10年後の開通に向けて歩みを進める
大田区の悲願「新空港線(蒲蒲線)」
昭和57年の大田区基本構想に位置付けて以来、大田区にとって40年来の悲願だった新空港線(通称:蒲蒲線)計画が少しずつ前進を続けている。
この新空港線は、JR東日本と東急線(多摩川線・池上線)が乗り入れる「蒲田駅」と、そこから800m離れた京急「京急蒲田駅」の2つの駅を結ぶ新たな鉄道路線だ。
現在この2つの駅を結ぶ手段は京急バスか徒歩しかないこともあり、分断した状態が長年にわたって問題視されてきた。
その解決策となることが期待される新空港線は、東急多摩川線「矢口渡駅」付近から多摩川線を地下化し、「東急蒲田地下駅」、「京急蒲田地下駅」を通り、「大鳥居駅」の手前で京急空港線に乗り入れる計画となっている。
大田区によると、許可申請が完了し、工事が着工して完成するまでに10年程を要するということ。
まだまだ先の話ではあるが、この新空港線が開通すれば、渋谷や新宿、埼玉県を含めた首都圏北西部からの羽田空港へのアクセスが大幅に改善されるほか、神奈川方面から羽田空港へのアクセスも良くなるということで、大いに期待を集めている。
事業費総額1360億円の費用負担割合は国1/3,地方1/3、第3セクター1/3となっており、2022年6月には地方負担分について、東京都が3割、大田区が7割を負担することが決定した。
また、2022年10月には大田区が東急電鉄とともに事業を担う第三セクター「羽田エアポートライン」を設立。この第三セクターには大田区が1億8000万円、東急電鉄が1億1500万円を出資しており、今後、鉄道事業を行うための認可の取得や環境アセスメントなどの手続きを進めるとしている。
新空港線事業については、高額な費用に対する効果について疑問視する声や、多摩川線からJRへの乗り換えが改悪されるのではといった不安の声も聞かれているほか、JR「蒲田駅」と「京急蒲田駅」の間に位置する商店街の衰退なども課題視されている。
なかなか順風満帆とはいかない気配だが、大田区はこの新空港線計画と並行して蒲田駅周辺の再開発事業も本格化する方針ということで、駅周辺の利便性アップには期待が持てそうだ。
駅の東西を結ぶ自由通路新設で
駅周辺のさらなる活性化を目指す
2022年12月、この再開発事業の一環として、大田区はJR「蒲田駅」の東西を結ぶ自由通路を新設する方針を決めた。
新たに設ける歩行者用通路は長さ約100メートル。高架構造を採用し、駅南側のJR線路をまたぐ形とする。24時間の利用が可能で、身体障害者や高齢者に配慮してエレベーターなども設置する計画だという。
実は現在も「蒲田駅」北口に東西を結ぶ地下通路はあるのだが、老朽化した暗い通路で、夜の利用が憚られる状態になっている。新たに東西を結ぶ自由通路が開通すれば、駅の東西の往来がしやすくなり、駅周辺のにぎわいにつながることだろう。
新空港線の開通、東西蒲田駅周辺の整備、東西自由通路の開通など、長期スパンで変わっていくであろう「蒲田駅」。10年先の未来を見据えた投資が必要となりそうだ。
健美家編集部(協力:
(さいとうかずみ))