東京・稲城市は、多摩川を隔てて都心部と接し、多摩ニュータウンの玄関口として整備された景観の美しい住宅街として知られる。
その稲城市では、南北に走るJR南武線の連続立体交差事業に合わせ、3つの駅で駅前周辺の再開発が進む。また、東西に走る京王線稲城駅とよみうりランド駅近くでは、大規模宅地開発事業が進行中だ。
東京南多摩地区に位置し、
多摩ニュータウンとして整備された稲城市
稲城市は、東京都南多摩地区に位置し、東部は多摩川を隔てて東京都下の調布市や府中市と接する。南部は神奈川県川崎市に隣り合う。東西に京王線、南北にJR南武線が走り、京王線では新宿から約30分、南武線では川崎から約40分、立川から約20分のアクセスである。
いずれの主要駅からも若干距離はあるが、沿線にはショッピングモールが点在しており、生活便も悪くない。昭和40年代から多摩ニュータウンとして整備された地域であり、稲城市の向陽台地区は、都市景観100選にも選出された住宅街として知られる。
また、リニア神奈川県新駅予定地である橋本駅は京王線の始発駅であり、稲城からのアクセスは良好で開業後の活性化の期待もある。
家賃相場は、京王線稲城駅がワンルームで6.33万円、2DKで7.10万円(LIFULL HOME‘S 稲城駅家賃相場)、JR南武線稲城長沼駅がワンルームで5.25万円、2DKで7.65万円(LIFULL HOME‘S 稲城長沼駅家賃相場)と、特にファミリーにはリーズナブルな相場といえる。
都市計画プランの下、南武線3駅周辺を中心に土地区画整理事業が進む
稲城市では、平成25年にそれまでの都市計画を見直し、新たに、水と緑に親しむ生活都市をコンセプトに掲げて、都市計画マスタープランを策定した。JR南武線の連続立体交差事業に合わせ、南武線3駅周辺の土地区画整理事業などの整備によるまちづくりを見据えたものだ。
南武線の稲城長沼駅と京王線の稲城駅の周辺を中心地区と位置づけ、多摩ニュータウンとして開発されて来た生活拠点となる市街地との道路・交通ネットワークを形成することを目標とした計画になっている。
都市計画の中でも目玉として位置づけられている南武線3駅周辺の再開発事業は、すべての駅で高架化が完了し、土地区画整理も既に整備が進んでいる。
稲城市の中心地区である稲城長沼駅周辺は、南武線を挟んで北口と南口に駅前広場を設け、商業地域として商業施設の集積を図る計画だ。現状、まだ駅前には畑や空き地が広がっており、昔ながらの個人商店が立ち並んでいる、という状況である。建物移転や仮換地の進捗率は約50%であり、令和12年の完了が予定されている。
矢野口駅周辺は、最も都心部に近いことから、東の玄関口として先端産業の誘致を見据え、準工業地域が設けられる。
南多摩駅周辺は、多摩ニュータウンの玄関口であることから、駅を中心にして住・商・工の調和を図っていく計画だ。
矢野口駅、南多摩駅ともに、現状は広場こそ整備されているものの、駅周辺には空き地や整備途中の区域が目立つ状況である。
矢野口駅周辺の建物移転・仮換地はまだ半分程度を残している。南多摩駅周辺は、9割の仮換地が完了しているが、計画道路の本格整備はこれからである。いずれも令和12年に完了予定だ。
よみうりランド近くの南山東部地区では
大規模な宅地開発が進行中
南武線3駅の再開発事業以外に、稲城市では、京王線稲城駅とよみうりランド駅近くの南山東部地区において大規模な宅地開発事業が進められている。地区の面積は、90ヘクタール弱にも及ぶ。
元々、南山東部地区は、昭和40年代の多摩ニュータウン開発計画に合わせて市街地化が決定され、検討が進められてきた。しかし、土砂採取場として利用されていたため広大な崖地があり、たびたび崩落に見舞われるなど、防災面で課題があった。
平成18年にようやく土地区画整理事業の組合が設立され、宅地整備が本格的にスタートした。事業は、組合が主導し、野村不動産、大成建設などの協力によって進められている。
再開発地区は「スカイテラス南山」と名付けられ、地区内の宅地造成、道路や公園、上下水道などのインフラ整備によって、2,550世帯、7,600人分の宅地開発をおこなう。地すべりや液状化には万全の対策を施し、景観や眺望に配慮した市街地の形成を計画している。令和7年の完了を目指している。
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取材・文:
(さとうえいいちろう)