国交省の認可によって
国からの支援対象に
国土交通省は、三菱地所が進める(仮称)内神田一丁目計画について、優良な民間都市再生事業計画として認可したことを2021年6月に発表した。
この認可によって、当該プロジェクトは国からの金融支援や税制優遇などの対象となる。
プロジェクトの該当地は大手町と神田との間にある日本橋川沿いのエリアで、約5,100㎡の敷地。
※引用:国土交通省
もともとはコープビルという農林水産業に関連する団体が多数入っていたビルと、日立グループが所有するビルが建っていた。
三菱地所は2021年4月中旬から既存建物の解体に着手しており、新しいビルについては2025年の竣工を目指している。
新たに建設されるビルは地下3階・地上26階建てで、オフィス・店舗・ビジネス支援施設・駐車場などが入る予定。
※引用:三菱地所
元のビルは9階建てと11階建てだったので、新しいビルの規模は元のビルの倍以上となる見込みだ。
当該プロジェクトは単なるオフィスビルの建て替えではなく、都道402号及び日比谷通りを中心として大手町・丸の内・有楽町をつなぐ都市機能を神田まで延伸するという目的がある。
※引用:三菱地所
このため、歩行者が神田・大手町エリアを行き来しやすくなるよう、内神田エリアの無電柱化や人が通れる橋を日本橋にかけることなどもプロジェクトに含まれているのが特徴的だ。
※引用:三菱地所
そのほか、2020年には大手町ビル・読売新聞ビル・サンケイビルの間に横断歩道が整備された上に、大手町ビルの貫通通路が完成するなど、丸の内から神田方面への交通利便性は確実に向上している。
交通利便性の高いエリアを拡大するとともに、川沿いのドッグパークで開催されているイベントの頻度も上げることが予定されている。
プロジェクト全体を見れば、丸の内・神田エリアを単なるオフィス街から脱却させるための仕掛けを増やしていくイメージが強い。
街づくりとオフィス需要の喚起を
両立できるか
(仮称)内神田一丁目計画は単なるオフィスビルの建て替えにとどまらないが、ビルそのものはその大半がオフィスフロアとなる予定だ。
※引用:東京都
2022年時点では、コロナの影響によって都心におけるオフィス需要は縮小している状況であり、東京都心のオフィス空室率は拡大を続けている。
三菱地所がプロジェクトを手掛けることや、内神田というビジネス街の中心に建設されることなどを考慮すると、新しいビルも高級オフィスビルになるだろう。
オフィス賃料も下落傾向にある中では、ビルがコロナ収束後に竣工するとしても、どこまでオフィス需要を取り込めるか注目だ。
なお、三菱地所は(仮称)内神田一丁目計画の他にも、東京駅前常盤橋プロジェクトや(仮称)丸の内1-3計画など、複数の再開発を進めている。
三菱地所は「丸の内NEXTステージ」というプロジェクトを掲げており、今後も有楽町・常盤橋などのエリアを中心として更なる再開発を進めていく意向だ。
三菱地所のプレスリリースによると、同社は今後2030年までに最大7,000億円程度を投下して再開発を推進するとしている。
今後日本最大のビジネス街でもある有楽町・丸の内・大手町エリアがどう変化していくのか要注目だ。
取材・文:
(はたそうへい)