなのだろう。

2階建ての長屋が並ぶ、贅沢な土地利用

下北沢駅方向から見た入口周辺。右側の建物が中央棟
下北沢駅方向から見た入口周辺。右側の建物が中央棟
中庭部分から中央棟を見たところ
中庭部分から中央棟を見たところ。ゆったりした間隔に建物が配されている

実際の場所は当然だが、線路跡の細長い敷地。敷地南側に敷地を貫通する道路が取られており、これは区道になっている。それ以外の土地のもっとも下北沢に近い側には駐車場・駐輪場があり、中央棟と言われる2階建て、500㎡ほどの建物が立地する。

その奥には中庭を挟んで100㎡ほどの小規模な木造2階建ての建物が左右に4棟並ぶ。建物はそれだけである。実にもったいないほどの土地の使い方がされているのだが、これにはいくつかの理由がある。

オープンイベントで小田急電鉄生活創造事業本部開発推進部課長の橋本崇氏が語ったところには開発に当たり、地元の人たちに話を聞くなどしたところ、2つの課題が明らかになったという。

ひとつは昔は個性的な個人店が多く、まちとして魅力的だったが、近年は賃料が3倍ほどにもアップ、チェーン店など大きな資本による、均質的な店が増えてしまったということ。下北沢に限らず、人気のあるまちではどこででも起きている現象である。

もうひとつが空き家問題。世田谷区は住宅地として人気のあるエリアであるにも関わらず、総務省の2018年の住宅・土地統計調査の確定値に基づいて分析すると5万戸ほどもの空き家がある。

しかも、世田谷区の場合、問題なのは市場に出ていない空き家の割合が2~3割にも及ぶという点。問題視されず、放置されているのである。

そこで考えたのは新たに生まれた土地に若い個人の事業者でも手を出せるような店舗を作り、失われた個性を再生させるということ。

こういう使い方があることが周囲に知られるようになれば、空き家を使ってもらおうという気運が生まれるかもしれないという意図もあろう。ボーナストラックには商業施設には珍しく不動産会社が入っているのだが、それはそのためである。

だるまがシンボル。10月中は様々なイベントが行われる予定
だるまがシンボル。10月中は様々なイベントが行われる予定

当日は語られなかったが、用途地域の件もある。中央棟が建っている部分までは第一種中高層住居専用地域、そして小規模な店舗兼用住宅が並んでいるエリアは建築物に対する規制がもっとも厳しい第一種低層住居専用地域(以下、一種住専)なのである。

ご存じのように一種住専地域内は主に低層の住宅を建てることとされている地域で、店舗やオフィスだけという建物は建てられない。

併用住宅は可能だが、延床面積の2分の1以上を居住用にせねばならないなどの規制も。つまり、商業施設として利益を追求するような建物はそもそも建てられないのである。

そうした用途地域から求められる規制と下北沢の課題解決がうまく合致したのが、1階は店舗、2階は住宅となった各階ともに5坪(16.5㎡)というコンパクトな建物である。

賃料は15万円。これは入居者と想定した地方で起業、個性的な経営をされている人たちなどにヒアリングした結果から算出した額。いくらだったら出せる、入居できるという観点から賃料を考え、それに合わせて建物を作ったというわけだ。

実際には建ぺい率に関しては許容される半分ほど、容積率に至っては2割ほどしか使っておらず、その分は中庭その他の緑の部分に使われている。豊かな印象を受けるのはそういう理由からである。

地域の人の散歩、買い物の場に

10月1日はグランドオープンとされたが、当初は春のオープンが予定されており、実際は開かない店舗もありながら、4月1日以降、徐々にオープン。7月末には最後の店舗が開いて、全部揃った。

その間、どんなことがあったか。前出の橋本氏、運営にあたる散歩社の小野裕之氏、内沼晋太郎氏の話によれば、地元の人と時間を共有する6カ月間だったという。

オープン前の2019年年末、2020年年初には地方で活躍している、すでにファンの多い人たちが出店することもあり、既存のファンが中心に来る場になることを予想していたそうだが、コロナ禍で遠来の客は来られなくなった。「来て」とも言えない。だが、その分、地域の人と時間を共存、関係を作るのことになったという。

地域の人たちに施設を知ってもらうため、毎月1号チラシを作り、施設内に置くほか、各戸に配布もしているという
地域の人たちに施設を知ってもらうため、毎月1号チラシを作り、施設内に置くほか、各戸に配布もしているという

これを3人は良いことと評価した。多くの商業施設がいきなりその場に誕生し、地域と対話、共存すると言葉では言ってもなかなか実現はできていない。

だが、ボーナストラックの場合には買い物、飲食だけではなく、散歩や憩いの場となっており、この半年ほどで地域に馴染んだ場になった印象がある。

そして、そこにこの開発の面白さがあるように思う。たいていの開発は該当する地域だけを良くしようとする。だが、今回のボーナストラックを含む下北線路街は支援型開発を掲げており、当日配布されたコンセプトブックによると「変える」のではなく街への「支援」を目指すとある。

勝手に解釈すると該当する土地だけでなく、周辺へ、外に広がる、触媒としての開発というようなものだろうか。周辺を歩いてみると使われていないように見える住宅や更新の止まった建物も多いことを思うと、この場が周辺に影響を及ぼしていくとなれば面白いと思う。

世田谷代田方面には保育園、温泉旅館など

2020年4月にオープンした保幼園
2020年4月にオープンした保育園

長くなったが、ボーナストラック以外の下北線路街についてもご紹介しておこう。まずはボーナストラックから世田谷代田駅方向。ボーナストラックの隣にあるのは2020年4月にオープンした世田谷代田仁慈保幼園。脇には小さな公園もある。

温浴施設。周囲からは隔絶された空間。道行く人が不思議そうに眺めていた
温泉旅館。周囲からは隔絶された空間。道行く人が不思議そうに眺めていた

その先にあるのは世田谷区に温泉がということで話題になった温泉旅館由縁別邸 代田。2020年9月にオープン、一画の雰囲気を大きく変えた。

環七近くにあるカルディ
環七近くにあるカルディのテストキッチン&カフェ

そこから駅前を整備中の世田谷代田駅を挟んだところにあるのが世田谷代田が発祥の「カルディ」によるテストキッチン&カフェKALDINO。日本のあちこちで見かけるようになったカルディを運営するキャメル珈琲がこの地の出身とは知らなかった。

環七上には橋があり、スムーズに移動できる
環七上には橋があり、スムーズに移動できる
東京農業大学を中心に
東京農業大学のオープンカレッジなどを中心にした世田谷代田キャンパス。ランチ利用に人が集まっていた

さらに環状七号線を挟んでは東京農業大学のオープンカレッジ、アンテナショップ、地域密着のカフェレストラン、青森県の農家直営店が集合した世田谷代田キャンパス。広場を利用、朝市やマルシェなどが開催されているそうだ。

地区の最先端に当たる場所にある賃貸テラスハウス
地区の最先端に当たる場所にある賃貸テラスハウス
玄関回りの広さが魅力的だった
玄関回りの広さが魅力的だった

最後に位置するのは2016年にオープンした賃貸テラスハウス、リージア代田テラス。各住戸に庭と専用テラスがあるゆったりした住宅で、建物前の植栽も含め、気持ちの良い空間になっている。住宅の奥には小さな公園も作られている。

世田谷代田駅前は工事中だった。この背後に温浴施設が
世田谷代田駅前は工事中だった。この背後に温泉旅館が立地する

下北沢駅近くには自由な使い方ができるオープンスペースも

右側の建物が学生寮
右側の建物が学生寮。正面がボーナストラック
学生寮の概要
学生寮の概要

続いて下北沢方向を見ていこう。ボーナストラックから少し離れた道路沿いに現在建設が進んでいるのが学生寮。2020年12月にオープン予定で、現状では名称は決まっていない。

ホームページによれば「住む」と「学ぶ」が一体となった、新たな教育的価値をもたらす教育施設だという。また、地域の方々との交流の場としても、いろんな仕掛けを用意していくとのことで、一般的な学生寮とは一味違うモノになるのだろう。

さらに下北沢寄りには「シモキタに住む人・働く人・訪れる人のための、新たな居場所」としての商業施設が誕生する予定。グローサリー、喫茶、ミニシアター、ラウンジ、宿泊施設などを併設するという。イベント開催にも取り組むそうである。

言葉の通り、駅の上にある商業施設
言葉の通り、駅の上にある商業施設

下北沢駅の上にはシモキタエキウエという商業施設ができている。生活雑貨、グリーンショップ等の物販に加え、カフェ、居酒屋、立ち飲み屋、エスニック料理店などの飲食店が入っており、中央口から南西口の通過ルートでもある。

芝生の広場などもあり、幅広い年齢層の人たちが思い思いに寛いでいた
芝生の広場などもあり、幅広い年齢層の人たちが思い思いに寛いでいた
商店街を抜けてきたすぐ脇が下北沢線路街空地になる
商店街を抜けてきたすぐ脇が下北線路街空き地になる

駅、駅前広場を挟んでは下北線路街空き地と名付けられた、オープンスペースがある。常設のカフェスタンド、日替わりでフードトラックなどが集まり、子どもから大人までが遊べる場となっている。商店街を抜けたところにある自由な雰囲気の空間で、使い方の実験場といえそうである。

全体の規模感はこんな感じである。店の数は多いがそれぞれはコンパクトになるようだ
全体の規模感はこんな感じである。店の数は多いがそれぞれはコンパクトになるようだ
現在建設中の商業施設。すでに入居者募集も始まっていた
現在建設中の商業施設。すでに入居者募集も始まっていた

そこから東北沢駅にかけては3棟の建物が建設中。商業施設、飲食店、宿泊施設となる予定。名称、詳細は未定とのことだが、建設中の塀に貼られていた入居者募集の図面からするとこちらもあまり大きな区画ではなく、小規模店メインの施設になるようである。

東北沢駅周辺の住宅街。人通りは少なく、空き家も見かけた
東北沢駅周辺の住宅街。人通りは少なく、空き家も見かけた
下北沢の既存商店街には空地が点在、今後の開発の余地を予感させた
下北沢の既存商店街には空地が点在、今後の開発の余地を予感させた

地下化で生まれた3駅間の土地の長さは約1.7km。その周辺地域は主に住宅街で下北沢駅周辺を除けばかつては商店街があったのだろうが、現状はいささか寂しい状況。

それが線路跡を介することで下北沢周辺と繋がり、一体として変わっていくとしたら面白いこと。最近、高架下の利用が注目されるようになったが、地下化で新しい土地が生まれるのはそれ以上に使い甲斐もあり、変化も大きいはず。これからの沿線の変化に期待したい。

健美家編集部(協力:中川寛子)

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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