多摩ニュータウンの西側に位置
生活に必要な施設が集積したまち
南大沢は東京都八王子市、多摩ニュータウンの西端に位置するまちだ。多摩ニュータウンといえば、高度経済成長期の東京の深刻な住宅不足を背景に、多摩丘陵を切り開いて開発された国内最大規模のニュータウンのひとつ。
1973年のオイルショックを機に東京への人口流入のペースが落ち着いてからは量から質への転換が図られ、多様多種なタイプの住宅がJ建築、商業・文化・業務・教育の機能を備えたまちへと成長を遂げた。

南大沢も同様で、八王子の行政施設や東京都立大学、ヤマザキ動物看護大学といった教育施設、三井アウトレットパーク多摩南大沢、フォレストモール南大沢、ガレリア・ユギなど多数のショッピングモールも広がり、平日は学生、休日はアウトレットの買い物客でにぎわいを見せる。直近の人口は約1.6万人だ。

出所:東京都
まちの中心は京王電鉄相模原線が乗り入れる南大沢駅。京王ライナーを含めたすべての列車が到着し、「東京都立大学 最寄駅」の副駅名も設定されている。1日の平均乗降客数は増加傾向にあり、2009年度には6万人を突破。京王八王子駅を抜いて、八王子市内の京王電鉄の駅として1位になった。2019年には約6.3万人までいったが、2020年のコロナ禍以降は4万人台に減少している。
都市機能が集積し、自然にも恵まれた南大沢だが、今後のまちづくりに関しては課題に直面ししている。多摩ニュータウンの住民は高齢化に向かい、少子高齢化による学生数の減少、近隣の都市や商業施設との競争激化は始まっていて、まちの活力低下が懸念されているからだ。
一方、南大沢駅周辺ではリニア中央新幹線神奈川駅(仮称)の計画や南多摩尾根幹線の整備が予定されていて、駅北側の三井アウトレットパーク南大沢は東京都との間で交わしている借地契約が2025年に終了。
今後の土地活用について検討が求められていて、東京都は9月に「南大沢駅周辺地区まちづくり方針(案)」に関する意見を募集。2023年には新たな民間事業者を公募する予定だ。

出所:東京都
東京都がまちづくりの方針として掲げるのは、「地域資源を活かしつつ都有地の活用を主軸に持続可能な発展を誘導する」という点。商業・にぎわい、新しい働き方・職住近接によるゆとり、日常生活の利便性、ビジネス環境、国際性、多様な人々の交流などの一層の充実・向上を図ることで、新しい日常に対応した南大沢駅周辺を形にしていくという。
将来像の実現イメージとしても、「多様な住まい方・働き方・憩い方が融合し進化する、活力と魅力に満ちたまち」を掲げている。

出所:東京都
駅前を拠点とし計画的に市街地が広がり、ゆとりと開放感があるまちなみも形成。2019年度には南大沢地区をスマート東京先行実施エリアに指定。先端技術を活用したまちづくりを推進し、5G重点整備エリアにもなっていることから、今後はデジタル環境の整備も積極的に進められていくに違いない。
大学・研究所が立地していて地区外から多くの研究者・学生が集まってくることも、先端技術の活用を後押しするだろう。
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、南大沢駅の標準的な賃貸マンションの賃料は直近3年間で5.66%上昇し、これは東京都の変動3.06%に比べるとやや高い水準。今後のまちづくりによっては、さらなる上昇がみられるかもしれない。
多摩ニュータウンというと、建物の老朽化や住民の高齢化など、とかくネガティブなニュースで捉えられがちだが、自然・都市機能が調和しつつ都心にアクセスしやすいという、武器となる要素を兼ね備えているエリア。南大沢も同様で、今後のまちづくりによっては、さらに発展が期待されるだろう。
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健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))