大田区の中心的なエリアに点在する
2つの駅がいよいよつながる!
蒲田と言えば、東京都大田区の中心的なエリア。近年はホテルなど、大小さまざまな再開発プロジェクトも進んでいる。繁華街だけではなく住宅に対するニーズも底堅く、分譲・賃貸を問わずアパマン、戸建てが広がる地域としても有名で、都心と横浜の両方にアクセスしやすい。

そんな蒲田で40年間にわたり話題に挙がっていた「蒲蒲線(かまかません)」問題が、6月に入り大きく前進することになった。
蒲蒲線とは、JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅の約800mを結び、さらに東急線と京急空港線を接続して羽田空港にアクセスする新空港路線のこと。1980年代に大田区が構想したが計画は遅々として進まず、「幻の路線」とされていた。
そんな状況が一変したのは6月6日のこと。大田区は2030年度後半の開業を目指し、東京都と事業費の負担割合などについて合意したと発表。本年度中に東急と共に整備主体となる第三セクターを設立し、着工に向けて本格的に動き出すという。
ところが、事業は一気に進むわけではない。蒲蒲線は東急多摩川線の矢口渡駅付近から地下化し、JR・東急蒲田駅、京急蒲田駅を経て、京急空港線大鳥居駅の手前で同線に乗り入れる計画で、途中停車駅の東急と京急には地下駅が設置される予定だ。

出所:大田区ホームページ
事業は東急多摩川線を京急蒲田駅まで延伸する第1期工事と、残り部分を手掛ける第2期工事にわかれ、区と都が合意したのは前者部分だ。
同区間の総事業費は約1360億円と試算され、国の制度では国、自治体、第三セクターが事業費を3分の1ずつ負担する「都市鉄道等利便増進法」を活用するのが一般的。今回、区と都が合意したのは、自治体が出資する450億円のうち、大田区が7割、東京都が3割負担するという内容だ。
蒲蒲線は2016年に国の交通政策審議会が取りまとめた答申で「国際競争力に強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」のひとつに位置付けられ、「事業化に向け費用負担の在り方等について合意形成を進めるべき」と提言されていて、それに応えた格好といえるだろう。
課題がないわけではない。第1期は、あくまで二つの蒲田駅を結ぶまでの工事であり、羽田空港まで行くには、京急側で地下から高架駅まで移動しないといけない。近隣に住む者にとっては、念願だった東西の分断が解消されるので喜ばしい話だが、本質的なアクセス向上にはならないといいうことだ。
また、東急線と京急線は鉄道の軌道が異なるので、現状のままでは直通は不可能。第2期工事の際は、異なる軌道に乗り入れられる「フリーゲージトレイン」など方法を検討する必要もある。加えて、多摩川線は現状三両編成なので、この点もどうするか考えないといけないだろう。
蒲蒲線が実現すると、これまでは徒歩なら約15分かかった移動負担が解消されるなど、近隣住民にとっては明らかにプラスになることは間違いない。さらに東急多摩川線は多摩川駅で東急線や目黒線とつながるので、将来的には羽田空港と渋谷、埼玉方面へのアクセスが格段によくなる可能性がある。

出所:大田区ホームページ
羽田空港といえば、国土交通省が2021年1月に事業を認可した「羽田空港アクセス線」も記憶に新しい。これは、JR東日本が計画する田町駅付近から羽田空港へ直結する路線。
2029年度の開業を目指していて、これが実現すると東京駅〜羽田空港間は18分間で移動できるようになる。首都に直結する空の玄関として存在感を示す同空港だが、鉄道ネットワークの利便性が高まることで、より重宝されるようになり、近隣の付加価値も高まっていくに違いない。
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健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))