池上駅は、東京都大田区にある東急池上線の駅。その歴史は古く、1922年(大正11年!)に、池上電気鉄道が池上本門寺の参拝客のための鉄道として、池上-蒲田間を開業したことにまで遡る。その後、1928年に蒲田-五反田間が全通し、34年に東急電鉄の前身である目黒蒲田電鉄に買収され、現在至る。
池上線は各駅停車のみで3両編成と、東急線のなかでも規模は小さい。戸越銀座や雪が谷大塚など下町情緒の残る街を抜け、昭和のようなたたずまいの駅舎も数多く残る、タイムマシンのような路線だ。そんな池上線のなかで池上は比較的乗降客数が多い駅だが、この春に大きく生まれ変わるという。
駅直結の大型商業施設がオープン
改札は橋上へ移動した
池上駅周辺といえば、先述の池上本門寺や池上梅園が有名で、都内のプチ観光スポットといったところ。蒲田に近く、城南地区や都心、神奈川方面で働くビジネスパーソンの住まいとしても便利なエリアだ。駅の前には商店街が広がり、スーパーや飲食店もたくさん。池上総合病院をはじめ医療機関も充実している。
そんな同駅、以前は木造の古い駅舎だったのが、17年6月からリニューアルと駅ビルの開発を始めていて、昨年7月には新しくなった池上駅の供用を開始。ここ数年、池上線では戸越銀座が17年、旗の台が19年に多摩産の木材を使った木造駅舎へリニューアルしているが、池上駅もそれに倣ったようで、木も基調としたホームに生まれ変わっている。ホームには、リニューアル前から使われていた木造ベンチが再現されている。
以前は構内に踏切があり下町感を演出していたが、廃止。駅舎が橋上化したので改札口は2階になり、北口のみだった出入り口を南側にも新設した。
今回の改修にあたっては、駅直結の商業施設「エトモ池上」も開発され、3月にオープンする予定だ。改札を出ると池上本門寺の参道につながるようなイメージでデザインされた「池上仲見世」
が広がり、施設オープン時には両側に店舗が入る。通路には同寺の伝統行事である「お会式(おえしき)」の練り歩きに使う灯明「万燈(まんどう)」や桜をモチーフとした柱が並び、和を感じさせる作りになっている。
「エトモ」は、駅ごとの特色に合わせた店舗が入り、街に溶け込むようなデザインで、駅と街をつなぐ「コミュニティ型商業施設」がコンセプトの駅ビルで、神奈川にはあざみ野、市が尾など、東京都内は自由が丘、大井町、武蔵小山など、これまでに12施設を展開。池上はこれに次ぐ。
テナントにはカフェや飲食店だけではなく、フィットネスやクリニック、薬局、クリーニング店、銀行ATMも入る。これまで、近隣の商業施設というと蒲田になったが、エトモのオープンで地域の利便性はますますよくなるに違いない。
保育園や学童保育施設も出店
周辺では空き家を活用した街づくりも!
大田区は19年度対前年比で約70%の待機児童を減少させるなど、子育て支援に手厚い。それを受けてか、エトモ池上には認可保育園や学童保育施設が入り、共用部には授乳室も設置している。区立池上図書館の移転も予定していて、多世代にわたる地域住民が足を運びやすい施設になっているのも特徴だ。
また、大田区は池上をはじめ区内の空き家を公益目的(地域交流、福祉、子育て支援、教育関連など)で活用する取り組みも実施。同区と東急が池上駅周辺エリアで空き家・空き店舗の活用を通じて地域活性を図るプロジェクトも始めていて、官民で街づくりにも積極的だ。
駅のリニューアルで池上の知名度が上がり、住みやすいエリアだとわかれば、ますます発展する可能性がある。大げさかもしれないが、今回の取り組みは下町の再開発における、今後を占う試金石になるかしれない。
健美家編集部(協力:大正谷成晴)