駅の目の前に115mのタワーがそびえるまち
はやければ2028年に区庁舎が移転
船堀は東京都江戸川区のまちで、船用の堀があったのが地名の由来。塩をはじめとする物資を運ぶため江戸時代に開削された新川(船堀川)はまちを象徴する運河で、現在は親水公園などが整備されている。江戸川区の人口は1950年以降、一貫して増加が続いていて、直近で約69万人。そのうち約2万7000人が船堀に世帯を構えている。

エリアの中心は、都営新宿線では珍しい地上高架の駅である船堀駅の周辺だ。2020年度の1日平均乗降客数は約4万8000人で、同線の単独駅のなかでは最も多い。日中は急行列車が走っていて、新宿駅まで20分ほどと都心へのアクセスは良好だ。かつ、千葉方面へも出やすい。
これらのエリアで働く人たちの住宅地となっていて、近年は高層マンションの開発が進められている。北は新小岩駅、南は西葛西駅を結ぶ船堀街道も駅前を走っていて、周辺とのバス便も充実しているようだ。

そして、船堀で忘れてならないのは、駅前に建つ「船堀タワー」の存在だ。東京タワーや東京スカイツリーには遠く及ばないが地上115mの高さがあり、無料の展望室(高さ103m)からは都心方面や東京湾、千葉方面など都心を一望することができる。

船堀タワーはあくまでも通称で、「タワーホール船堀」が正式名称。
江戸川区立の複合文化施設で、展望台だけではなく大ホール、17室の会議室、区内唯一の映画館となる「船堀シネパル」、結婚式場の「船橋マツヤサロン」があり、地下や1階には飲食店をはじめとする各種店舗も。7階の展望レストラン「サロン・ド・サロン」は多くの人が利用する人気のスポットだ。
展望室は当初、災害発生時に周辺の状況を確認できる施設として防災目的で建てられたそう。タワーの頂点には360度を見渡すカメラを設置している。
なお、近隣に建つタワーマンション方面を撮影したり、三脚を使用することはNG行為だ。午前9時から午後9時30分まで展望エレベーターが運行していて、入場は無料(天候などにより運行中止の場合もあり)。
そんな船堀タワーの北側では、大規模な再開発事業が始まる。それが、江戸川区庁舎と複合施設の新設で、昨年10月に日鉄興和不動産と東京建物は「船堀4丁目地区第一種市街地再開発事業」の事業協力者に選定され、「事業協力に関する協定書」を区との間で締結した。
約2.7haの土地を南北の2つに分け、北側には敷地面積約1万100u・延床面積約5万5000uの江戸川区庁舎、南側には商業施設やオフィス、約300戸が入る共同住宅からなる地上27階地下1階建てのビルを建設する計画だ。今後は2023年に都市計画決定、24年度に本組合設立認可、25年度に権利変換計画認可となる予定で、はやければ28年に供用を開始するという。
現在の江戸川区の本庁舎は、もっとも古い南棟だと建設から60年以上が経過し老朽化が著しい。同棟は2006年度に耐震補強工事を行い、震度6〜7の地震に対して「倒壊・崩壊する危険性が低い」とされる耐震強度を保っているが、鉄筋コンクリートの耐用年数は一般的に50〜65年とされ、一定の強度はあっても建物の寿命を迎えつつある。
また、庁舎は過去30年で約43億円を維持管理・補修工事に充ててきたが、建物・設備の老朽化により、今後30年間における工事費は約81億円と区は試算。江戸川区の人口は23区中で4番目に多いにも関わらず、全庁舎の延床面積は4番目に小さく、庁舎スペースが区所有の建物では足りず近隣施設から賃借していて、その年額賃借料は駐車場を含め6300万円を超える。
なにより、新小岩駅からバスで約10分、徒歩約20分、船堀駅からもバスで約15分と、アクセスは良いと言えない。こうした状況を受け、区では新庁舎建設に向けた検討に着手していた。

※出所:第12回新庁舎建設基本構想・基本計画策定委員会
新庁舎建設では、「“災害対応の拠点”として70万区民を守る、たくましい庁舎」「“協働・交流の拠点”として開かれ、シビックプライドを高めていくような庁舎」「“区民サービスの拠点”として、誰にでも優しい庁舎」「“日本一のエコタウン”実現に向け、環境の最先端を歩む庁舎」「“健全財政”を貫きつつ、将来変化にも柔軟に対応できる庁舎」の5つの基本理念を掲げ、これらに沿った施設の実現を目指す。

※出所:第12回新庁舎建設基本構想・基本計画策定委員会
駅前に庁舎が整備されると区民の利便性は向上し、再開発ビルも隣りに建つことで、船堀の魅力は一層と高まるに違いない。不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、船堀駅近辺の賃貸マンションの賃料は直近3年間で3.86%上昇しているが、今後は拍車がかかる可能性がある。
23区のなかでは比較的に静かなエリアで、環境面では申し分ない。都心へのアクセスは良いので単身者・ファミリーの双方から底堅い住宅需要を期待することもできる。再開発をきっかけに、より多くの人から注目されるだろう。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))