東京では豊洲駅(有楽町線・ゆりかもめ)と住吉駅(新宿線・半蔵門線)を結ぶ「東京メトロ豊住線」、銀座から晴海~有明・国際展示場付近に抜ける「臨海地下鉄」、さらには東京メトロ半蔵門線や都営大江戸線の延伸など、鉄道の新線や延伸の計画がいくつもある。一向に実現に向かわず都市伝説的な路線もあるが、なんとこの度、JR東日本による「羽田空港アクセス線」の鉄道事業が認可され、はやければ2029年に開業することがわかった。
JR田町駅付近から羽田空港に直結
東京上野ラインでアクセスできるように
羽田アクセス線は、かねてからJR東日本が申請をしていた路線だ。国土交通省は1月20日に事業を認可したと発表した。事業費は3000億円(車両費は除く)で、開業は2029年度を予定。開業後は1日あたり72本、1時間当たり4本(片道)で運行する計画だ。
JR東日本はこれまで、以下の4つのルートを羽田空港アクセス線構想として掲げてきた。
・アクセス新線:羽田空港新駅(仮称)~東京貨物ターミナル間
・東山手ルート:東京貨物ターミナル~東京駅を結ぶ
・西山手ルート:東京貨物ターミナルと新宿方面を結ぶ
・臨海部ルート:東京貨物ターミナルと房総方面を結ぶ
今回認可されたのは、アクセス新線だ。国土交通省が公開した事業概要によると、整備区間は東京貨物ターミナル~羽田空港新駅(仮称)間の約5.0㎞で、整備される駅は羽田空港新駅(仮称)の1駅。
列車は羽田空港新駅(仮称)から、新たに建設されるアクセス新線の地下トンネルを抜けて、地上にある東京貨物ターミナルに至る。そこからは貨物線として使われている「大汐線」を通り、田町駅近くで東海道本線と合流し、上野東京ラインにつながるという。そうであれば、新駅の次に停車するのは新橋駅になるのかもしれない。
なお、大汐線は現在使われておらず、今回の事業に伴い改良することで東山手ルートの経路にするそうだ。アクセス新線は新たに整備、東山手ルートは既存路線を使い整備すると考えられる。
地図によると、羽田空港新駅(仮称)は空港の第1ターミナルと第2ターミナルの間に設けられるようで、東京駅までは約18分。現状だと浜松町駅でモノレールに乗り換えで30分近くかかるので、かなりの時間短縮になる。さらに、上野東京ラインにつながるということは、上野や赤羽~浦和~大宮、日暮里~北千住など、宇都宮線や高崎線、常磐線からも羽田空港へダイレクトにアクセスできるようになる。停車駅がどうなるかはまだわからないが、羽田空港アクセス線の整備で、都内北部~埼玉、北関東エリアと首都圏~羽田空港までも移動しやすくなるのはインパクトがある。関連地域に何らかの影響があってもおかしくない。
西山手ルートと臨海部ルートも
認可されるとさらに羽田が近くなる
気になるのは、アクセス新線を通り東京貨物ターミナルでりんかい線とつながり、新宿方面に向かう西山手ルート、新木場方面に向かう臨海部ルートが実現するかどうかだ。まだ開業についてアナウンスされていないが、仮に認可されると、これもかなりのインパクト。いまは新宿駅~羽田空港駅間は40分ほどかかるが、かなりの時間短縮が期待できる。新木場についても同様だ。
新宿方面から羽田空港へのアクセスが良くなると、空路の移動が多い人にとっても、都内西部が住まいの候補地になるかもしれない。片や羽田空港と新木場がつながると、東京ディズニーリゾート~千葉方面に抜けやすく、旅行者にとっても朗報だ。
現在は品川・高輪ゲートウェイ・泉岳寺駅、田町駅の沿線で、大規模な再開発が進行中。近く、国際ビジネスの交流拠点として、カンファレンスやビジネス支援施設、ラボやホールといった文化創造施設、ホテルや住居が整備される。現在は泉岳寺駅から羽田空港・成田空港に向かう列車があり、浜松町駅からモノレールに乗り乗り換えて羽田空港にも行ける。これらに加え、羽田空港アクセス線ができると、さらに選択肢が広がり、国内外から人が集まりやすくなるだろう。そう考えると、同線の整備は単に利便性の向上だけではなく、国際競争力強化の点でも、非常に意味がある。
健美家編集部(協力:大正谷成晴)