投資エリアを選ぶときに、マーケットのことを理解するためには、地元の不動産業者に話を聞くのが最良だ。
西東京の八王子市について、マーケットの状況や特徴を株式会社CISレジデンスの西田社長に伺った。
不動産マーケットは
水面下では活発な状態
「2021年の今、マーケットに大きな影響を与えているのは、スルガショックに端を発した銀行のローン引締めです。体感的に、銀行が不動産投資ローンに積極的だった時期は6~7年前であり、スルガショック以降はどの銀行も慎重になっています。」
「コロナはローンの引締めに拍車をかけており、一般的なサラリーマンなどが参入するのは難しくなっている状況です。銀行は、初心者相手には物件価格の50%しか融資しないといったことも増えてきました。」
「その一方で、賃貸のニーズについては、コロナの影響はそれほど出ていないと感じています。理由は、八王子の周辺には非常に多くの大学があり、学生の賃貸ニーズはそれほど落ち込んでいないからです。」
八王子は日本有数の
学園都市
株式会社CISレジデンスのホームページでは、大学別の物件検索コーナーが設けられており、そちらには15の大学名が並んでいる。
6大学にも数えられる法政大学・中央大学や、美大としては名の知れた多摩美術大学に加え、近年箱根駅伝に出場している拓殖大学・創価大学・帝京大学などが代表的だ。
「西八王子・八王子みなみ野・片倉など周辺の駅まで含めると、八王子は日本でも有数の学園都市と言えると思います。」
「また、八王子駅の周辺には、飲食店など大学生のバイト先が多いのも特徴的です。学校とバイトが八王子の周辺で完結しているので、あまり遠くへ遊びに行きたいという人は少ないと思います。」
八王子の東には立川や国分寺などの駅があるが、そちらまで流れていく学生はそれほど多くないという。
学生の賃貸ニーズが強い八王子だが、ミクロの視点ではエリアによって入居者が異なるそうだ。
「学生が住むのは駅から遠くてもキャンパスに近いエリアです。例えば八王子駅の周辺などでは、7:3で単身者などの社会人の方が多くなっています。」
「特に女子大生などは、大学に近い・築浅・バストイレ別などの条件で部屋を探すことが多いです。弊社では、学生入居者のニーズに合わせたリフォームのアドバイスなどもしています。」
学生向けの物件では狭小物件でも入居者が入るものの、1番ネックになるのは水回りの3点ユニットだという。
最低でも18㎡以上の広さがあって、3点ユニットをバス・トイレ別の水回りに交換できる状態であれば、リフォームすることで入居者を入れられるそうだ。
また、学生の入居者を入れるためには、管理会社を選ぶコツがあるという。
「学生の賃貸ニーズを取り込むために重要なポイントは、大学の不動産部と提携することです。大学と提携している不動産屋は信用度が極めて高い上に、他社との競争を避けられます。弊社は多くの大学と提携しているため、学生向け物件では特に、入居率もかなり高い数字を維持しています。」
「八王子近辺に住む学生には、地方から上京してくる人も多いです。上京してきた学生の部屋を決めるのは親という場合も多く、地方の人は特に、不動産屋を何軒も回る時間的な余裕がないこともあり、大学の窓口に相談することが大半となっています。」
「家賃については、レベルが高い大学の学生ほど余裕がある印象です。例えば国立には一橋大学のキャンパスがありますが、一橋大学の学生が部屋を探している場合などは、予算もかなり多いです。」
「また、実際に物件を運用している投資家も、八王子では単身者向けのワンルームなどに投資している人が多いです。マーケットにはファミリー向けの物件もあるものの、価格がワンルームの倍になっても家賃はワンルームの倍取れないので、ワンルームの方が効率的と言えます。」
災害の被害も
それほど多くはない
最近では災害の被害が気になる投資家も増えているが、西田社長曰く、八王子では災害で苦労した記憶はないという。
「八王子の弱いところは、古い団地が多いことと、八王子駅から離れるとローカル感が強くなることだと思います。しかし、災害もそれほどないので、安心して投資できるエリアです。」
「弊社は今年で創業13年目になりますが、東日本大震災の時にも建物が倒壊した・火災が起きたなどのことはありませんし、たまに大雨は降りますが、建物が浸水してひどいことになったということもありません。唯一、雪がひどいときには雪かきが大変なくらいです。」
数ある大学の近辺か八王子駅の周辺に的を絞れば良いという点で、八王子ではエリア・物件を絞り込みやすいと言えるだろう。
単身者向けの投資を検討するのであれば特に、八王子で物件を探すのも良いのではないだろうか。
取材・文:
(はたそうへい)