三菱地所を中心とした
4社が跡地を取得
東京都の千代田区にあるホテルグランドパレスの運営会社と三菱地所を中心とした4社は、2021年6月末に閉館したホテルグランドパレスの跡地に複合施設を建設すると発表した。
三菱地所・三菱地所レジデンス・阪急阪神不動産・東宝の4社がホテルグランドパレス跡地の一部を購入。ホテルの運営会社とともに複合施設を建設する。
運営会社を含む5社は、2021年9月22日付でホテル跡地の有効活用に関する基本協定書を締結している。
なお、デベロッパー側の幹事会社となる三菱地所は、2021年10月1日付で当該プロジェクトの担当部署となる「九段開発室」を設置した。
ホテル全体の敷地面積は6,604.7㎡だが、開発される新施設の建物規模や用途などは2022年1月の時点でまだ決まっていない。
しかし、既存の建物は地下4階・地上24階建てで延床面積48,887㎡と大規模なものだったので、今後建設される新施設も同等程度の規模になる可能性はある。
ホテルグランドパレスは1972年に開業した大型ホテルだが、コロナ禍による経営不振を理由に、2021年6月30日をもって閉館していた。
東京都心の九段下駅から徒歩1分という好立地にあるため、記者会見場またはパーティー会場などとして利用されることも多かった。
昭和時代の都心に建設されたホテルとしては、格式高いホテルだったと言えるだろう。
なお、九段下駅には東京メトロ東西線・半蔵門線に加えて都営地下鉄新宿線の3路線が通っている。
東京メトロの発表によると、2020年における九段下駅の一日平均乗降客数は約10万9,000人で、有楽町駅や新宿三丁目駅などよりも多かった。
九段下駅は靖国神社や日本武道館にも近いが、通常はオフィスワーカー及び駅周辺にある私立学校の学生などが駅利用者の大半と予測される。
周辺エリアの特徴を考慮すれば、新たに建設される施設はオフィスやホテルを中心としたものになるだろう。
オフィス市場の変化に沿って
ニーズを獲得できるか
オミクロン株の亜種が発生しているという報道もある中では、コロナの収束時期はまだ不透明だ。
また、リモートワークの普及やコロナによる店舗需要への影響を背景として、オフィスや店舗の市場では厳しい状況が続いているという報道も多い。
リサーチ会社のCBREが発表したレポートによると、東京都における2021年第4四半期のオフィス市場では、前期比で全てのグレードにおいてオフィスの空室率が上昇したという。
その一方で、CBREのレポートでは、立地の改善などを目的としたオフィス移転は増加しており、ハイグレードのオフィスでは空室率が改善しているとされている。
そのほか、各種報道の中には、2022年及び2023年以降は新築ビルの竣工が多いため、古いビルに入居しているテナントが新しいビルへ移転するケースも増えるという予測も見かける。
三菱地所を中心としたデベロッパーが開発することや、九段下駅から徒歩1分という立地などを考慮すれば、ホテルグランドパレス跡地の複合施設がハイグレードオフィスを含むものになる可能性も高いだろう。
九段下に例えば丸ビルのようなランドマークになり得る複合施設が完成すれば、中野など東西線沿線のエリアや、半蔵門線または都営新宿線の沿線エリアとなる江東区・墨田区などで住宅の賃貸需要を喚起することも考えられる。
具体的にどのような複合施設ができるのか、今後の展開に要注目だ。
取材・文:
(はたそうへい)