1966年に竣工した歴史的建造物が建て替え
東京・有楽町エリアの再開発が加速する
東京都千代田区丸の内といえば、東京の中心地といえるエリア。なかでも、三菱地所が所有する「国際ビル」と、東宝及び出光美術館が所有する「帝劇ビル」は、1996年の竣工以来、ビジネスと文化の拠点として注目を集めてきた。
そんな2つのビルだが、この度共同で一体的に建て替えることが決まった。ともに竣工したのは、1966年のこと。56年が経過し、防災対応機能の強化、ポストコロナ時代の新しい働き方をはじめとするテナントニーズの高度化やカーボンニュートラルの実現に向けた社会的要請への対応強化、機能更新をはかるのが目的だという。
国際ビルは地下6階、地上9階、塔屋3階のビルで、都営三田線の日比谷駅に直結、東京駅にも地下通路でアクセスできるのが特徴だ。現在は事務所やサービスオフィスとして利用されている。
帝劇ビルは帝国劇場と出光美術館が入居する、文化の象徴ともいえる建物だ。帝国劇場は1911年に近代日本の文化芸術のフラッグシップとして開設された後、1966年に建て替えられた2代目の劇場。
日本を代表する演劇やミュージカルの聖地として知られている。現在も、人気アイドルが多数所属する事務所の公演や話題の作品が立て続けに上演され、話題に事欠かない。
一方、出光美術館は、出光興産の創業者である出光佐三が70余年の歳月をかけて蒐集した美術品を展示・公開されるため開設された場所。現在は国宝2件・重要文化財57件を含む約1万点のコレクションを有する美術館として、国内外から多くの人が訪れている。
ビジネス・文化の面で歴史の深い2つのビルだが竣工から年月は流れ、老朽化は言うまでもなく、設備の面でも時代に取り残されつつあることは否めない。何より、防災面では不安がつきまとう。
今回の一体的な建て替えは、妥当な判断といえる。むしろ、新たに生まれ変わることで最先端のビジネス・カルチャーへのニーズを満たし、有楽町エリアの魅力を底上げするに違いない。
今回の計画では、これまで積み重ねてきた歴史と伝統を継承し、文化・芸術、ビジネスの拠点としてさらに発展させ、東京の国際競争力の向上にも貢献する方針。建て替え後の建物内で、帝国劇場・出光美術館は再開を予定している。具体的な内容は今後検討を進めるが、両ビルは2025年を目途に閉館するという。
有楽町エリアでは他にも建て替えが計画されていて、三菱地所は「有楽町ビル」「新有楽町ビル」の2棟も2023年を目途に閉館し、再開発に着手。近隣の大手町、丸の内エリアでも複数の再開発は計画・進行中で、有楽町を含めたこれらの地区は「大丸有」の通称で呼ばれ、「大丸有まちづくり協議会」が中心となり、全域で「新しい価値」「魅力と賑わい」の創造に取り組んでいる。
東京都も有楽町駅周辺地区のまちづくりには積極的な姿勢を見せている。同エリアは都市機能の一層の向上が必要とされているが、駅西口に駅前広場がなく、建物の更新も進んでいない、歩行者通路の分断などにより周辺地区との回遊性も決して良くない。
国際ビジネス・都市観光拠点の形成に寄与するMICE昨日の拡充が求められているといった背景があり、旧都庁舎跡地を活用した公民連携のまちづくりを実施し、東京国際フォーラムなどとの近接性を踏まえたMICE機能の推進・強化や、歩行者ネットワークの各銃などにより、国際ビジネス・都市観光拠点の形成を進めるとされている。これを受け、2022年3月には、関係地権者間で再開発を検討することが決まっている。
有楽町エリアにはJR有楽町駅をはじめ、東京メトロ有楽町線など地下鉄2駅4路線が交差する、鉄道の結節点。都市機能が更新されると、周辺を含めたアリア全体の付加価値は向上する。
国際ビル・帝劇ビルなどの建て替えは、その布石になるだろう。新たな施設が生まれることで雇用や賑わいが生まれると、沿線の住宅事情も変わっていくに違いない。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))