新型コロナウイルスの影響で需要が激減し、厳しい状況にさらされている航空業界。一方で、羽田空港アクセス線の鉄道事業が認可されるなど、空港関連の話題は事欠かない。昨年9月には、京浜急行電鉄(京急)・東京モノレールが乗り入れる天空橋駅に直結する羽田空港跡地で「羽田イノベーションシティ」が本格稼働を始め、集客スポットになっている。
先端技術や日本文化の発信拠点として開業
意外にも観光・撮影スポットとして人気?
「羽田イノベーションシティ」は鹿島建設やJR東日本、京急、東京モノレールなど9社が出資する羽田みらい開発が事業主体となり開発された複合施設だ。建てられたのは羽田空港跡地で、大田区から約5.9haを50年間借り受けた。昨年7月の先行開業時には天空橋駅に「HICity口」の供用が始まり、9月に本格稼働が始まっている。
施設は地上11階、地下1階建で延床面積は13万㎡を超え、AからKまで11のゾーンに分かれ、「先端」と「文化」がテーマの拠点が入る。先端の領域では、先端モビリティセンターや研究開発拠点、多機能ホール、先端医療センターなど、未来の暮らしをつくる企業などが施設を構えるのが特徴だ。
一方、文化の領域では伝統や観光、食、温泉、音楽・映画・演劇、芸術の分野を軸に施設を整備した。ライブホールの「Zepp Haneda(TOKYO)」は国内最大級の約3000人が収容できるライブホールで、昨年はB’zが同所から配信ライブを行い話題に。10月下旬から11月末にかけては外壁にポスターが貼られ、スクリーンでもパフォーマンス映像を流したことで、ファンが立ち寄ることもあったようだ。
ほかにも、日本文化を学べるデジタル体験型の施設である「羽田出島」、アート遊具が配置された芝生の広場「アーティストビレッジ」などもあった。先端技術やビジネス創出の拠点なので、もっと堅苦しい場所と思いきや、アミューズメントスポットとしての色合いも濃い。
来場者からとくに人気だったのは、無料で利用できる「足湯スカイデッキ」だ。羽田空港を望むことができ、離着陸する飛行機を眺めたり撮影する絶景ポイントで、多くのカメラマンも集まっていた。
施設ではスマートシティに対する取り組みとして、自律走行バスや自動運転車いすなどの先端モビリティ、自律異動型ロボットを遠隔操作できるアバターロボットなどの実証実験も行い、一部のモビリティは一般来訪者も試乗することが可能だ。施設全体はまだ完成しておらず、グランドオープンは来年の予定。ビジネスやプライベートで人が集まる拠点になるに違いない。
羽田空港近くでは開発プロジェクトが続々進行中
街の景色は変わり周辺の住まいにも影響する?
羽田空港近辺はもともと漁師町で、海苔の養殖が盛んな地域。広い干潟を利用して「東京飛行場」が開設し、戦後は羽田空港が日本の玄関口として使われるようになった。しかしながら天空橋駅周辺の羽田空港跡地が閑散としていたのは事実。羽田イノベーションシティの誕生で、大きく変わることが期待される。
なお、羽田空港では第3ターミナルにホテルや商業施設、温浴施設などが集積する「羽田エアポートガーデン」、多摩川を挟んで川崎市には、自治体が主導する都市再開発プロジェクトの「キング スカイフロント」も整備されている。同所と羽田空港を結ぶ羽田連絡道路も今年度内の開通を目指していて、多摩川を渡る橋の名称は募集により選ばれる。
天空橋駅の西側には戸建てや分譲・賃貸マンションなど住宅地が広がっていて、のどかな下町の雰囲気だ。近隣には物流施設やホテルも点在している。賃貸相場は周辺に比べて安いが、今後周辺が発展することで、状況は一変するかもしれない。これからの「イノベーション」が楽しみなエリアだ。
健美家編集部(協力:大正谷成晴)