
地区計画の策定と
意見交換会を実施
東京都の渋谷区で地区整備計画の策定が進んでいる。対象となっているのは、渋谷駅側から公園通りを上っていった先にある代々木公園入口周辺のエリアだ。

※引用:渋谷区
検討対象エリアの中には渋谷区役所・神南小学校・渋谷ホームズなどがある。
渋谷ホームズは1975年に竣工したゲタ履きマンションだ。地下1階・地上14階建てで地下階と1階にファーストフード店などが入っている。総戸数は272戸。
建物の老朽化や耐震性に対する不安があるため、建替えに向けて2017年に再開発準備組合が結成された。
渋谷ホームズの眼前にある公園通り沿いにはパルコ渋谷店などがあり、歩行者・自動車ともに通行量は多い。

対象エリアに含まれる神南小学校は公園通りから路地を入った先にあり、小学校に児童が出入りするにも関わらず、路地が狭く事故発生の危険があるほか、バリアフリーにも対応できていない。

※引用:渋谷区
渋谷区はこれらの課題を解決するべく周辺エリアの整備計画策定を進めている状況だ。
なお、結成された「公園通り西地区市街地再開発準備組合」には、事業協力者として東急不動産と清水建設が参加している。
築50年近くなる渋谷ホームズを解体し、地下3階・地上34階建て延床面積73,900uの建物に建て替えるという。
建物用途は現在の渋谷ホームズと同じく住宅・事務所・店舗・駐車場などになる。現時点では、2026年度に再開発建物の建設工事着工、2031年度に竣工の予定だ。
また、1964年に竣工して渋谷ホームズと同様に老朽化が進む神南小学校の建て替えを一体化して進めるプランが再開発準備組合から提案された。
背景には、小学校が緊急避難所とされている一方で、建物の老朽化が進んでいる実態もある。提案に伴い2022年には小学校建替えの準備組合が結成された。
2022年の夏には渋谷区役所で「神南二丁目・宇田川町地区まちづくり意見交換会」が2回開催されており、意見の内容と渋谷区の見解などが公開された。
意見交換会で公開された資料には、再開発建物と小学校との間には開放感を感じさせる空間を作り、イベントも開催できるようにする方針とされている。

※引用:渋谷区
今後の進め方としては、まちづくり素案意見交換会・原案意見交換会と、周辺住民との意見交換会を交えながら計画をブラッシュアップしていき、最終的な都市計画決定を目指すとされている。
公共性の高いまちづくりは
他の再開発と一線を画したものになるか
近年、渋谷駅周辺では様々な再開発が進んでいるが、その多くは商業施設やオフィスなどの再整備によって利用者の利便性を高めることが目的だ。

一方で、今回解説した神南二丁目・宇田川町のまちづくりは小学校の建て替えも絡むだけに、商業施設などを配する再開発とは一線を画していると言えるだろう。
地域のコミュニティ形成や子育て世帯の支援を目的とした施設の配置は、渋谷の再開発ではめずらしい内容となっている。
渋谷区役所の隣には渋谷税務署があるなど、対象エリアに渋谷区の公共施設が固まっていることも背景にあるだろう。
渋谷の住宅というと、対象エリアから見て西側に広がる神山町や松濤(しょうとう)などに多い印象もあるが、再開発によって居住エリアが広がる流れになるかどうか、今後の展開に要注目だ。
取材・文:
(はたそうへい)