駅の地中化で南北がつながり
かつてのイメージを払拭
2012年に京王線調布駅が地下化されたことで北側と南側に分かれていた駅前広場が一体化、2014年から段階的に整備が進められている「調布駅前広場整備」は、2025年度末の完了を予定している。
駅前ロータリーの整備による交通結節機能の向上と、市民が利用する多目的空間および災害時の対応を兼ね備えた空間の整備が目的だという。
東京都の多摩地域に位置し、世田谷区とも隣接している調布市。24万人の人口を擁しているため商業施設も充実し、調布駅から特急に乗れば2駅15分で新宿駅まで到着する。
さらに調布駅から車で約5分のところには中央自動車道の調布ICがある。そんな利便性に優れている調布市だが、住む街として過小評価されている感が拭えない。
原因のひとつとして考えられるのが、調布駅が地上にあった頃の象徴ともいえる“開かずの踏切”だろう。しかし、地下化によって踏切が撤去された後、駅舎の跡地には何も建てられることなく、広い空を拝むことのできる開放的な広場へ生まれ変わった。
そして、2017年には広場の周囲に商業施設のトリエ京王調布がオープン。駅の中央口があり、スーパーマーケットやファッションテナント、飲食店などが入るA館、ビックカメラがメインテナントのB館、11スクリーンを有するシネマコンプレックスのC館で構成されている。
「調布駅前広場整備」は現在進行中だが、現時点でも樹木やベンチなどが整備された心地のよいオープンスペースとして親しまれている。地上駅の頃しか知らない人間が今の調布駅前を見ると、あまりの変貌ぶりに驚くに違いない。雑然とした郊外の街から洗練された都市へ、見事にイメージアップを成功させたといえるだろう。
バスをはじめ、あらゆる交通手段が
スムーズにつながるロータリーへ
「調布駅前広場整備」の目的のひとつである交通結節機能の向上とは、電車やバス、タクシー、乗用車など、さまざまな交通手段の接続が行われる乗り換え拠点を利用しやすくすることを指す。
今回の整備では南側ロータリーについては、令和2年度に従来案を再検討。バスの待機場・乗降場の減少や歩行者の動線改善、一般車と障害者用の乗降場をロータリーの外側へ配置することなどによって利便性を向上。あわせて周辺道路の一方通行規制の見直しなども行われる。
イベント開催から市民の憩いの場まで
さまざまな顔を持つオープンスペース
環境空間としての広場機能については、交流、景観形成、情報提供、防災という4つの機能性を重視。具体的には広場をイベントゾーン、コミュニティゾーン、みどりの庭ゾーン、おもてなしゾーンの4つのエリアに分け、それぞれを特色づけようという狙いである。
イベントゾーンは調布駅広場口に面した最も大きなエリアで、周辺の商業施設と提携したハレの場(非日常)としての賑わいを創出するための場所。マルシェやオープンカフェ、スポーツ観戦のパブリックビューイングといったイベントが行われる。
コミュニティゾーンは子供から高齢者まで、誰もがくつろぐことのできる空間がテーマ。その予定地にはすでにパーゴラやベンチが設置され、例えば夏にはミストで暑さ対策が講じられるなど、憩いの場として利用されている。
みどりの庭ゾーンは一般車と障害者用の乗降場があり、主に歩行者の通行空間として機能する。3方向を道路に囲まれているため、樹木を多く配置しベンチも設置。木陰で休憩したり、くつろいだりする利用シーンをイメージしている。
最後のおもてなしゾーンは駅の中央口と広場口に挟まれ、南北ロータリーの主要動線が位置するエリア。調布市の玄関口としての雰囲気を演出する空間づくりが行われる。
豊かな自然と都市の先進性が
違和感なく共存する街
「調布駅前広場整備」によって、ますます住みやすい街へ変わっていく調布市には、もちろん以前からたくさんの魅力がある。まず思い浮かぶのは、1950年代の日本映画最盛期に「東洋のハリウッド」と呼ばれ、現在でも撮影所や映画製作会社などが集まる映画の街であることだろう。
1933年に最初の撮影所ができた理由は、時代劇と現代劇どちらの撮影にもふさわしい自然環境に恵まれ、フィルムの現像に欠かせない良質な地下水があったからだという。
現在では、人気投票で選ばれた日本映画の上映やトークショーなどが行われる「映画のまち調布 シネマフェスティバル」を毎年開催。映画の魅力を広めるとともに地域活性化にも貢献している。
水の恵みといえば市南部を流れる多摩川も忘れてはいけない。実は調布駅から多摩川河川敷までは歩いて20分ほどでたどり着く。京王相模原線京王多摩川駅からだと徒歩約5分と、意外にも街と自然が近いのが調布市の特徴なのである。
水のつながりでは、市北部にある奈良時代創建の深大寺とも関係性がある。境内や周辺には国分寺崖線から湧き出る複数の湧水源があり、このきれいな水のおかげで深大寺そばが名物として知られるようになった。
付近には20軒以上のそば屋が軒を連ね、落ち着いた和の風情に彩られた門前通りは古都の雰囲気に包まれている。さらに隣接するように神代植物公園があり、梅や桜、バラの名所としても有名である。
名作アニメとコラボレートした
懐かしい雰囲気の商店街も健在
「調布駅前広場整備」によって一気に都市化が進んだ感のある調布市。しかし、調布銀座をはじめ、かつてのイメージを彷彿とさせる昭和の雰囲気が色濃く残るエリアも健在だ。そのひとつである天神通り商店街は布田天神社へ続く表参道でもあり、庶民的な雰囲気の飲食店が数多く集まっている。
漫画『ゲゲゲの鬼太郎』で知られる故水木しげる氏が調布に住んでいたという縁で、この商店街には鬼太郎やねずみ男、ねこ娘といったお馴染みの妖怪達のモニュメントが飾られている。
もちろん調布市は「日本のアニメの聖地88」にも選出。新しい日本のイメージを牽引するアニメのアワードに、古典ともいえる名作がランクインしているのは、今の調布市のイメージとどことなく重なるのではないだろうか。
豊かな自然と都市ならではの先進性、そして日本ならではの伝統と新しいカルチャー。これらは住みたくなる街の要素だが、SUMOの「住みたい街(駅)ランキング2021」の調布は68位で、なぜか2018年(36位)や2019年(52位)、2020年(50位)よりも順位を落としている。
しかし、心配することはない。「調布駅前広場整備」が完了した頃には調布市の魅力が広く伝わり、住みたい人気タウンの仲間入りを果たしているだろう。
健美家編集部
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
東京都・京王線調布駅周辺の収益物件はコチラ