東京都は先月、東京駅付近から臨海部(晴海・有明エリア)までのおよそ6キロを結ぶ新たな地下鉄の事業計画案を発表した。通称「臨海地下鉄」と呼ばれる一大事業で、2040年ごろの開業を目指す。

事業計画では、新線の総延長は約6.1キロで、東京 ー新銀座ー 新築地 ー 勝どき ー 晴海 ー豊洲市場ー有明・東京ビッグサイトの全7駅(駅名はいずれも仮称)が設置される。東京駅から国内最大の展示場「東京ビッグサイト」までを乗り換えなしの約10分でつなぐ。
新線の恩恵が最も期待されるのが、中央区の晴海エリアだ。タワーマンションが乱立し、東京五輪の選手村を活用した「晴海フラッグ」は分譲4000戸余りがほぼ完売したことでも話題になった。2024年3月にはその晴海フラッグへの入居も始まり、エリアの人口はさらに急増する。
にもかかわらず、晴海の埋立地にはこれまで鉄道駅のない「鉄道空白地帯」で、晴海のタワマンの住民はバス移動か、最寄りの大江戸線勝どき駅まで15分ほど歩くことを余儀なくされてきた。
晴海フラッグの物件概要を見ても、一番駅に近いE棟ですら、勝どき駅まで徒歩16分、最も遠いA棟からは20分表記。「陸の孤島」と揶揄されても仕方ない状況が続いている。

東京都が公表した想定ルート・駅位置によると、新線は勝どき、晴海、豊洲の各埋立地のほぼ中央を貫くルートで、駅位置も中心部に予定されている。都も「晴海フラッグとの近接性」をルート・駅位置選定で重視したことが公表資料からも見て取れる。
江東区の有明エリアも、大きな恩恵を受けることが期待される地区だ。国内最大規模の「東京ビッグサイト」だが、現在はゆりかもめやりんかい線でしかアクセスできず、以前から交通の不便さが指摘されてきた。

新地下鉄が開通すれば、東京駅からの所要時間が20分以上短縮され、国内外からの訪問者の利便性が格段に向上する見込み。東京都は臨海部の位置づけを
『未来の東京』戦略(令和3年3月)において、臨海部では、区部中心部との近接性、国内外の玄関口、東京2020 大会のレガシーの集積等の強みを生かし、世界から人と投資を呼び込み、東京と日本の持続的成長を牽引する未来 創造域が形成されるという将来像を示している。 (東京都公式サイトより)
としており、新地下鉄に期待を込めている。
新地下鉄にはまた、秋葉原から東京駅への延伸計画があるつくばエクスプレスや、JR東日本が計画する「羽田空港アクセス線」との接続も検討されていて、実現すれば臨海部や首都圏の国際競争力がより強化されるとしている。
一方、概算事業費約4,200~5,100億円とされる新地下鉄構想を報じるネットニュースには、賛否両論のコメントが多数寄せられた。
「この人口減少時代に巨額を投じて新しい地下鉄を造る必要があるのか」というそもそも論や、深くて改札からホーム到達まで時間のかかる都営大江戸線よりさらに深く、乗り降りが不自由な地下鉄になるのではないかという心配も。
不動産投資の観点では、湾岸エリアへの注目度は確実に上昇しそうだ。割安感から抽選販売となった晴海フラッグについては、購入価格の何割か増しでの転売が盛んになるだろうとの見立ても。先の長い話ではあるが、湾岸タワマンの動向に引き続き注目したい。
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健美家編集部(協力:
(おおさきりょうこ))